温暖化対策・環境創造・資源循環委員会、視察報告。

2014-08-03 15:52:47 | カテゴリ:活動報告


7月28日〜30日まで、横浜市会で所属する常任委員会「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察を行いました。

7月28日(月)には横浜市を出発し、北海道議会を訪れました。道が取組んでいる「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」と、「再生可能エネルギー等導入推進事業」について、ヒアリングを行いました。

北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区(以下フード特区)では、農水産物の生産体制を強化し、研究開発・製品化支援機能を集積・拡充、これらを活用して、北海道の豊富な脳水産資源や加工品の安全性、付加価値の向上、そして市場ニーズに対応した商品開発や、販路拡大を目指しています。特にターゲットとしては、東アジアを見据えていて、食産業の研究開発・輸出拠点化を目指しています。

フード特区の1つの目玉が、食品機能性表示制度の見直しです。「特定保健用食品」(トクホ)という消費者庁が許可を出す機能性食品が昨今市場でも数多く流通しています。こうした食品は、「体脂肪を減らす」など効能を明示できますが、一方では研究開発に係る費用が高く、許可までの時間もかかる事から、中小企業ではなかなか取組む事ができません。そこでフード特区では、「北海道食品機能性表示制度」(愛称:ヘルシーDo)を設けています。この制度では、トクホほど機能は明示できないものの、「北海道認定」のマークが商品に付けられ、「「健康でいられる体づくりに関する科学的な研究」が行われたことを北海道が認定したものです」と表示できるようになります。根拠としては、加工食品に含まれる成分に関して、これまでの研究論文等でその効果が示されている上で、申請されたものを更に学識経験者等の審査により認定されることになります。現時点で18品目が認定され、一般食品型で前年度比9.7%の売上増、サプリメント型で同19.1%増という実績が出ています。今後は、タイとシンガポールに販路を拡大するために、現地在住の人材を確保し、輸出拡大に繋がる取組みを実施する予定ということでした。地方自治体がそれぞれの状況に合わせて、海外に市場を求める時代。今後の取組みに期待したいですね。

次に、再生可能エネルギー等導入推進事業について伺いました。東日本大震災以降のエネルギー需要の逼迫を背景に、自立・分散型エネルギーシステムの導入が課題となっていますが、北海道では平成24年度、25年度に環境省から交付を受けた補助金を、「北海道グリーンニューディール基金」として積み立て、地域特性に合わせた再生可能エネルギーによる防災拠点等への自立・分散型エネルギーシステムの導入に取組んでいます。平成26年3月には、「新エネルギー導入拡大に向けた基本方向」が策定され、取組みが行われています。

北海道はその広大な土地と、多様な自然を背景に、風力発電全国1位、地熱発電全国1位、中小水力発電全国1位、太陽光発電(非住宅)全国2位、と高いポテンシャルを誇ります。とは言え、新エネルギーは稼働率が低く、出力が不安定であったり、道の電力系統規模が小さく、出力に対する調整能力や送変電設備の容量が不足しているなど、インフラ面での課題も抱えています。そういった課題を乗り越えるために、エネルギーの地産地消に取組み、実証・開発プロジェクトと生産開発拠点の集積を行い、基盤整備を行う等、方向性が定められています。導入拡大に向けては道内の地域特性を活かしながら、風力発電に力を入れるエリア、地熱発電に力を入れるエリア等が示され、導入が進められています。

翌29日(火)には、札幌市議会を訪問し、「さっぽろ学校給食フードリサイクル」についてヒアリングを行いました。

札幌市ではゴミの分別、資源化促進の一環で、学校給食を作る過程で発生する調理くずや、食べ残しなどの生ゴミを堆肥化し、その堆肥を利用して作物を栽培し、その作物を学校給食食材として子ども達が食べるという、食物の循環としてフードリサイクルが、平成18年度から取組まれています。現在小学校、中学校、特別支援学校が合計302校あるという中で、298校から2,290トンの回収が行われ、152校で堆肥活用が行われています。また、リサイクル堆肥を使用した作物は平成25年度実績で、レタスが277校に1〜2回、4.2トン、玉ねぎが全学校に4週間、66.9トン、とうもろこしが201校(子学校含む)、25,362本、かぼちゃが10校(子学校含む)、161キロ、提供されています。フードリサイクルの取組みについては連絡会議が設置され、教育委員会、環境局、経済局が関わっていますが、庶務は教育委員会が担当しています。これは「子ども達の教育のため」に取組むことから、環境局ではなく、教育委員会にとなったと言います。この取組みを通じて子ども達は、感謝して食べるという意識を持ったり、食べ残しが減ったり、ゴミの分別意識が高まったりと、食育上の成果が上がっていると言います。

