新しいまちづくりの取組みと、ストーリーとしての情報。

2012-06-16 22:13:45 | カテゴリ:活動報告


一昨日(6月14日)に行われた常任委員会、健康福祉・病院経営委員会の中で審議された項目の一つに、「よこはま多世代・地域交流型住宅整備・運営事業者選定等委員会条例案の制定」があります。今回の直接の内容は、「よこはま多世代・地域交流型住宅」の事業者選定を行う委員会を設置するための条例です。この「よこはま多世代・地域交流型住宅」(以下、本事業)の取組みが、面白そうです。

コーディネーターを配置して地域交流

詳細は横浜市の資料(AB)に譲りますが、①1階に設けられる交流スペース、②本事業予定地と隣接地の間におよそ5m幅のパブリックスペースが設けられる、③住民と地域との交流・連携のためのコーディネーターが配置される、という3点が本事業を特徴づけています。

本事業で想定する居住者は、高齢者世帯、子育て世帯、学生など若年単身世帯であり、各階にも居住者間の交流を促進するためのスペースが設けられます。そして1階に設けられる交流スペースは、居住者だけでなく、周辺の地域住民や、地元企業も利用できるようになります。交流スペースを持つマンションは近年よくありますが、本事業の特徴は、居住者だけでなく地域に開放されている点です。

この居住者間交流、地域交流を行うためにコーディネーターが配置されます。近年コミュニティデザインや、コミュニティビジネスといった取組が行われていますが、コーディネーターの担う役割は非常に大きくなります。交流スペースを企業が利用することも可能であり、屋外のパブリックスペースも収益事業が可能となっています。居住者の課題、地域の課題を、屋内外で交流を持ち、必要な収益をあげながら、解決することが可能となっているのです。全国各地でコミュニティの活性化のために、様々な事例が取り組まれていますが、重要なのはそこに「参加している人」であり、持続可能性です。居住者と地域住民、企業を上手く巻き込みながら、対話をしたり、ルールや計画をつくったり、マネジメントをしたりしながら、交流を生み、活性化できるがどうかが、本事業の成否のカギになります。公募条件上は、生活支援サービス等を提供する専門員との兼務も可能、となっていますが、コーディネーターに重きを置いた提案が出てくることを期待します。

横浜市と東急の協定「次世代郊外まちづくり」

上記の事業が、集合住宅とそこに接する公共空間を用いた地域づくりであったのに対して、横浜市においては面としての地域で新しい街づくりの取り組みもスタートしています。それが、横浜市と東急とが協定を締結した、「次世代郊外まちづくり」です。対象地域は、青葉区美しが丘1~3丁目ということで、地域住民の高齢化、老朽化する団地や空き家の問題、街の高齢化による活力の低下、といった課題を「まち」という視点で解決しようとするものです。対象地域も決まったばかりで、キックオフフォーラムも7月14日と少し先ですが、今後は地域住民とのワークショップを開催し、年度内に「次世代郊外まちづくり構想」をまとめ、構想に基づき具体的なプロジェクトを実施する予定ということです。

この事業は、横浜市と東急との、「郊外住宅地のあり方研究会」で、講演会や、フューチャーセンター・セッションを通じて、構想が練られてきました。その資料を見ると、面白い議論が行われてきたことがよく分かります。が、肝心なのはこれからだと思います。地域住民がどれだけ参画、関与できて、住民の声がどれだけ活かされて、5年の協定期間後も持続可能なモノ・コトを残せるかどうか。美しが丘選定の理由の一つに、建築協定やボランティアセンターなどの取組みが挙げられていますが、自治会、商店会、ボランタリー組織などの顕在化している主体だけでなく、個人やサークルなど、「まちづくり」としては活動していないものの、地域への意見を持っている潜在的な声もしっかりと集められ、参加できる取り組みを行ってもらいたいと考えています。

個人、地域、行政、それぞれの役割

最近、いくつかの自治会の役員の方と話をしていると、「自助」の話題がよくでます。自治会の役員になってみて、行政との接点が増えて、様々な情報に接するにつれ、行政任せでは不十分で、自分たちで支えあうようにしなければいけない、という話です。特に、東日本大震災以来、地域での防災意識が高まるとともに、どうやって避難するのか。避難した先でどうやって支えあうのか。どれだけの備蓄があるのか。高齢者や、障害者など、不自由のある方をどうやって守っていくのか。などなど、地域での課題が顕在化し、市の予算や、装備などを考えると、行政に任せてはいられない、と認識されているのです。そして、自治会に関わる前はそんな情報知らなかったから、多くの住民は情報がなく、行政がなんとかしてくれると思ってしまっている、という指摘もなされます。

まちづくり、に関わる要素は、高齢者ケア、子育て支援、商店街の活性化、防犯、防災など多岐にわたります。そしてその多くは、行政によりサービスメニューが用意されていると同時に、行政だけでは成立しません。横浜市も、自助、共助、公助という言葉を使いながら、災害時の対策の必要性を住民に広報してきているところです。とはいえ、上述の通り行政サービスでは何が賄えなくて、自助・共助レベルで何が必要なのか、十分な情報があるかどうかが問題です。例えば、青葉区には消防署が1署6出張所あり、187人の隊員が交代で勤務し、消防車両が11台、救急車両が4台ある、といった情報がどれだけ届いているか。大災害が発生した時、救急車が4台しかないということは、沢山のけが人が発生して119に電話をしても、救助には時間がかかるわけです。そうすると、地域住民で助け合わなくてはいけない。AEDや人工呼吸といった応急措置が必要になることもあるでしょう。そのために、毎年自治会や、防災拠点で防災訓練が行われているわけです。

まちづくりとストーリーとしての情報

少子高齢化や縮小する国内市場などの問題を抱え、今後はこれまでにない新しい取り組みが様々なレベルで必要になってきます。まちづくりも、そうした社会変動と向き合いながら、地域の事情、特性に応じた取り組みがなされていくことと思います。具体的な解決策を導き出すためには、当事者である地域住民間の対話や参加が必要なのは言うまでもありませんが、その課題を把握するための情報がどれだけ提示され、共有されるかもまた重要です。

そしてこの場合の情報は、ただ数字が示されたり、手順が示されたりするだけでは不十分だと考えます。「ストーリー」として組み立てられ、伝達され、共感されることが重要だと考えます。防災だけでなく、まちづくり、地域の活性化全体に言えることだと思います。「誰かが何かやっている」ではなく、「それなら自分も参加したい」と思えるような、情報提供・共有の在り方。そのストーリーを提供するのは、コーディネーターかもしれないし、自治会かもしれないし、行政かもしれないし、他の住民かもしれない。誰が担うにせよ、具体的な数字や背景に基づき、説得力を持ちながら、未来を提示する。そんな作業、情報の提供の在り方が、必要だなと考えています。

Comments 2

  1. yummy より:

    「郊外住宅地のあり方研究会」の創刊号を読みました。情報はウェブには無いのでしょうか?探しても見つかりませんでした。創刊号が2012年1月ですからどこかにあるのだと思うのですが、どこにあるかご存知でしょうか

    • 藤崎浩太郎 より:

      こんにちは。当局確認しましたが、紙で刷っているだけで、Webには公開していないそうです。
      横浜市と東急の協定ができる前の資料なので無いようですね。

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