子どもを真ん中においた地域づくり。滋賀県社協の取り組み。

2025-10-29 18:11:54 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2025年10月29日、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の視察で、滋賀県社会福祉協議会を訪問しました。県社協に設置されている「滋賀の縁創造実践センター」にて取り組まれている、「子どもを真ん中においた地域づくり〜子どもの笑顔はぐくみプロジェクト〜」についてお話を伺いました。子ども笑顔はぐくみプロジェクトは、「子どもを真ん中においた地域づくりをさらにすすめるための応援団をつくるプロジェクト」と位置づけられ、リーディング事業としての「淡海子ども食堂」、居場所づくりとしての「フリースペース」、要援護児童自立支援の「ハローわくわく仕事体験」という3つの事業を展開されています。

遊べる・学べる淡海子ども食堂

滋賀県内には254ヶ所の子ども食堂があります(2025年9月末時点)。プロジェクトにおいては、(1)子どもひとりひとりを大事にする場所、(2)子どもが遊びや学びを通して育まれる場所をめざす、(3)子どもを見守り育む地域の仲間づくり、(4)さみしさやしんどさを抱える子どもも来られるように、という理念のもと、家庭や学校環境がそれぞれ異なる子ども達が、好きな大人がいたり、食事が楽しみだったりと行きたいと思える、信頼できる場を作っていきたいと取り組まれています。

当初は県内6ヶ所の子ども食堂があったところに、すべての子どもが自分で歩いていける距離に設置しようと、すべての小学校区300校区に1か所ずつ子ども食堂をつくることが目標として掲げられました。実際は200校区程度ということであったものの、1年に30か所のペースで設置が増えているということでした。当時は6団体と少なかったため結束も強く、少数の頃からネットワーク構築が始まっていることが、県全体での連携がうまく進んでいる理由の1つではないかと感じました。まだ校区内に設置されていない地域もあるそうですが、市町と協力し、市町の社協が新たな担い手を育成したり、市町独自の助成金を設けたりしながら、設置、運用が展開されています。

県社協の子ども食堂支援としては、ネットワークと助成事業があります。「子ども食堂つながりネットワークSHIGA」では、「学びの場」として衛生面等の研修会を行ったり、「つながりあえる場」として交流会を行い、団体同士の日頃の悩みの共有などが行われ、「活動PRの場」として社協のHPで各子ども食堂の情報発信が行われるなど、県内の子ども食堂それぞれを支える役割を果たしています。助成事業としては、開設支援助成として開設当初に必要となる備品購入などのために10万円の助成が行われている他、ボランティア保険の費用負担、県の物価高騰対策補助で行われている「うれしいことプラス1助成」という年間12万円が上限の補助、運営者のスキルアップをサポートする助成が行われています。

生きづらさを抱える世帯の子どものための居場所「フリースペース」

「フリースペース」は、様々な事情によって学校に行きづらい、家の中で落ち着かないという思いをしている子ども達が、地域で暮らす信頼できる大人と、安心して過ごせる居場所として提供されています。特別養護老人ホームなどの社会福祉施設を中心に県内21ヶ所で実施されています。週1回の開催で、1ヶ所1世帯のみの受け入れが原則となっていて、食事や入浴などの生活支援を、マンツーマンの体制によって提供し、自宅と施設の間の送迎も行われています。施設内の地域交流スペースを使うなどして居場所が用意され、利用者さんが使うお風呂を子ども達も使うという形になっています。学習支援も行われるものの、学習支援だけが目的ではなく、学校が終わったあとの夜の時間に、子どものありのままを受け入れ、子どもの思いに寄り添い、子どもの変化を見逃さずに、安心できる場所であることが最優先というスタンスで子どもとの関わりが作られています。

支援対象となる子どもは施設数によるため、誰でもとはいきません。学校の教員やスクールソーシャルワーカー等の学校関係者や市町社協の担当らと対象世帯を選出し利用者決定を行っています。施設におけるサポートするスタッフは、(1)施設職員が業務内で回しているケースと、(2)龍谷大の学生と施設職員が行っているケース、(3)教員OBが関わっているケースがあるそうです。支援している世帯は例えば、ひとり親世帯で親が事情によって食事提供ができないケースや、子どもの多い世帯でヤングケアラーとなってい長子をケアしているケースなどがあるそうです。実施施設を増やせれば受け入れ人数を増やせるものの、介護施設の人材不足という課題がありなかなか増やせていないというのが課題でした。学生ボランティアについては、今後は他の大学の学生にも広げていきたいと考えていらっしゃいました。

児童養護施設で暮らす子どものための「ハローわくわく体験事業」

児童養護施設など社会的養護の環境下で暮らす子どもたちにおいては、親が働いている姿を見たり聞いたりする機会が少ないことで、職業観や就労観を身につける機会が少ないという課題が指摘されてきました。ハローわくわく体験は、こうした子ども達に就労体験の機会を提供することで職業観を育み、自立の土台づくりをしようという取り組みです。

児童養護施設や里親支援センター、ファミリーホーム、自立援助ホーム等の職員からなる「自立支援推進委員会」があり、養育者(施設職員、ファミリホーム、里親)が県社協のコーディネーターに体験の申込みを行い、コーディネーターが協力企業との調整を行い、就労体験の受け入れが行われるという仕組みになっています。2025年9月末時点で、193社の協力企業があるということですが、コーディネーターが新規開拓を行いながら協力企業を増やしています。193社の企業があっても、子ども達ひとりひとりの要望に答えられないケースもあるので、その都度関係する企業にコーディネーターが訪問し、依頼をしているそうです。この社協職員が開拓活動を行っているという点は、大きな特徴になっています。この職業体験は子ども達のためでありつつも同時に、地域社会に対して社会的養護の子ども達を取り巻く現状を知ってもらうという、啓発の意図も込められています。

まとめ

滋賀県社会福祉協議会の建物の入口には「ひたすらなるつながり」という言葉が掲げられています。そして「子どもの笑顔はぐくみプロジェクト」の説明資料においても「”無縁”から”ひたすらなるつながり”へ」という考えが示されています。ひたすらなるつながりという言葉は、1946年に設立された「近江学園」という知的障害児や孤児のための施設を創設した糸賀一雄氏の、「人間が本当に人間を理解していこうとするような“ひたすらなるつながり”の世界を実現していこう」という言葉からきているそうです。県社協では、「だれもが「おめでとう」と誕生を祝福され、「ありがとう」と看取られる人間的共感にねざした共生社会を実現する」ということを、ひたすらなるつながりと位置づけています。

プロジェクトにおいては3つの事業のほかに、地域企業等のスポンサーを募集し、人や物資、お金等の支援のネットワークを広げています。スポンサー第1号企業となったスーパーを経営する株式会社平和堂は、毎年800万円もの商品券を寄付し、子ども食堂の運営に生かされています。また平和堂に納入する企業と連携して、食品ロス問題に取り組みフードドライブの取り組みを行い、子ども食堂や生活困窮者世帯に食品の寄付が行われてもいます。社協職員のみなさんが熱心に活動されるとともに、支援者同士のつながりや、地域の人や企業のつながりを創出しながら、子どもを中心にし、子どものためにと他にはない仕組みを構築されていることは、横浜市としても学ぶことの多い取り組みだと考えます。

ひたすらなるつながり

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