自治会ごとに2名の市職員配置。佐久市の防災減災。

2015-11-12 08:52:36 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

11月11日は「減災対策推進特別委員会」の視察で、佐久市役所を訪問しました。前半は市長からTwitterの話を伺い、後半は職員の方から佐久市役所の防災に関する取組を伺いました。

佐久市においても横浜市や他自治体同様、総合防災訓練が行われています。今年は悪天候により中止になったそうですが、毎年防災の日周辺で開催され、警戒宣伝発令・広報訓練、非常招集訓練、避難所開設訓練といったところから、トリアージ訓練やドクターヘリ要請収容訓練まで、一通り流れを想定しての訓練となっています。想定される災害の想定も、震災、火災、水害・土砂災害、ライフライン(公共施設)被害、浅間山噴火、と5つの想定が行われています。とは言え、佐久市には活断層がなく、大きな震災の被害はあまり想定されていないのと、浅間山の噴火についても、佐久市が直接被災するというよりは、軽井沢町や御代田町などの直接被災する地域の方が、佐久市へ避難し受け入れることが想定されています。5つの想定のうち、最も重視されているのは、水害・土砂災害想定となっています。総合防災訓練に先立って市職員の防災訓練が行われていますが、2015年度はこの水害・土砂災害の想定でした。大雨(土砂災害)警報が発令され、土砂災害警戒情報が発令されたという想定の中、各種訓練が行われています。今年は2回、実際に土砂災害警戒情報が発令されたとのことです。

地域防災を担う「災害発生等状況通報担当者」と自治会

佐久市の取組を伺って、非常に興味深かったのが「災害発生等状況通報担当者」という制度です。これは、佐久市内に240ある自治会に、それぞれ2名の市職員(主任、副任)の担当者を定め、自治会長と連絡をとりあう体制を整えているものです。主に災害等有事の際に機能する仕組みのため、災害発生時に現場に出動するような職員以外の、事務職系職員が配置されています。現業職員など含めて市職員が800名程ということで、配置対象となる職員のほぼ全てが、どこかの自治会の担当についているという状況とのことでした。

災害発生時等状況通報担当者は、自治会長(区長)と日頃から連絡を取り合いながら、信頼関係を構築しています。基本的には災害に関する担当ではあるものの、突発的に自治会への連絡が必要な事が発生した場合は、災害に関わらず担当者が自治会長へ資料を届けたりしているそうです。担当になる職員は、できるだけ本人が居住している地域や近くの地域に配置されることとなっていて、自分の街を守ろうという意識の中で仕事ができるように考えられています。こうした活動、関係性の中から、日頃より災害発生時に危険がある場所や課題などを自治会と共有していて、水害・土砂災害の対策、対応についてもスムーズに行われているといいます。

240ある自治会の内、230の自治会には自主防災組織が置かれ、70%ほどの自治会では防災訓練が行われています。防災訓練の参加者は7〜8割にのぼるそうで、参加意識の高さや、コミュニティの強さが伺えます。自治会の規模は、10万人の人口で平均すれば1自治会400名ちょっととなりますが、最小のところは30名程度とのことです。防災訓練が行われていない30%の自治会は、高齢化による担い手不足で訓練を行わなくなったケースもあるそうですが、日頃災害の発生が無いことによる危機感の低下も原因として有り、市としての課題にもなっています。防災訓練を行うよう、指導もなされているそうです。現在防災士の資格取得を推進していて、自治会に対して防災士資格取得の費用を市が助成しています。今後は防災士を中心にした防災体制づくりを、目指しているとのことでした。

行政と自治会の関係性と、議会・議員の在り方

自治会長の多くは、1〜2年程度の任期で代わっていきます。一方担当職員の担当地区配置の任期などは無いため、担当地域においては大きな影響を持つ可能性もあるのではないかと考えます。佐久市では毎年5月30日までに、各自治会から市への要望がまとめられ、市は提出された要望の現場確認などを行い、7月30日までに回答を行うことになっています(実際の対応は7月30日までではない)。この自治会からの要望において、例えば道路の修繕や、草刈りといったことも提出されています。

横浜市においても、連合自治会に2名の区役所職員を配置する取組が行われてきていますが、佐久市の状況は横浜市とは比較にならないくらい、規模の大きな取組となっています。佐久市では基本的には災害に関する業務として担当がついていますが、こうした取組が発展していけば、御用聞きのような仕事は市職員が担えるようになりますし、地域担当があるのでより責任も明確になります。自治会からの要望も機能しているようで、各自治会の年1回の要望も、市の予算や優先順位などを考慮して、自制的になされているといいます。一方従来の議員の在り方としては、まさにこうした地域の細かい要望に応えるという仕事もありましたが、自治会と担当職員で対応が可能となれば、議会は行政のチェック機能をより向上させたり、議員も政策により力点を置けるようになります。議会や行政と住民との在り方、関わり方を変容しうる可能性をもった取組だと感じました。

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