フードリサイクル事業が導入された経緯には、札幌市としての分別、資源化の課題もありましたが、当時札幌大学に綱島教授という方がいらっしゃった、ということも影響したそうです。綱島教授は山形県鶴岡市で、エコピッグという取組みを行っていました。名前の通りで、学校給食センターから出る残菜を飼料にして、その飼料で養豚を行い、その豚を学校給食の豚肉として提供するというものでした。このエコピッグを、札幌にアレンジし、フードリサイクルが誕生したと言います。このフードリサイクルにはまだまだ課題もあるそうです。回収したうち6割が飼料、4割が堆肥になるそうですが、堆肥は原料以上の堆肥にはならないため、独自の堆肥ノウハウをもつ農家には、なかなか購入されないそうです。また152校まで伸びてきた活用校を、更に増やして行きたいという考えも示されました。

札幌の後は利尻町役場を訪れ、「総合体育館再エネ設備等導入事業」について、ヒアリングと施設の見学を行いました。

利尻町の町民の多くは、海抜10m以下の海岸沿いに居住し、利尻島近くの震源地で地震が発生した場合、3分以内で20mの津波が来ると予測されています。そうした環境下で、災害時収容避難所となる総合体育館における、電源確保が課題となっていました。対策として利尻町では北海道グリーンニューディール基金を活用して、利尻町総合体育館再生可能エネルギー等導入事業に取組んでいます。この事業では、自立電源システムとして、太陽光発電設備3基、小型風力発電機を4基設置し、館内に給電、蓄電池に蓄電を行っています。非常時には暖房用ジェットヒーター2台、ノートPC2台、防災用LED照明、その他携帯電話の充電などを、3日間かどう出来るだけの電源を確保しています。

利尻島には、利尻町と、利尻富士町の2つに自治体がありますが、今後は施設毎での再生可能エネルギーの活用だけでなく、利尻島全体でのスマートコミュニティーの取組みも構想されています。現時点では北海道電力頼みの電力供給であり、島の発電のほとんどが、ディーゼル発電機で賄われています。そのため重油の供給が止まれば、島内のエネルギー供給もストップしていまいます。将来的には、島内でエネルギーの地産地消を行っていけるよう、今後具体的なビジョンや計画を、両自治体が協力して行っていくということでした。

最終日となる30日(水)には稚内市バイオエネルギーセンターにて、その取組みについてのヒアリング、施設見学を行いました。

バイオエネルギーセンターは、生ゴミのメタン発酵施設で、稚内市の廃棄物最終処分場の隣に設置されています。埋立量の減量を目的としていて、家庭からの生ゴミをメタン発酵させる事で、減量だけでなく、そこから得られるバイオガスによりエネルギー回収を行う事で、温暖化ガス抑制を行うシステムを整えています。

稚内市はゴミ焼却場を持たず、資源物、大型ゴミ以外は全て一般ゴミとして、埋立処分されてきました。そのためゴミの排出量が多く、リサイクル率が低いという状況におかれてきました。そうした状況を変えて行くために、平成21年4月からゴミの有料化がスタートし、1リットル20円として、市指定のゴミ袋が販売されるようになります。また平成23年7月からは生ゴミの分別と有料化がスタートし、平成24年4月から同センターが本格稼働し、生ゴミの減容化が始まっています。この取組みにより、1/10以下に減容化し、最終処分場の長寿命化につなげています。また、有料化や分別により、ゴミの排出量は24%削減、リサイクル率は9%の増加に成功しています。また、この工程で発生するバイオガスは、発電設備を通じて電力として施設内で利用されたり、最終処分場で利用されたり、電力会社に販売されたりしていて、生ゴミ収集車両の燃料などとしても活用されています。

稚内市はメガソーラー発電にも取組んでいるので、施設の視察も行いました。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証実験として平成18年に建設され、平成23年3月に5年間の実証研究が終了した後は、市に無償譲渡されています。寒冷地における研究となったため、傾斜角度が30度のものから45度のものまで設置され、太陽電池も単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなど5種類が試され、最終的には多結晶シリコンが採用されていました。積雪対策等も取組まれてきています。11月〜2月は発電量が下がるものの、積雪後は反射によって発電量が増えるという減少も観測され、現在は敷地内に貝殻を敷き詰める事で反射の効果を引き出すなど、工夫が凝らされていました。発電した電気は近くの稚内市大沼球場や道立宗谷ふれあい公園で利用され、余剰分は売電されているという事でした。一方で、メガソーラーの発電量は、市内電力の90%に相当し、計画中の風力発電が稼働すれば、再生可能エネルギーで市内電力の100%を超える発電量になるという指摘もありました。

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