要約
アムステルダム市における、サーキュラーエコノミーに関する建築や都市開発について現地を訪問しました。水上住宅スホーンシップでは、ソーラーパネルとバッテリーの設置によるマイクログリッドの取り組みがあり環境政策との密接な関係性を見て取れます。社会的な背景としては、リーマン・ショック期に住宅開発が停滞する中で住民に任せた宅地開発が行われたということと、景気が回復した近年は毎年2万人の人口増加に伴う住宅不足への迅速な対応が迫られ、新たな住宅地開発が活発に行われているという2つの異なる時期があり、サーキュラーエコノミーの視点も入りながら特徴的な取り組みが行われています。
見出し
導入
水上住宅「Schoonschip」プロジェクト
De Ceuvel
市民による区画開発:フェーズ1地域
市民による区画開発:フェーズ3地域
クライメイトニュートラルな住宅開発
住宅地の駐車場の集約と転用
所感
導入
アムステルダム市での視察2日目、4月6日の朝、私たちは宿泊先ホテルでシェアサイクルをレンタルしました。アムステルダム市内のサーキュラーエコノミーの取り組みについて、現地を巡りながら説明を受けることが2日目午前中の目的です。アムステルダム市も自転車推進政策が進んでいて、自転車専用道がしっかりと整備されています。せっかくですので、アムステルダムの自転車道を体験しながら、環境負荷の低い移動をするために、自転車での移動を行うことにしました。
現地を案内してくださったのは、カーネリア・ディンカさん。「Sustainable Amsterdam」の創業メンバーであり、都市計画の専門家です。13年間にわたって持続可能な都市開発に関する現場プログラムや能力開発プログラムに携わってきた方です。自転車ツアーの開始にあたって、まずは自転車のルール、特に「シャークティース」(shark teeth)という、路面に三角のギザギザが書かれている場所についての優先順位について説明を受けました。
水上住宅「Schoonschip」プロジェクト
最初に訪れた視察先は、アムステルダム北部の運河に整備された、川の上に浮かんだ47軒の住宅「Schoonschip」(スホーンシップ)プロジェクトです。過去には大きな貨物船が通り抜けられるようにする計画のあった運河でしたが、予算不足でその計画が頓挫しています(1900年頃)。そのため、水上住宅を整備しても邪魔になることのない運河となっています。
スホーンシップの特徴の1つは、建材に木材が利用されている点です。オランダの建築業界はCO2排出において、一番排出量の多い産業となっています。従来は鉄鋼やコンクリートが主たる建材として利用されていましたが、近年はバイオベース、特に木材を使った建築への移行が進められています。スホーンシップは基礎はコンクリートですが、外壁には木材が活用されています。
2つ目の特徴は電力供給にあります。47軒全ての住宅にソーラーパネルが設置されていて、それぞれの住宅には蓄電池(バッテリー)が設置されています。それぞれのバッテリーはつながっていて、マイクログリッドになっています。そのため、住宅毎に電力消費の余剰や不足が出る場合にエネルギーを共有し、融通しあえるようになっています。オランダは法的に、住宅は電力会社の送電網につながっていなくてはいけないことになっていますが、スホーンシップでは例外的に免除されています。
藤崎:仮に47軒のマイクログリッドでの電力供給が不足する場合はどうするのでしょうか。
回答:電力会社の送電網にも接続されているため、そこから供給が可能です。各住宅にヒートポンプも備わっているため、太陽光、バッテリー、ヒートポンプを組み合わせたシステムになっています。夏はマイクログリッドで十分発電できますが、冬は送電網からの供給によって賄っています。
現在オランダでは、オール電化政策が推進されていて、新たな住宅ではガスが供給されなくなっています。新しい建築物の場合は、ガス供給のない建築は比較的容易ではありますが、アムステルダムは古い都市であり、古い建築物も多いため、そうした古い建物をガスなしにするのは市の課題です。
藤崎:スホーンシップでの成果を、別の場所に展開し、実証実験を行ったりしているのでしょうか。
回答:アムステルダムの東の地域において、スホーンシップの47世帯より大きい、100世帯からなる水上住宅地が整備されています。市としてはこれを500軒にスケールアップした際どうなるのか、検討しているところです。その理由は、これまでの40〜50年間は、埋め立てによって陸地を増やす考えが多かったのですが、いま私たちはこの考え方を変え始めているからです。新たに土地を作り続けることはできないと考えていて、場合によっては土地の一部を水に戻さなければならないこともあります。陸地を増やし続けるか、水上住宅を増やすべきかについては、まだ国内で議論されている最中です。新たな土地を作ることはとても高コストである一方で、水上住宅の規模を拡大することもまだできません。47軒では本当のコミュニティとも言えません。
