低炭素化の取組で経済成長。視察報告。

2015-10-30 09:01:42 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

10月29日は、横浜市会の「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察2日目。北九州市のアジア低炭素化センター、福岡市のセントラルパーク構想、水素創エネ技術について、の3か所を訪れました。

アジア低炭素化センター

北九州市は「世界の環境首都」そして「アジアの技術首都」を都市ブランドとして掲げ、その構築を目指しています。2050年にはCO2排出量を、市内で2005年比50%、アジア地域で150%削減することを、環境モデル都市として掲げています。そうした中、低炭素化を通じて地域経済の成長を実現するために、「アジア低炭素化センター」を2010年6月に開設しています。

北九州市の環境政策は、公害問題の克服から始まります。戦後公害問題が深刻化するなかで、当時の婦人会を中心とした市民による公害対策運動が活発化します。そこから市は公害対策局の設置や公害防止条例の制定などに動き、企業は生産工程の改善や汚染物質除去処理施設の設置などに取組んでいきます。市民と、行政と、企業との連携により郊外が克服され、また世界銀行の調査では経済発展とともに環境汚染も改善していく姿が明らかにされてきました。その後、循環型社会形成政策への取組や、持続可能な社会形成政策、低炭素社会形成政策、自然共生形成政策と、環境政策の取組が継続して行われてきました。

アジア低炭素化センターは、これまでの環境技術や、先進的な社会システム(北九州エコタウン等)、国際協力で構築した都市間ネットワークを活かして、環境ビジネスの手法でアジ化の低炭素化を促進することを目指しています。センター長には小宮山宏氏(前東大総長)を迎え、(1)北九州国際技術協力協会(KITA)、(2)北九州市環境局環境国際戦略室、(3)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンター、の3機関が連携をして、それぞれ(1)専門人材の育成、(2)技術輸出の支援、(3)調査研究情報発信、という役割を担っています。そして、「北九州モデル」を活用して、総合的な都市ソリューションを提供することを目指しています。

北九州モデルでは、点と点の支援ではなく面での支援が目指され、インドネシアのスラバヤ市では「ソーシャルマスタープラン」の策定を行っています。廃棄物処理やコジェネレーション&省エネ事業、水道水の浄化、排水処理を包括的に支援する内容となっています。こうしたソリューションは、課題の把握から、調査・計画、事業化の検討、事業化、そして環境配慮型都市の実現へと、市だけでなく、コンサルタント/専門家、民間企業、政府機関等が一体となって提供されます。

これまで、インドネシアのスラバヤ市、ベトナムのハイフォン市、タイのラヨン県、マレーシアのイスカンダール工業地帯を重点にしながら北九州モデルを適用し、都度フィードバックを行い、よりモデルを発展させていると言います。これまで北九州市が関わり、アジア56都市において、日本企業89社と連携し、110のプロジェクトを実施しています。各種プロジェクトには国やJICA等の補助金が使われ、110のプロジェクトで50億円を超える外部予算が投入されていると言います。市予算だけではできないこと、企業だけではできないことを、国等の補助金を活用しながら、様々な調査などに活かしているといいます。

110のプロジェクトもまだまだ課題があるようで、職員の方からも「過大評価されている」という言葉も漏れていました。110の内、実際に事業課に成功したのは10件程で、トータルで数億円規模にとどまっています。50件程はまだ調査中でこれから事業化を目指していて、その中には数年以内には大型の案件が決まる可能性もあるということでした。さらに残りの50件程は、事業化は困難と判断したものとなるそうでうす。2010年の開設以来、職員の方々も手探りで進めてきて、ようやくここまで来ているという感想でした。市の直接の部署は環境局となっていますが、人事面では経済局出身者が配置されたりしているようで、その背景・目的としては、やはり企業との連携が必要ななかで、市職員のうち企業とのネットワークがある職員が配置されているということがあるそうです。

今後も取組を進めながら、アジア諸都市のCO2削減や汚染の緩和、生活の質の向上を実現し、合わせて北九州市の市内企業を中心に、海外での環境ビジネス展開によって、地域を活性化し、双方がWIN-WINの関係になることを目指されています。

