議会BCPの策定と、大学との連携。大津市議会視察。

2014-11-07 23:46:26 | カテゴリ:活動報告


大津市議会

大津市議会

2014年11月7日、横浜市会運営委員会の行政視察で、大津市議会を訪問しました。主な視察項目は、議会BCP(業務継続計画)について、大学とのパートナーシップ協定について、議会ICT化事業についてです。

議会BCP

大津市では2014年3月に、災害時の議会機能維持のために、議会BCP(業務継続計画:Business Continuity Plan)を策定しています。これまで2011年3月の東日本大震災など、議会の開催が災害発生により困難になった際、市長の専決処分として対応が行われてきていました。今回のBCPの策定では、災害時における議会、議員の役割が定められています。議員の普段からの役割についても定義がなされ、(1)議会の構成員としての議員(非代替性)と(2)地域の構成員としての議員(代替可能)という2つの側面が示され、(1)の立場が優先されることになっています。特に審議を行う環境の確保、整備のために、発災後1ヶ月間の行動原則について示されています。まず発災直後には、議会災害対策会議が設置されます。構成員は議長、副議長、各会派の代表者で、すべての議員ではありません。災害対策会議の議員は、発災直後から他の業務に優先して災害対策に専従し、事前調整や協議を行う場として、議員の安否・参集に関することや情報収集、市の災害対策本部との連携などについて対応を行います。そして初動期(発災後〜3日間)は事務局職員の参集、対策会議の設置、安否確認、情報収集が行われ、議員災害対策会議からの参集指示があるまでは、地域活動に従事することになります。中期(3日〜7日)は災害情報の収集、把握、共有が行われ、対策会議からの参集指示があれば速やかに議員活動に専念します。後期(7日〜1ヶ月)では、議会機能の早期回復が行われ、本会議・委員会の開催により、復旧、復興予算などの審議が行われます。1ヶ月を過ぎれば平常時の議会体制へと移行し、復興計画などについて、議会として審議を行うことになります。

今年8月に初めて議会BCPが発動されています。台風11号により市に災害本部が設置され、議会災害対策会議が設置されました(15:00)。16:00には第1回目の会議が開かれ(10人中6人参集)、災害情報(市の災害対策本部の情報)や、議員、事務局員の安否確認状況が報告共有され、18:00には第2回目の会議が開かれ(9人参集)災害情報の報告・共有が行われ市の災害対策本部が解散したことにより、議会災害対策会議も解散しています。この初めてのBCP発動により、安否確認作業や災害対策会議メンバーの参集が遅れたことなど課題も明らかになり、その対応が行われています。また議会の防災訓練が毎年1回行われるので(今年は11月4日開催)、訓練の検証を踏まえて、計画の見直しを行うことも規定されています。

この議会BCPの策定は、2011年から設置されている「政策検討会議」での協議によって行われています。政策検討会議は政策立案を目標に、具体的な調査、研究を行い、各会派から選出した議員によって構成されています。交渉会派からの提案を受け、議会運営委員会で賛同が得られた場合に設置されます。各会派から1名程度が参加し、10人以内で構成されることとなっています。合わせて議員全員による政策検討会議全体会も設置され、検討会議での経過報告を受けて、議会全体で協議が行われます。調査研究や条例案の検討・作成にあたっては市の関係部局はもちろん、参考人招致や公聴会の開催も必要に応じて行われます。また政策アドバイザー制度により、大学との連携も必要に応じて行われています。これまで政策検討会議での主な協議事項は、「大津市議会議員の政治倫理条例」の制定(2011)、「大津市子どものいじめ防止に関する条例」の制定(2012)、「議会BCP」の策定(2013)などとなっています。議会BCPで大津市は、2014年マニフェスト大賞優秀復興支援・防災対策賞を受賞しています。

大学とのパートナーシップ協定

上述の政策アドバイザー制度は、政策立案機能向上のための大学との連携制度となっています。大津市ではこれまで、龍谷大学(2011.11〜)、立命館大学(2014.1〜)、同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科(2014.4〜)とパートナーシップ協定を結んでいます。龍谷大学とは、いじめ防止条例策定にあたっての講師紹介や、議会報告会のファシリテーター派遣などが、立命館大学とは議会基本条例制定に向けての指導やインターンシップ学生の会派による受け入れが、同志社大学とは議会BCP策定における指導や、(仮)防災基本条例の制定へむけた指導などが、それぞれ行われてきています。基本的には議会と大学とがwin-winの関係になるよう考えられているということで、講師の派遣などでは、1人あたり3万円の講師料が払われていますが、協定がなければもっと高い金額になるのではないか、ということでした。また大学側からするとインターン生の受け入れはメリットになっているということです。インターン生の受け入れは各会派が大学にエントリーシートを出す仕組みとなっていて、「私達の会派にインターンに来ると、こんなことができます」ということをアピールしています。今年の8月〜9月に5名のインターン生を受け入れたということですが、その5名は3つの会派(全8会派中)で受け入れが行われたそうです。大津市議会では、このパートナーシップ協定により2013年マニフェスト大賞議会グランプリを受賞しています。

議会ICT化事業

大津市議会では、個別賛否表示システムやタブレット端末の導入などが行われています。そのきっかけになったのは、昭和42年に建設された役所の老朽化により、議場のマイクなど放送設備が急遽故障したことによります。せっかく改修するのであればということで、ICT化に対応した議場設備が目指されます。議場の演壇の後ろには150インチの大型スクリーンが設置され(議場の両サイドには47インチの液晶モニターが1台ずつ先行設置)、議員個別の賛否表示システムが導入されました。これにより、2階の傍聴席からも議員の様子が見えやすくなり、賛否についても会派での賛否ではなく個別の賛否まではっきりと分かるようになったことで、議会の臨場感も透明性も高まったと言います。個別賛否の表明のために、各議員席にはマイクと一体となった投票ボタンが配置されています。こうしたICT化によって、それまで放送設備運用のために3名職員が必要だったものが1名で足りるようになり、速記者を廃止したことで年間110万円のコスト削減を実現しています。

また11月28日から開催される予定の通常会議において、タブレット端末が導入されます。タブレット端末には、議会関連資料のペーパーレス化、文書保存・管理の効率化、議会運営の効率化を図るために、本会議や委員会で利用する「会議(同期)システム」(端末を一括操作できる)、「議場内通信システム」(タブレット間のメッセージ送受信機能。事務局と議長のやりとりや、議員の再質問の答弁調整、事務局から議員への情報伝達などに利用。)、議会スケジュールやファイル管理、災害発災時の情報収集・緊急連絡等で使用する「グループウェア」(サイボウズ)が導入され、タブレット端末を多角的に活用することが目指されています。タブレット端末導入の準備として、議会中継サイトなどをタブレット端末対応に切り替えたところ、録画中継などのアクセス数が、それまで8,000〜9,000だったものが、昨年で13,000に、今年では19,000に増えたといいます。このwebサイトの切り替えにはコストがかかっていないということなので、一言にICT化といっても、いかに現実的な利用シーンに合わせた提供方法を用意するかの重要性がわかります。

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