リーダシップと行政。市長による議会改革。

2011-11-08 07:13:32 | カテゴリ:活動報告


人口約5万人ながら、改革派市長として何度も全国ニュースで取り上げられてきた、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長に、これまでの改革や考え方をヒアリングしてきました。まずお会いして感じたのが、何より個性が強い。もちろん良い意味で。発言が明快で、ユーモアもある。まさにリーダーシップを体現しているような方でした。

武雄市が話題になったのは、2008年に行われた市民病院の民営化の際でした。議会からリコールされそうになるや否や、自ら辞職。市民に民営化の賛否を問う形で市長選挙を戦い、見事再選し注目を集めました。最近では市役所のホームページを全てFacebook化したことでも、話題になりました。今回印象的だったのが、市民のために、如何に行政の効率を高めるかを考え抜いていらっしゃることです。

たとえば、人件費。どうしても、職員の数と給料を減らせ、という議論に陥りがちですが、武雄市では数を減らしても給料は減らさないことにしています(人事院勧告除く)。給料を下げれば、必ずモチベーションが下がると考え、「総人件費」の削減を目標に改革を進めています。また、職員の採用も工夫を行っていました。ある職員は、元県庁職員であり、町長選に落選し、衆議院議員秘書を行っていた方でした。その職員の方は、県庁時代に大学の付属中高を誘致した実績のある、やり手の職員。経歴だけをみると、なかなか市職員として採用しずらく、現に採用には反対もあったそうですが、その能力を見込んで武雄市の職員として採用したと言います。武雄市ではこうした外部からの採用された職員と、生え抜きの職員が切磋琢磨しあっているということでした。

またたとえば、民営化。行政が経営を行えば、公務員には経営改善のインセンティブもなく、競争もなく、無駄が目立つ。民間ができることは、とにかく民間で行う。その一環に市民病院の民営化があり、保育園の民営化があり、給食の民間委託も行われました。民営化の結果、市民病院はすぐ黒字化。経営も順調で、ある看護師さんは28歳で年収1,000万円を超えるといいます。また、市民病院の来院者が増加することにより、市民行院を拠点として産業が集積しつつあるということでした。現に、人口流出が止まり、高齢者率も低下してきているそうです。また、民営化により、市長就任当時500約億円あった債務が、現在は300億円にまで減ったそうです。債務を減らすことに寄与したことに、上記の職員数の削減があります。2005年の市町村合併直後500名いた職員が、現在は390人まで減り、その結果33億円の人件費削減につながったそうです。

また行革一辺倒にならないようにも気をつけながら行政運営を行い、水道料金を2割削減したり、固定資産税を減税したりもしてきたそうです。一方では無駄を排し、そこから出てきた「財源」を市民に還元する。当たり前でありながら、他の首長にはなかなかできないことを行ってきていることが、なにより市民のために行政運営を行っている証しだと思います。

そして、なにより驚いたのが議会改革。

武雄市の議会傍聴には、なんと200名以上!の市民が集まるそうです。また、市内ではケーブルテレビの普及率が90%を超えています。議会の様子はこのケーブルテレビで放映され、19時からは再放送も行われています。そしてこの再放送の視聴率が、50%を超えるそうです。本当に驚きました。

なぜこんなにも多くの市民の方が議会に足を運び、テレビを見るのか。その秘密は、議論が活発に行われていることにありました。

武雄市議会で最も見られるのが、一般質問です。この一般質問、横浜市では1日で終了し、会派ごとに持ち時間が決まっていて(みんなの党は31分程度)、議員が全ての質問を行った後に、市長が順を追ってその質問に回答するという形式です。市長は必ず台本を用意されています。一方武雄市の一般質問は、1人あたり90分の持ち時間で、1問1答形式。4日間程度開催され、期間中に10数名が質問を行うそうです。また市長は一切原稿を用意せず、その場その場で回答を行い、議論を行う。

この方法により、一般質問に緊張が生まれます。議員も変な質問をすれば市長にやり返されますし、市長も同じように議員にやられる。そしてその様子が、中継され、夕食時に再放送まで行われ、完全に公開されている。もともと注目されてきた市長でもありますが、時に失言をし議場で謝罪・撤回などが日常的に行われていて、その「アミューズメント性(語弊があるかもしれませんが)」が市民の関心を高めることに影響があったそうです。市長が議会運営や広報のあり方を変えることで、そこにいる議員が同じメンバーでも、議会に関わる姿勢が変わり、議論が変わり、市政が変わっていく。市長も議会を非常に重視していて、二元代表制下の首長の強大な権力を抑制するのが議会であり、そのため政策の質を高めるのが議会の機能であり、また目に見える場所で議論を行う、市民に向けたアリーナでもあると考えていました。

現状の横浜市の議会運営は、武雄市には程遠い。本会議における一般質問は、上記の通り非常に短い時間で終わってしまいます。一問一答でもなければ、テレビ放送もない。質問も、答弁も事前に調整されますから、緊張感がない。私たちも、議会改革を訴えてきましたが、まだまだ武雄市には程遠いのが現状です。市民に伝わる、中身のある議会に変えていきたいです。

今回、市長の忙しいスケジュールの中2時間も、直接市長が講演、質疑応答を行ってくださいました。一地方議員の視察に、ここまで時間を割いてくださることに敬服しました。武雄市では最近「F&B良品」という通販サイトがスタートしています。目標は年間10億円の売り上げ。現在レモングラスが月に10万円、年で120万円売れていて、1,000品目揃えられれば、10億円実現できる、というしっかりとした目標設定。市長のマーケティングセンス、営業力にも見習いたい点が、多々ありました。

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