DMOによるマーケティング戦略と誘客。北海道観光推進機構視察。

2017-08-13 15:51:23 | カテゴリ:活動報告


北海道観光推進機構

8月9日、観光・創造都市・国際戦略特別委員会の視察で、北海道の「公益社団法人 北海道観光振興機構」を訪問し、特に日本版DMO形成促進事業についてお話を伺ってきました。

DMOとは、「Destination Management/Marketing organization」の頭文字をとったもので、観光地活性化のために多様な関係者が連携し、データに基づく目標設定(KPI)、評価サイクル(PDCA)の確立を行い、プロモーションなどを行っていく組織です。観光庁では日本版DMOを推進し、地域の多様な関係者を巻き込み、科学的なアプローチや民間ノウハウを活用して、観光による地域活性化を行おうとしています。2017年8月4日現在で、157の日本版DMO候補法人が登録されています。日本版DMOには役割や目的、ターゲットに合わせて、「広域連携DMO」と、「地域連携DMO」、「地域DMO」という3つの区分があり、北海道観光振興機構は「広域連携DMO」にあたります。

近年北海道の観光入込客数(実人数)は増加傾向にあり、2011年の東日本大震災で4,612万人に一旦落ち込んだものの、2015年には5,477万人と過去最高となり、そのうち外国人観光客が208万人と、順調に増加しています。総観光消費額は、1兆4,298億円と推計されていて、観光消費額単価は、道民が12,865円、来道者が73,132円、訪日外国人来道者が178,102円となっています。人数では外国人の比率は約3.7%である一方、消費額では約26%にも及ぶという状況にあります。北海道経済における観光産業の位置づけは最も高く、生産波及効果は2兆897億円、粗付加価値誘発額は1兆1,264億円、雇用誘発者数は19万人、税収効果は722億円となっていて、観光GDPは金融・保険業の5,883億円を超えて、第1位の6,320億円であり、リーディング産業となっています。(第6回北海道観光産業経済効果調査(2017.5)による)

北海道観光振興機構のDMOとしての基本コンセプトは、「世界が憧れる観光立国北海道」。基本戦略として、(1)機構運営の基盤整備、(2)観光人材の育成・確保とホスピタリティ向上、(3)観光インフラの整備、(4)観光商品の開発促進、(5)新たな北海道ブランドの構築、(6)個人旅行客への対応強化、(7)北海道新幹線や道内地方空港利用による誘客促進、(8)道北・道東ヘリアへの誘客促進、(9)欧米豪や西アジアに対する誘客促進、(10)地域のDMO形成・確立に向けた支援、が掲げられています。観光産業が北海道経済を引っ張っていることから、観光政策への予算は年々拡大してい、北海道の観光予算のうち、観光振興機構補助金・負担金は、平成29年度予算において約15億6,591万円で、平成26年予算の約5億1,700万円から3倍に増加しています。

北海道観光の課題の1つが、札幌や小樽がある道央に観光客が集中している状況から、道北や道東エリアに足を伸ばしてもらえるように誘導していくこと。基本戦略の1つともなっていて、広域周遊ルートの開発や、二次交通の実証実験などが行なわれています。DMOとしては、道内でDMOの形成が促進されるように、人材育成の取り組みを中心に、既存のDMO候補法人とこれからDMOを形成しようとしている団体とが情報交換などを行なう「地域DOM交流ネットワーク会議」の開催などが行なわれています。また、外国人観光客誘致のための取り組みが積極的に行なわれていて、今年度からはマーケティング強化事業として、HPのアクセス解析から市場動向を把握する取り組みや、OTA(Online Travel Agency:オンライン旅行代理店)サイトと連携した海外の市場動向把握、分析結果のセミナー開催などが行なわれています。外国人観光客については、現在の約200万人を、3年間で500万人に増加させようという目標をもっていて、単純に「北海道」としての売り込みではなく、例えば「白い雪」など、あるテーマの中で北海道の地域が、国内外の都市・地域と競争していくために、ブランディング戦略やマーケティングを行なっているといいます。成果への意識も高くもっていらっしゃるようで、従来はバラマキ型の誘致施策だったものを、これからはWebマーケティングやデータ分析を行いながら、ターゲットとなる顧客に確実にリーチできるような施策を展開したいと考えていらっしゃいました。そのために、OTAサイトとの連携があるわけです。

せとうちDMOもそうでしたが、DMOにとって財源をいかに確保するかが大きな課題です。せとうちDMOの場合は、観光推進機構に独自財源1億円と、「せとうち観光活性化ファンド」に98億円の資金がありました。北海道観光推進機構も、独自予算は1億円ほどで、304の正会員と、189の賛助会員からの会費収入となります。財源確保には手堅く会員拡大が1番と考えて、今年度から検討会を立ち上げて検討を進めているものの、なかなか悩ましい状態が続いているといいます。一方今年の2月には、北洋銀行、北海道銀行、日本政策投資銀行、北海道、北海道観光推進機構の5者で、協力連携協定が締結されています。5者がそれぞれのノウハウを持ち寄り、北海道観光の振興のために、稼ぐ力を引き出しながら、総合支援を行おうという協定です。7月には協定に基づく第1号融資が決まり、政策投資銀行と北海道銀行は函館のホテル新設に、また政策投資銀行と北洋銀行は洞爺湖のホテル改修事業に、シンジケートローンを組成し、協調融資を行なうことが発表されています。

まとめ

北海道と言えば、その名前だけでもブランド力が高そうなイメージを持っていましたが、更なる外国人観光客誘致のために、1歩進んだ施策の展開を進めていました。現在200万人を500万人という2.5倍に増やすのは並大抵なことではできないでしょうが、そのためにマーケティング戦略を駆使してターゲットにリーチし、かつデータを分析して、精度や効果をより高めていこうというやり方は、学ばなくてはならないと考えます。

北海道観光推進機構

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