藤崎浩太郎
マスコットキャラクター「ていたん」

福岡市セントラルパーク構想

福岡市には、大濠公園と舞鶴公園という大きな公園が隣接していますが、それぞれ福岡県と福岡市が管理してきました。福岡市の管理する舞鶴公園には、「鴻臚館」という古代(飛鳥・奈良・平安時代)の迎賓館施設の遺構と、福岡城跡でもあり、それぞれ国史跡となっています。セントラルパーク構想では、県と市が一体となって後援の活用を図り、県民、市民の憩いの場として、また歴史、芸術文化、観光の発信拠点として、公園を大きなミュージアムと見立てた公園づくりを行うことが目指されています。昭和40年台から構想があり、ようやく形になってきたという、長期的な取組でも有ります。

史跡にも指定されている公園エリアには、戦後の混乱期に住宅や学校、高等裁判所に陸上競技所、野球場などが建設されてきました。セントラルパーク構想を進めるにあたり、こうした施設を移転、撤去する取組が進められ、3小学校と1中学校は統合、高裁は移転が決定、野球場も更地になり、住宅も移転予定となり、それぞれの土地は広場や施設の復元などが行われる予定となっています。セントラルパーク構想において、スターバックスコーヒーなどの建設を求める意見もあるようですが、「史跡」に建設を行うことには規制があるため、簡単ではなさそうでした。既に大濠公園にはスターバックスコーヒーや、レストランなどが建てられていますが、大濠公園は史跡指定を受けていないから可能という状態。史跡エリアにも「福岡城むかし探訪館」といった施設が建てられていますが、場所や建て方など埋蔵文化財を傷めないような配慮や、史跡指定されている「福岡城」に関連する内容のものしか建てられないなど、様々な配慮がなされています。

構想の基本的な方向性として、両園の一体整備や、歴史を活かすこと、賑わいづくりなどが掲げられていますが、注目したいのは「みんなで育てる公園づくり」という方向性。公園財源の確保などに、市民や企業に参加してもらい、県市協力の下管理運営体制を充実し、周辺地域と連携したまちづくりの推進などが謳われています。担当の方から伺うと、人口約153万人の福岡市民の多くは、大濠公園・舞鶴公園に来たことがないと言います。市としては市民の誰もが一度は公園を訪れ、市民に愛される公園にしたいと仰っていたのが印象的でした。私は子どもの頃にお城の近くの学校に通っていましたが、当時落葉の季節になると、お城に掃除に行っていた(行かされていた)のを思い出します。

スターバックスコーヒー
大濠公園内のスターバックスコーヒー

舞鶴公園
舞鶴公園内の櫓

下水バイオマス原料による水素創エネ技術について

福岡市は水素エネルギー社会の実現に向けて、「水素リーダー都市プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトの第1弾として、三菱化工機株式会社、福岡市、九州大学、豊田通商株式会社の4者が共同研究帯として、国土交通省下水道革新的技術実証事業(B-DASH)の取組を行っています。この中では、下水から水素をつくり、燃料電池自動車(FCV)に供給するという、世界で初めての水素ステーションが開設されています。水素ステーションは中部水処理センター内に設置され、水処理センターでの下水処理の過程で排出される汚泥を、46℃に温め15日間消化(腐敗分解)させることで発生する消化ガスを原料にして水素を製造しています。

現在は実証実験段階で、三菱化工機㈱は設計・施行・管理、九州大学は分析、豊田通商㈱は事業化の評価を行っています。下水バイオガス2,400㎥/日より、水素3,300㎥/日(燃料電池自動車約65台分)を製造していますが、まだ市内にFCVが4台ほどしか普及していないので、日を決めて水素ステーションでの水素の供給を行っているそうです。施設全体の特徴としては、(1)下水汚泥メタン発酵設備から発生した下水バイオガスから高純度水素(99.9%)を製造すること、(2)燃料電池自動車等へ供給することにより温室効果ガスの削減に寄与すること、(3)エネルギー需要地に近い都市部の下水処理場に水素ステーションを構築することで、市民生活への多角的な貢献ができること(エネルギーの地産地消)が示されています。今後は水素出荷施設を設けて、他の水素ステーション(オフサイトステーション)へ運搬・供給することや、水素製造工程で発生するCO2を回収し、農業へりようすることなどが目指されています。

水素ステーション

水素ステーション

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