東京都も力を入れる、起業支援。TOKYO創業ステーション視察。

2017-08-12 00:07:59 | カテゴリ:活動報告


TOKYO創業ステーション

8月7日民進党横浜市会議員団の会派視察で、千代田区丸の内にある「TOKYO創業ステーション」と「STARTUP HUB TOKYO」を訪れました。福岡市や神戸市でも起業支援の取り組みが盛んに行なわれていますが、今年の1月から東京都でも取り組みが始まったということで、現状の取組みについて伺ってきました。

新たな雇用の創出

東京都が起業支援に取組むようになった背景には、イノベーションを起こし、新たな雇用を創出するには、起業家の創出が必要だと判断したことにあります。日本における開業率は4.6%と、フランスの15.3%、イギリスの11.4%など先進国のなかで低い状況にあります(「2014年度版中小企業白書」)。既存の中小企業では新たな雇用創出ができないという研究成果などもあり、新たなアイディアで、既成概念のない、起業家創出に取組むこととし、東京都としては2024年度まで開業率を10%にするという目標を設定しています。

一方では、起業家の数は微減ながら横ばい傾向が続いているものの、起業希望者は1997年から2012年にかけて半減しており、このままでは起業家も減少する恐れがあります。そこで東京都としては、従来どおりの起業希望者への支援に加えて、起業希望者を増やすための取り組みを始めることとなります。それが「STARTUP HUB TOKYO」です。起業に関する相談者は、家族や起業仲間、企業の先輩が多くを占めるものの、相談する相手が居なかったという方が最も多く、さらに自治体の窓口があまり活用されていないことも分かっています。経営知識や専門知識、資金調達といった初期起業準備者が直面している課題を、行政の窓口が提供してきたにも関わらず、です。

こうしたことから、起業家につながる起業希望者という母数を増やしていくことと、起業家のニーズと行政サービスのミスマッチを減らすことが、東京都の起業支援の課題として浮き彫りになります。こうした課題を解決するために、「創業支援拠点」を開設することになり、「TOKYO創業ステーション」が丸の内に開設されることとなります。ステーションは、1階と2階からなっています。1階は「STARTUP HUB TOKYO」(SHT)という、起業希望者を発掘、育成する出会いの場所、2階の「創業ワンストップサポートフロア」では、起業意思を持つ方へ、創業アイディアの具体化から事業化までをワンストップで支援する場所となっています。

SHTの共有ラウンジは自由に利用でき、起業に関するような書籍を読めたり、コンシェルジュ相談ができたり、毎日のようにイベントが行われたり、具体的な起業準備を始めた「プレアントレメンバー」専用サロンがあるなど、起業に関心のある人を、起業希望者へ育てていくための仕組みが用意されています。SHTで起業希望者となり準備を始めるとなると、2階のワンストップサポートフロアでサービスを受けることとなります。2階では創業アイディアの具体化から、経営ノウハウの習得、ビジネスプラン作成、事業化までをワンストップでサポートできる体制が整い、年4回開催される「TOKYO起業塾」では入門コースから実践コース、ベンチャープログラムなど、細かなカリキュラムが提供され、担任制をとる「プランコンサルティング」では、マーケティングやビジネスプラン作成などを、5回〜10回通いながら伴走型でサポートを受け、修了証の発行まで行なわれています。その他、相談ブースでは司法書士、社労士、税理士への相談ができたり、日本政策金融公庫や東京信用保証協会、東京TYフィナンシャルグループに融資相談ができたり、業界・専門別ワンポイントセミナーが年24回開催されたりと、細やかなサポートをワンフロアで受けられるようになっています。また、起業において重要になるのがいかに投資を集められるかですが、ベンチャーキャピタルの方々を招いてのピッチ会を設けたり、大企業へのプレゼンの機会をつくることで、投資や事業連携に繋げられる機会を設けています。

1月の開設以降7月末までに、1階のSHTには延べ22,259人が来場し、メンバー登録は5,566人、イベント回数は239回、相談件数は延べ1,139件という実績があり、2階には1,185人の登録者と、2,140件の相談件数という実績があがっています。1階の利用者は、副業というようり独立起業志向の方が多いらしく、利用者の70%がフルタイム、5%が主婦、3%がパートタイム、未就業者が十数%というような構成になっているとのことで、意外と15時や16時代に利用者が多いそうです。

TOKYO創業ステーション

課題

TOKYO創業ステーションの持つ数値目標は、2024年度の開業率10%とというものがあるものの、この数字はあくまでも都政全体での取り組みから実現しようという数字で、ステーション単体での目標というわけではありません。数値としては、女性の起業希望者を500名輩出しようという数字がありました。起業希望者の育成においては、多くの方に気軽にSHTに訪れてもらえるようにしたいと考えるなか、福岡市の「スタートアップカフェ」を参考にして、設計が行われたといいます。

今後は成果測定が課題になるのではないかと、感じました。予算については平成28年度約7億1千万円、平成29年度約6億6千万円と、多額の支出がなされている一方で、1階のSHTに訪れる方の追跡調査は行なわれていません。これは積極的に起業を目指すには至っていない方を対象とした場であるため、来場者への心理的負担を極力避けるためという理由です。2階のサポートフロアを利用する方の追跡調査は行われているものの、2024年度の10%という数値はTOKYO創業ステーションだけで実現する目標値ではないため、直接的な成果測定がしづらい状況にあります。SHT設立時は、目標値の設定について、財政当局とは激しいやり取りがあったといいます。SHT自体は来場者数の目標を設置してはいますが、基本的には「機運醸成」のための場として、譲らない部分もあったそうです。とはいえ、「ワイズスペンディング」という考え方や、都民からの理解を考えると、今後は成果指標が必要だと考え、検討がなされているとのことでした。現時点では、実際に創業した人の事例集の発行や、2階の登録者へ年2回アンケートを行なうようになってきているという状況でした。

1階
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キッズスペース

2階
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