田奈高校の「ぴっかりカフェ」と若者就労支援

2015-05-08 16:44:09 | カテゴリ:活動報告


ぴっかりカフェ

5月7日、青葉区にある県立田奈高校に訪問してきました。目的は在学中の就労支援の一環として、昨年12月からスタートした「ぴっかりカフェ」に参加するため。田奈高校は県立ですが、これまで横浜市こども青少年局とも協力して、「有給職業体験プログラム・バイターン」を始めとした就労支援の取組が行われています。

ぴっかりカフェは学校の図書室で、無料のコーヒーやジュース、お菓子などをつまみながら、生徒がくつろいで過ごせる居場所を提供します。原則毎週1回昼休みと放課後に開かれて、就労支援の専門家や大学生、地域のボランティアの方たちが、生徒達と会話をしたり、遊んだりしながら信頼関係をつくり、日頃の悩みを聞く相談窓口として機能し、その解決に結びつけていく機能として提供されています。今回の訪問の日は昼休みと放課後で、利用者がなんと105人!本を読んだり、マンガを読んだり、食事をしたり、部活の打ち合わせをしたりと、思い思いに過ごしていました。図書室を生徒にとって居心地の良い場所にして、自然と生徒が集まり、そこに相談できる大人がいて、少しずつ馴染みながら、気軽に世間話をしたりしながら、「悩んだ時には図書館で相談できる」という方法を提供しています。私もあちこち回って、部活で写真を撮っている生徒からカメラの話を聞いたり、アイドル雑誌を読みふける生徒から「ジャニーズWEST」について教えてもらったり、司書さんの手伝いをする生徒にコツを教わったりと、色々話を聞かせてもらいました。

ぴっかりカフェ

このぴっかりカフェはバイターンの一環として行われています。「バイターン」は、アルバイト+インターンの造語で、3日間のインターン期間を設け、地域の中小企業等とマッチングを行い、双方の合意に至ればバイトとして働き、最終的には卒業後そのまま正規雇用に結びついていくことを目指した取組で、「NPO法人パノラマ」が実施しています。ぴっかりカフェで出会う生徒達と、バイトについてや仕事について相談になりながら、バイターンにつなげていったり、その他の就労支援につなげていったりと、学校の先生だけでも、図書館司書さんだけでもできない部分を、担っています。先生や司書さんからは、その機能の重要性と活動に対する感謝の言葉が何度も聞かれました。

ぴっかりカフェ

ぴっかりカフェ

複合的な取り組みとしての就労支援策

田奈高校では2010年度の卒業生は、30名程度しか就職先が決定していなかったそうです。それが2014年度では、100名を超える生徒が就職先を決めて卒業したといいます。この背景には、複合的に就労支援体制を強化してきたことがあるそうです。主軸となるのが、ハローワークの求人と学校への求人票。ここ数年田奈高への求人票は、毎年600件程度。過去には倍以上あったそうです。当時は求人票だけでほとんどの生徒の就職先を決めることができたそうですが、現在は600件の中から就職に至るのは一部。求人票には「公開」と「非公開」の2種類があり、「公開」は田奈校に限らず全国の高校に出されている求人で、「非公開」は特定の学校を指定して出される求人。田奈高校場合は普通科ということもあり、ほとんどが「公開」の求人票のため、600件の求人票があっても、そこから内定に至るのは僅かとなってしまいます。

もう1つ重要な手段となっているのが、ハローワークの求人データベース。厚労省から校長が委嘱を受け、高校ではハローワークの求人データベースを閲覧可能になっています。進路指導室には民間の人材会社出身の方が配属され、ハローワークのデータベースから、有効な求人情報を選び出す作業が行われています。このデータベースの活用が、他の高校では十分にできていないのではないかという指摘がありました。田奈高の場合は民間出身者が専門のノウハウを活かして、生徒に合う求人情報を見つけだし、より効率的効果的にマッチングが行われています。

