札幌国際芸術祭の取り組みからみる、芸術祭の現在。

2017-08-13 15:33:22 | カテゴリ:活動報告


札幌国際芸術祭

8月8日、観光・創造都市・国際戦略特別委員会の視察で、札幌市の「札幌国際芸術祭」の取組みについてお話を伺い、開催状況も拝見しました。

札幌国際芸術祭(SIAF)は、2014年が第1回目で、今年で2回目の開催となるトリエンナーレ。横浜市でも本年はトリエンナーレ開催年であり、ヨコハマトリエンナーレは2001年が第1回目で、今年で6回目の開催となっています。SIAF2014はゲストディレクターに坂本龍一氏が就任して開催。SIAF2017は、大友良英氏をゲストディレクターに迎え、「芸術祭ってなんだ?」をメインテーマに、「ガラクタの星座たち」をサブテーマに開催されています。今回のテーマには、なんだ?と聞かれれば10人10色の答えがあり、その多様性を認め合おうという意味が込めれられています。

札幌市の文化政策の転換は、2003年に遡ります。2003年に上田市長が誕生すると、2004年には観光文化局の設置、2006年には「創造都市さっぽろ」の宣言、同年議員提案による「文化芸術振興条例」の制定など、文化政策に注力されていきます。その後2012年に「札幌国際芸術祭基本構想」が策定され、2013年にはユネスコ創造都市ネットワークへの加盟が行なわれ、2014年の第1回目の札幌国際芸術祭の開催へとつながっていきます。

前回のSIAF2014は、来場者数目標が30万人に対し、実際は48万人が訪れ、59億円の経済効果があったと算出されています。来場者の半数が札幌市内からで、北海道外からの来場者は約4割でした。またチケットの販売数が4万枚とのことでしたので、無料イベントへの参加者が多いことが読み取れます。SIAF2017については、35万人の来場を目標とし、経済効果は43億円と見込んでいます。今回のチケットは期間中何度でも出入りできるパスポートシステムとなり、前売りでは7,000枚販売されていて、販売数としては前回と同程度が目標となっています。

街中を活用して展示などを行っている点が1つの特徴で、「金市舘ビル」、「北専プラザ佐野ビル」など街中にある商業ビルの空きフロアを会場にして展示が行なわれたり、商店街に生中継テレビをイメージしたインスタレーション作品が展示されたりと、モエレ沼公園や札幌芸術の森といったメイン会場内にとどまらない、街に広がる展開となっています。また、2014は周知が課題だったので、より認知度が高まるような取り組みを行っている点が、2017の特徴となっています。例えば、バーテンダー協会と協力したカクテルとのコラボや、札幌で売り出し中の「シメパフェ」とのコラボが行なわれています。「市電プロジェクト」では、子ども達と市電の車両のデザインを考え、できあがったデザインのラッピング車両が市内を走行しています。「大風呂敷プロジェクト」では、市民から集めた色とりどりの布を、子どもから高齢の方まで様々な人々が縫い、パッチワークで10㎡の大風呂敷を作り、広げ、盛り上げる企画。幅広い巻き込みを目指した取り組みが行なわれています。SIAF2014で行われた「フェスティバルFUKUSHIMA!北3条広場で盆踊り」は、大変好評だったため独立し、毎年「さっぽろ八月祭」として開催されています。今年の八月祭はSIAF2017開幕の前夜祭という位置づけの中開催され、市民を巻き込んだ動きが形になり、継続されている部分があります。

近年ビエンナーレ、トリエンナーレ、といった芸術祭が各地で行なわれているなかで、札幌市は後発にあたります。他都市の事例なども研究した上で札幌市としては、これまで現代アートに触れる機会が少なかった札幌市民に、身近にアートに触れてもらうために、前衛的な現代アートばかりではなく、有名人を起用したり、市民に語りかけられるような方を招いた取り組みを重視していて、大友氏もテレビやラジオなど各種メディアに積極的に出演し、SIAFのPRを行っているそうです。「国際」と銘打っている一方では、海外アーティストの参加は少ない状況ですが、海外アーティストを呼べば「国際」になるのではなく、「札幌ならでは」という芸術祭にすることが、ひいてはインターナショナルな芸術祭になる、という考えで企画が行なわれています。

まとめ

SIAFの取組みについてお話を伺うと、地域性や住民参加を強く意識されていると感じました。2017の作品・展示の中には、地元のディープで面白いお店を再現したものがあったり、大風呂敷のように参加型の企画があったり、街中の空き店舗を活用していたりと、「札幌らしさ」を大事にしていると感じました。全国的には都市型や里山型と大きく分類され、都市型に当たるSIAFにおいては都市におけるローカル性を打ち出すことで差別化が行なわれ、地域住民にとって「自分たちの芸術祭」になっていくように仕掛けられているのではないかと、感じました。

札幌国際芸術祭

札幌国際芸術祭
札幌大通地下ギャラリー500m美術館で説明を受ける様子

札幌国際芸術祭
狸小路商店街に設置された中継モニター

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