放課後NPOアフタースクールの、取組みについて。視察報告。

2014-06-05 23:31:10 | カテゴリ:活動報告


放課後NPOアフタースクール

放課後NPOアフタースクール」さんの視察に、中野区にある新渡戸文化学園を訪問しました。放課後NPOさんを訪問するのは、今回で2回目。代表理事の平岩さんにも覚えて頂いていて、光栄です。

アフタースクールの取組みは名前の通りで、放課後の子ども達の安全・安心な預かりを用意する事と、本物で多様な体験を提供する事が行われています。詳しくはHPをご覧頂けると分かりやすいですが、ミッションとして(1)子ども達の「内面的ドロップアウト」と(2)小1の壁問題を解決するために、社会で子どもを育てることが掲げられています。

鎌倉でも「鎌倉アフタースクール」が行われましたが、鎌倉は常設ではなく、一時的なプログラムの提供。今回訪問した新渡戸文化学園を始め、私立の学校5カ所では、現在常設でアフタースクールの取組みが行われています。

元々は平岩さんが30歳の時に子どもが生まれ、一方では児童の連れ去りなども社会問題化し、自分で何か出来ないか考えていた時に出会ったのが、アメリカで行われているアフタースクールの取組みでした。アメリカでは、学習のドロップアウトと、犯罪のドロップアウトを防ぐために、学校の中で税金によってアフタースクール事業が取組まれているそうです。

放課後NPOアフタースクール

放課後NPOさんの取組みでは、サイエンスパフォーマーによる理科の実験や、東京ヴェルディのコーチによるサッカー、プロのイラストレーターによるデザインの授業、建築士の方と一緒に行う建築の授業(警備員の方の詰め所が作られています!)、などプロによる体験型のプログラムが提供されています。今日見学したデザインの授業では、自分で描いたイラストで缶バッヂを作る、というプログラムが行われていましたが、「ターゲット:幼稚園の子ども達」という事が講師から示されていました。工作や美術ではなく、「デザイン」とされているのが良くわかります。

放課後NPOアフタースクール

放課後NPOアフタースクール

横浜においては放課後児童の預かりとしては、放課後キッズクラブ、はまっ子ふれあいスクール、放課後児童クラブ(学童保育)の3つの事業が行われています。はまっ子はキッズへ移行されるので、今後はキッズと学童の2本立てとなります。それぞれ提供されるプログラムや、時間、費用等違いがありますが、放課後の児童を預かるという面では同じです。

また待機児童対策が進む中、小1の壁として、子どもが小学生になった途端に預ける先が無くなる、という課題ももちあがっています。学校の中で預けるのか、外で預けるのか、それぞれメリット、デメリットもありますが、それを乗り越えて行かなければ、「子ども達のための」教育・育成環境という面からは、十分な対策ができないのではないかと考えます。また予算の分散/集約といった面や、プログラムの充実といった面からも、放課後児童の預かりは見直しが必須だと考えます。

平岡さんが仰っていた事で印象に残ったのは、「親子の時間が多い方が、子どもの自己肯定感が強くなる」という意見です。2014年版「子ども・若者白書」では、日本やアメリカ、韓国等7カ国で13〜29歳の男女に行ったアンケートの結果、「自分に満足している」と答えたのは日本が最下位だったということが示されました。放課後NPOアフタースクールの問題意識にも、子ども達の「自尊感情、自己肯定感が薄い」事が示されています。平岡さんがオランダに行った時にも、親子の時間が長い事の重要性が指摘されたそうです。子どもは、自分が成長すれば喜んでくれる人がいると、がんばれるようになると言います。(オランダはワークシェアリングが進んでいるので、子どもが家に帰るとどちらかの親が家に居る事も多いそうです。)

放課後NPOでは、自己肯定感の課題に対しての取組みの1つとして、「今月の!『いいね』」を行っています。これはスタッフの方々が子ども達を毎日接する中で、子ども達の良かったことを記録をしながら、最終的に表彰するという取組みです。「5月のいいね」では、「とても礼儀正しく、相手の気持ちを考えて行動できています」や、「誰かがやらなくてはいけないことを、自分から率先してやろうとしてくれます」などの評価の言葉が並んでいました。菊池省三先生という北九州市の小学校の先生も「ほめ言葉のシャワー」という取組みを行っていますが、家庭で褒められるのも重要だが、学校で同級生に認められたり、先生や、アフタースクールの講師に褒められると、子ども達は更に成長すると、平岩さんもおっしゃいます。

親や保護者との時間、コミュニケーションが増えれば、子どもの自己肯定感に良い影響があるとすれば、大人の働き方を変えて行かなくては行けないなと、改めて思います。少子化という課題を抱える中で、「女性の」社会進出が進むと、出生率が上がると示されてきました。しかしながら、あくまでも「女性の」であり、女性が既存の働き方、男性中心の働き方に合わせなくてはいけない、という状況にもあります。「男性の」育児参加が必要と言っても、男性の帰宅が遅ければ、そもそも参加のしようもありません。保育所に預けるにしても、仕事を途中で切り上げて帰らなければいけない、という側面もあります。自己肯定感を得ようが無い環境にある子ども達に、家庭の外にどうやってその環境を用意するかも課題です。

戦後の、ある特別な期間に、たまたま成立した働く環境、現在とは合わなくなっている働く環境を、根本的に変える時期に来ているのは、多く論じられてきた通りだと思います。性別に関係なく働きやすい環境を作って行くこと。性別に関係なく、長時間労働を減らして、18時、19時には帰宅できるような環境を作っていくこと。身近な環境でも、仕事を得やすく、しやすくして行く事。そういったことが、子ども達の成長にとっても、必要不可欠だと認識し、取組んで行く事が重要です。

また、子ども子育て支援新制度が来年度より動き始めますが、一方では関係する業界の方からは、「子どもが置き去りにされている」という声も聞こえてきます。どこから手をつけて行くのかは難しいことでもありますが、現時点では子育てしながら働きやすい環境整備が進められたという状況です。今後は、より子どもの成育環境、学習環境に主眼を置いた、社会の変化、制度の設計が求められるのではないかと考えます。その取組みの1つが、放課後における子ども達の過ごし方になるのだと思います。これまで数十年に渡ってできてしまった、様々な既得権やしがらみに大人達がしばられて、口先だけの「子どものため」の取組みにならないよう、覚悟をもって取組まなければと思います。

子ども達が作った、守衛さんの小屋。
子ども達が作った、守衛さんの小屋。

毎月発行されるレポート。
毎月発行されるレポート。

アフタースクールの設置が、学校の魅力向上にも。
アフタースクールの設置が、学校の魅力向上にも。

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