藤崎:現在100軒での実験も行われ、今後スケールアップする検討がなされているという話でした。埋め立てではなく、水上住宅を増やすということになった場合、河川の面積に対しての水上住宅の建設可能見込み数がある程度計算できるのではないでしょうか。埋め立てた場合の住宅供給可能数、水上住宅での可能数の比較検討のような議論はあるのでしょうか。
回答: もちろん計算できますし、それが議論の焦点で、求められています。例えば、フレヴォラント州は州全体が、北部の水路を閉鎖して作られた干拓地です。そのうちのアルメレは、住宅地不足解消のために干拓、造成がされてできた地域です。しかし資金が不足して、より多くの土地をつくる計画は一時中断されました。その後新たな土地造成方法であるパンケーキ工法が登場していますが、一方で埋め立てた土地がますます脆弱になっているとも言われています。不確実性も高く、多くのモデルがあるもののモデルは気候変動にうまく対応できていないため、まだまだ課題です。
住宅そのものは浮いていますが、杭があり、土台が杭に繋がっていて、浮いたり沈んだりできるようになっています。万が一堤防が決壊するなどの理由で一気に水が流れ込んできた場合、都市の3分の1が浸水すると言われていますが、水上住宅は水位の上昇に合わせて上下できます。
3つ目の特徴で、スホーンシップを特別にしている特徴は、コミュニティ主導で実施されたプロジェクトであるという点です。市民グループが計画を立て、アムステルダム市に提案したものの、当初アムステルダム市はこの提案に乗り気ではなかったそうです。市はこの地域のマスタープランを策定していて、マスタープランのゾーニングには水上住宅が設けられていなかったためです。マスタープランは2011年頃に策定されていて、市民が提案した時期は市がこの計画通り開発を進めようとしていた時期であり、さらにリーマン・ショックの影響から開発事業者の建設意欲もあまりない時期でした。市は最終的に当初のマスタープランのゾーニングを変更して、コミュニティ主導のプロジェクト、より具体的には「共同委託」(collective commissioning)と呼ばれるプロジェクトのためのスペースを確保することになりました。スホーンシップで一番難しかったのは、銀行からの融資でした。実験的なプロジェクトであり、融資してくれる銀行がなかなか見つかりませんでした。銀行は従来、デベロッパー等不動産関係への融資実績はあるものの、市民グループに寄る「共同委託」手法への融資経験がなかったためです。
かざま:水上住宅を増やす、もしくは埋立地を増やすという議論は、何の課題を解決するためでしょうか。
回答:アムステルダム市は住宅危機にあり、3週間前の選挙でも住居問題の解決がテーマでした。もっと土地が必要なんです。埋め立てをするのか、今ある土地で十分なのか、それともこれまで建築が許可されて来なかった自然が保護されている緑地にも建設が必要なのか、という議論があります。選挙前の目標値としては、毎年7,500軒の住戸を建設するという数値がありました。この目標は達成できておらず、5,000〜6,000軒程度の実績となっています。そのため住宅が不足し、住宅価格は急激に上昇し、これを下げるには年間9,000から10,000戸の住宅整備が必要と考えられています。選挙後の新しいアムステルダム市議会では、年間9,000戸の整備を目標にしているようです。
藤崎:急激な住宅不足は、移民等で人口が外から流入していることが原因ではないのでしょうか。住宅不足や価格高騰という住宅問題は、出生数にマイナスの影響があるとも言われているなかで、アムステルダム市の状況はどうなっているのでしょうか。
回答:人口の社会増は、住宅不足の原因の1つです。アムステルダムには、大学進学のために若者が多く集まる都市です。しかし、結婚し、子どもをもつとなると、大抵の場合はアムステルダムに住み続けることが難しくなります。選挙の時などに議論になります。統計ではアムステルダム市民の60〜70%が単身世帯となっています。住宅価格は1㎡あたり9,000〜10,000ユーロと高額であるためです。私たちは日本の事例を参考にして、1世帯30㎡という小さなアパートを建設することにしました。これには反論があり、狭いアパートばかりになると、家族が住めるスペースがなくなってしまうという意見です。
De Ceuvel
2番目の訪問先は「De Ceuvel」(クイベル)です。もともと造船所だったエリアです。アムステルダムは以前、造船業の拠点でしたがその後衰退してきた歴史を持ちます。そのため、初日に視察先であった旧NDSM造船所をアートスペースに転換したように、跡地の活用が行われています。その1つが、De Ceuvelです。10年間という期間限定で、何かコミュニティのための面白いプロジェクトを実施しないかと公募した場所です。クリエイティブな人が集まる場所というのが条件の1つとされました。アムステルダム市がよく使う手法の1つで、クリエイティブな人たちにプロジェクトを実施してもらうことで、建物による開発を行う前にエリアの価値を高めてもらい、クリエイティブをつかったジェントリフィケーションと呼ばれているそうです。NDSMがアーティストのアトリエになったことをモデルにして、行政としては様々なエリアで展開したいと考えて取り組んでいます。