こうした主軸となるハローワークや求人票だけでは就職先が決まらない生徒もいたり、その就職活動にまで至らない生徒がいたりします。そうした生徒達を学校全体でフォローしつつ、バイターンなどの就労支援サービスを活用し、就労への道筋をつけていっています。校内の廊下には、テーブルとイスが所々に配置され、生徒が先生に相談したり、励ましてもらったりする場所となっていました。田奈高校の中退率は現在2%台まで低下しているそうです。過去には数十%ということもあったようですが、中退をしてしまえば就労機会が限られてしまいます。卒業時での進路決定の前に、しっかり卒業できるよう先生たちが工夫を凝らしながら、熱心に取り組んできたということです。

ぴっかりカフェは高校への出張相談所

ぴっかりカフェもこうした就労支援のための要素の1つ。図書館に来てもらい、話したり、遊んだりしながら、就労支援のプロや、ボランティアの方々と接し、アルバイトのことや卒業後の進路について気軽に相談できる。相談員が、図書館に毎週来ていることを知ってもらって、いつでも相談できる場と関係を作っていく。今回の訪問の際には、アルバイトに応募するための電話の掛け方の相談が生徒からパノラマの石井さんにあり、教わった方法で電話をかけた後には筆記試験があることが分かり、ボランティアで来ていた大学生に、筆記試験のための勉強を教えてもらうという流れが生まれていました。またアルバイトの相談をしながら、その生徒が抱える事情や不安についても吐露されたりと、心理的な側面のサポートも実現されていました。

こうしたNPOのサポートが、学校の図書室で行われることで、生徒がわざわざ相談機関に足を運んだり、電話を掛けたりするような、ハードルが取り除かれます。そもそもそうした機関やサービスの情報が無い生徒でも、週1回校内でぴっかりカフェが開催されることで、相談したりアドバイスを受ける機会を得ることができます。外部のサービスが学校内に届けられることで、「誰にどう相談していいか、相談できるものなのかわからない」という生徒でも、適切なアドバイスを受けることができるようになります。

ぴっかりカフェ

高校在学中支援の重要性

「横浜市こども・若者実態調査」(2012年)では、市内に引きこもり状態の若者が8,000人、無業状態の若者が57,000人いると推計されてきました(※若者:15〜39歳)。横浜市でもこれまで地域若者サポートステーションを始めとして、様々な施策が導入されてきていますが、学校卒業後は困難を抱える若者一人一人に直接アプローチをかけるのは難しくなります。どうしても、本人や家族から相談があるのを待たざるを得ません。しかしながら高校在学中であれば、生徒の所在も掴め、学校という生徒が足を運ぶ場があるため、相談に乗ったりアドバイスをしたりすることが容易です。こうした学校という場を活用して、サポートサービスを届ける仕組みを充実させて行くことで、無業状態のまま社会に出て行ってしまう若者を減らすことが可能になります。

困難を抱える若者の背景には、家庭の貧困などが指摘されてきました。貧困であるが故に無業に陥り、無業であるが故に貧困になってしまう、こういう連鎖を断っていくことが、いま横浜でも全国でも重要な課題として取組まれています。出来る限り卒業後の進路を決定させてから高校を卒業できるよう支援をし、卒業した後にも支援を継続できるような体制の整備が重要です。今回の訪問の際には、卒業生がたまたま図書館に遊びに来ていました。また卒業した後でも、「会社を辞めたい」という相談が先生や進路指導員、相談員の方に入ることがあるそうです。身近な環境に、相談できる大人がいること。学校が一丸となってサポートすること。先生だけではなく、各分野の専門家が集って協力体制を整えること。田奈高校での取り組みが注目されているのは、こうした体制を様々な方が一生懸命築いてきたからこそです。5月12日には、ドイツからの視察も受け入れる予定となっていました。横浜市でもより多くの若者がしっかり働いて、自立できるよう、こうした取り組みを拡充していく必要があると考えています。

<参考>
横浜市立大学:困難を抱える若者のキャリア形成・雇用創出支援に関する政策提言事業報告書
有給職業体験プログラム・バイターンの意義(PDF)

藤崎浩太郎のこれまでの議会での議論
・青少年の自立支援について、25年度決算審査から
 https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry2318.html
・静岡方式、豊中市の視察から
 静岡方式:https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry2428.html
 豊中市:https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry2218.html
・2015年3月、議案関連質疑から
 https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry2556.html

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