2014年11月6日、横浜市会運営委員会の行政視察で、堺市議会を訪問しました。堺市議会では2013年4月1日より、堺市議会基本条例が施行されています。今回はこの議会基本条例による取組みについて、説明を受け、質疑を行ってきました。
堺市議会では2011年6月から、「議会力向上会議」が設置され、座長1人、副座長1人含む合計13名の議員によって、地方分権化時代に適応した議会のあり方についての協議が行われ、議会機能の強化に取り組まれてきました。議会力向上会議はあくまでも協議を行う場で、採決は行わない場として設定されています。この会議の場で、議会基本条例の制定や、委員間討議制度の導入、請願・陳情者の意見陳述、議会報告会の開催、本会議での一問一答方式の導入などの議論が行われて来ています。条例の制定に関しては、「議会基本条例策定のための作業部会」が設けられ、2013年4月の施行に向けて11回の部会が開催されました。
議決事件の拡大
堺市議会での議会改革が進んだ背景には、市長が変わったことが影響したといいます。それまでの与野党相乗り市長から、無所属で、当時の大阪府知事から支援を受けた市長に変わったことで、市長と議会との関係に緊張感が生まれます。議会からすれば市長を牽制していくためにも、議会の力を向上させる必要性に迫られたと言います。その結果の一つが、議決事件の拡大です。
議会基本条例第6条では議決事件や報告事項は別に条例で定めるとされていますが、「堺市議会の議決すべき事件等に関する条例」でその内容が示されています。この議決事件等に関する条例では、基本構想や基本計画の制定、改廃から、姉妹都市友好都市や、市民憲章、民間企業との提携などについても、議決案件とされ、実施計画やパブリックコメントを行った事業の議会への報告が定められています。また、基本計画に関しては毎年進捗状況を議会に報告しなければならず、議会側のチェック機能を強める内容となっています。
委員間討議の実施
議会基本条例第13条では、委員間討議の実施が規定されています。議会での審査において従来は、(1)委員会の開催による質疑、(2)討論、(3)採決という流れになっていますが、委員会開催後の討論は、形式的なものに過ぎない状態になっていたため、事前の申し出があった場合、討論の前に委員間討議を行うという制度に変えています。委員間討議の対象は、市長提出案件、議員提出議案、請願、所管事務となっていて、委員会当日の当局側との質疑終了後に、1議題について30分以内で行われることになっています。これは議案について採決の前に、議員同士での互いの認識や考え方についての理解を促進しようとするものです。2013年5月から施行実施中です。
議員研修
条例第18条では、議員研修が規定されています。議員の政策形成や立案能力を向上させるために、研修が行われることとなっています。これまでは、議会審議のあるべき姿や、駅前の再開発、道州制についてなどの研修が行われてきています。テーマは市民全体に関わるような大きな争点になっているものが多く、講師も中立的立場の方が選ばれるケースが多いようです。
議会報告会の開催
条例第22条では、議会報告会の開催が規定されています。これまで3回開催され、11月24日に第4回目が予定されています。定員132名に対して、1回目67人、2回目65人、3回目29人の参加となっていて、市民の関心向上、参加を促すことに苦心されていました。議員が集客を行えば、後援会の集まりになってしまうこともあり、それが本来の趣旨なのかという疑問もあり、いかに多くの市民に関心をもってもらうかが大変ということでした。また、これまではテーマを設けずに開始してきたものの、議員からの報告も、参加した市民からの質問や意見も、まとまりがなくなってしまうこともあったようで、11月24日に開催される予定の第4回目では、「健康福祉にかかる本市の施策事業について」というテーマ設定が行われています。より具体的なテーマを設定することで、議論を活性化したいという意図です。
本会議における一問一答制の導入
条例第26条では、本会議における一問一答制の導入が規定されています。一括質疑方式と比べ、より細かく質疑ができ、議員側も丁寧な準備が必要になり、行政側にも緊張感が生まれたといいます。一方では、質問内容が細かくなりすぎて、「本当に本会議で行うべき質問なのか」という内容の質問があったり、行政側も事前に答弁を完成させられないために、答弁が十分に詰められないなど、課題もあるようです。
堺市議会の改革は現在でも進行中ですが、どういった制度を導入するかと同時に、その制度の趣旨にそった活用ができるかどうかが、そして議会と行政の関係の中で、本来の目的に沿って議論ができるかどうかが、重要だと考えます。制度を自分のために使ったり、十分に理解せずに持て余すのではなく、市民にとって何が重要なのかを、常に意識した議員活動があってこそ、議会改革が活きるのだろうと思います。
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