行政はクイベルの再開発に取り組みたいと考えていて、自転車用の橋をつくり、大きな住宅ビルを建てる計画をデベロッパーはもっているものの、クイベルは既に12年目を迎えています。クイベルではDIYで様々なものが作られていて、行政だけでなく企業等の関係者に対しても、サーキュラーな手法で運営することをこの場所で見本として示している、とてもいい場所になっています。
運河でボートハウスとして使われていた家をクレーンで持ち込んで、オフィスとして使われています。古いボートハウスはセカンドマーケットがないため廃棄に費用が生じているが、1ユーロ程度で買い取って利用されています。そして、各ボートハウスが電力と廃棄物処理を自給自足できるようにする実験を試みています。予算がほとんどなく、一見ピッピーの村のように見えてしまうかもしれない場所のようですが、このプロジェクトの凄いところは、行政、水道局を刺激し、サーキュラーなプロジェクトとしてより大きなスケールでこの地域全体で取り組むことについて、 文書にサインをしたことにあります。
大岩:リビングラボとは違うのですか?
回答:リビングラボとも言われているが、アーティストのためのインキュベーション施設でもある。
市民による区画開発:フェーズ1地域
3か所目には、行政の作ったマスタープラン通りに開発されなかったストリートを案内していただきました。現地から見ると、一つ隣の街区はマスタープラン通りに開発された建物が並んでいて、ひと目見て全く違う雰囲気があります。この区画開発もリーマン・ショックの影響で、当時開発に乗り出せるデベロッパーがいなかったことに起因し、市は区画を小さく分割したうえで、市民の中で住宅を開発したい人に提供し、市民による開発が行われました。高さや幅などは、アムステルダムの旧市街にあるカナルハウスのガイドラインを参照しつつ、外観は現代風にアレンジされています。
主導した市民の中には建築家が複数人関わっていました。金融危機によって仕事が失われていたものの蓄えはあり、今までと異なる方法で「こんな建物も作れます」ということを示し、名刺代わりに使いたいと考えていました。またエネルギーシステムも注目のポイントで、太陽熱温水器が上の方に設置されています。太陽熱温水器は中東でよく使われていますが、オランダではあまり見ません。
庭の配置にも特徴があります。大抵カナルハウスは、通りに面する裏側にプライベートの庭が設置されていますが、この区画についてはコミュニティビルディングの概念によって表側に区画の住民同士で共有する庭を設け、一緒に庭づくりをする設計になっています。子どもたちが路上で遊んだり、近所の人たちが一緒に夕食をとる様子を目にすることが出来る場所になっています。住宅の並ぶストリートの向かい側には、全く別のプロジェクトが展開されてホテルになっています。ホテルが後に建築されていて、魅力ある住宅地が形成されたことで地域の価値が向上したことで、デベロッパーが開発を行ったといいうことでした。
藤崎:ストリートの住宅から見た向かい側にも緑地が設置されていて、両側に緑がある一体感のある風景になっている。一見住民に管理されているように見えるが、土地や管理はどうなっているのでしょうか。
回答:住宅側はプライベートであるが、反対側はパブリックスペースであり本来は行政が管理する用地。しかし、住民との約束によって行政用地も住民が管理しなければなりません。
市民による区画開発:フェーズ3地域
4か所目は、住民による区画開発の「フェーズ3」にあたる場所です。3か所目はフェーズ1のエリアでした。フェーズ1の開発がされている頃、この場所は全く魅力のない場所だったそうです。フェーズ2、フェーズ3という2つの区画は魅力がなく、デベロッパーも躊躇する誰も欲しがらない土地でしたが、フェーズ1から3年経過し、行政が2と3の区画を提供するとなったときには、自分が開発したいという人の行列ができるようになり、上記のホテルのように、フェーズ1の成功が周辺地域の価値向上に繋がっている事例です。
資材の活用やエネルギー利用についても面白い実験的プロジェクトがここでも実施されています。カーネリアさんが特に説明したいと示した住宅は、「外観は一番美しい家ではないかもしれないけれど」と説明されつつも、廃棄物を使って建てられたサーキュラーな住宅です。建築にあたって難しかったことは、集めた廃棄物を保管しておく倉庫が必要だった点でした。建築家を雇い、「この廃棄物で家を建ててください」と依頼されました。
藤崎:どこからどこまでが廃材ですか?
回答:全部です。廃材だけでなく、寸法が間違っていて売れなかった70%引きの資材なども含まれています。そのため、窓の高さも違っていたりします。
全ての建材には物語があり、門はオランダ北部の墓地からやってきました。すごく素敵なキャビネットを入手したので、そのキャビネットに合わせた部屋の高さに設計されたりしています。廃材でこんなことができるんだと、他の人達にインスピレーションを与える住宅になっているそうです。
フェーズ3区画の開発にあたっては、市の水道や下水システムに接続するかどうかといった議論があり、接続せずに自分たち独自のエネルギーや上下水道システムをつくりたいという人もいました。最終的に市は、上下水道への接続を強制しています。最終的には住民の実験は失敗したため、住民も接続していてよかったと考えています。行政としてもどこまで自由を認めるのか、完全にオフグリットを認めるのかは議論のあるところでした。
ごみ焼却場で出た熱を使った、地域熱供給システムがある。全ての住宅で使用することを念頭に計画・設計されていたのですが、この区画で住宅では、行政が提供するシステムよりも、自宅でもっと効果的でサステナブルな方法でエネルギー供給が可能であることを照明できた場合は、そのグリッドに接続しなくても良いという判断がなされています。
藤崎:フェーズ1の区画と比べて、住宅の高さなどデザインがバラバラな理由はなんですか。
回答:フェーズ1は高さなど統一されていました。60年代、70年代の建物は同じ様式で建てられていましたが、現代のオランダの人たちはそれを好ましくないと思っていて、デザインに多様性を求めています。
クライメイトニュートラルな住宅開発
5か所目に予定していたハウトハーヴェンス地区には、自転車も乗れるフェリーで移動する予定でしたが、ここまでの質疑等も長くなり時間が足りなくなり、フェリー乗り場近くの対岸から話を伺うことになりました。
自転車で通り過ぎてきた場所には、たくさんの建築資材を保管する市の倉庫がありました。バイクスローテルハムでは公共空間で使用される資材について、80%を再利用することを目標としていて、道路整備等で使用されてきた資材が保管されています。新しい資材をできるだけ使わずに、街の他の場所で使われていたものを倉庫に持ち込んでいます。そして全ての工事現場には、マテリアルハブという倉庫が設置されています。
ハウトハーヴェンス地区は発酵させた大豆の、輸送のハブ港となっていて、西側20km先は北海に繋がっている場所です。アムステルダム港は今後50年かけて縮小していく計画になっていて、港を縮小させた場所を「Haven-Stad」という都市拡張地区に転換し住居を建て、50年〜60年後には10万人〜20万人が居住できる地区にしようと計画されています。その一歩目となるのがハウトハーヴェンス地区の居住エリアです。
藤崎:アムステルダム市の将来人口の予測は何人ですか。
回答:近年毎年2万人増加しています。1960年代にはアムステルダム市は100万人の大都市になると予想もされたが、前後の人口流出によって現実にはそうはならなかった。
藤崎:20万人分の住宅供給はリスクが高いのではないでしょうか。
回答:過去には予測が外れたこともあるが、現状では人口減少は想定できず、増加が続くと予測されているため、今後も継続的に住宅供給を進める方針です。オランダにおいては、堤防を作って国土を守っていて、今後の海面上昇に合わせて堤防を高くする必要もあり、そのための費用と国の運営の予算については議論されているポイントとなっています。
ハウトハーヴェンス地区は元々木材の倉庫が並ぶエリアでした。この地区の開発は初期段階で難航したそうですが、その理由は大豆の臭いと港からの騒音だったそうです。この対策として「ブロック0」と呼ばれる集合住宅が建築され壁となり、臭いと騒音から住民を守るという設計になっています。地区内には住宅だけでなく、オフィスビルも建てられています。
ハウトハーヴェンス地区は市内で初めて「サーキュラーディストリクト」として開発が進められていて、「クライメイトニュートラル」な住宅地区として開発が行われました。クライメイトニュートラルとは具体的には、屋根に大規模なソーラーパネルが設置されている集合住宅地であること、産業排熱を利用した温水供給が実施されていること、市内最初にガスを使わない住宅地の整備となったことです。サーキュラーなエリア開発、クライメイトニュートラルを掲げている目的はマーケティング戦略であり、EUからの助成金を目的としてるという側面もあります。ビルにはエアコンを入れず、冷水を使った冷房システムを導入していて、EUの助成金で賄われています。
藤崎:更地から開発を行ったから、クライメイトニュートラルな開発ができたのでしょうか。これから実施地域でも同様に取り組むのでしょうか。
回答:そうです。最初からできるので、新しいテクノロジーを導入しやすいです。古い、既存の建物をサーキュラーにするのが難しい課題です。
住宅地の駐車場の集約と転用
自転車での現地移動の最後の視察ポイントとなった6か所目は、中庭のある住宅地でした。外観からは中庭があることは気づきづらい構造になっています。
この地区の開発では駐車場の台数や設置方法が議論となりました。数年前に地下鉄ができて中心地と結ばれたものの、旧市街と比較してトラムやバスの便が悪い地域で、住民はそれぞれの世帯で自動車を保有することが一般的となっているため、駐車場のあり方が議論になる場所です。アムステルダム中央駅付近は車が不要な地域であるため、一世帯0.2台程度と駐車場が非常に少なくて済みます。ここの地域では0.6〜0.7台となっています。
説明を受けるまで気づかなかったのですが、私たちが案内をされている眼の前にあるビルが、大規模駐車場となっていました。一般的な住宅の場合は、駐車場は各住戸の前に駐車場がありますが、ここでは1つのビルに集約をしています。特徴としては、駐車場のフロアの天井を高く整備し、将来駐車場が必要なくなったときには住居に転用できる設計となっています。
(住居に転用可能な駐車場)
中庭は共有スペースであるだけでなく、ゲリラ豪雨があった際に水を溜められる構造になっています。水が溜まるほどの豪雨は年に2〜3回しかないため、それ以外のときには緑地として利用されています。
藤崎:溜まるというのは、溜めるのか、下に抜けていくのか、どちらですか。
回答:貯水槽のような構造が地下に埋められていて、貯めた水は徐々に地面に浸水する仕組みです。
藤崎:この住宅地区は民間デベロッパーの開発ですか?
回答:公団の部分と、民間デベロッパー部分と、個人による建築が混在しています。金融危機以前の初期にはパイオニアとなる住民がサーキュラーな開発をしようと実験的な試みを行い、行政ともその方向性で約束をしたと思っていたものの、危機が落ち着いた後には行政はデベロッパーとサステナビリティを無視した建設を進めたため、市民と行政・デベロッパー間での対立が生じています。
藤崎:中庭の緑地・貯水システムは民間が義務として設置したのでしょうか。
回答:緑地部分は行政が整備しています。
所感
二酸化炭素排出量を削減するという目的において、建築業における取り組みが重要であることは、事前の講義においてヤニーナさんから示されてきました。アムステルダム市の現地視察ツアーにおいては、住宅開発と宅地開発という建築に関する取り組みを学びました。水上住宅スホーンシップは頻繁に取り上げられる事例ですが、エネルギーの観点だけでなく、住宅供給政策そのものとも密接に関わっていて、埋め立てて土地を作るのか、それとも河川を活用するのかなど、一つの住宅のあり方にとどまらない論点に向き合われていました。
住民によってサーキュラーな住宅開発を行えたのは、金融危機によるデベロッパーの開発意欲の低下を背景にしていたことや、現在は住民とデベロッパー・行政との軋轢が生じるじれいがあることも新たな知見でした。一方では駐車場と住宅のあり方という、生活や交通、人口動態への対応を見直して、サーキュラーエコノミーな視点で大胆な取り組みも行われていました。人口が増えれば建築や生産をはじめエネルギーを始め様々な消費、排出が増えるわけですから、急増する人口に対してサーキュラーエコノミーを推進するのは簡単ではないですし、徹底して実行しようとする市、そして共に取り組む民間、住民とが、ともに影響しあい、協力しあいながら推進されていました。いかに共に意識を高め、共通の目的とそれに向けたプロセスや成果を作れるかが重要だと考えます。
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