足で稼ぐ、3000社の企業情報とマッチング。豊中市の、若者就労支援。

2014-07-01 00:10:48 | カテゴリ:活動報告


豊中市

6月27日、豊中市に視察にお邪魔しました。目的は、若者就労支援について。特に、無料職業紹介事業における、企業開拓について。

豊中市に於ける就労支援は、

(1)くらし再建サポート事業:くらし再建パーソナルサポートセンター
相談支援事業、就労準備支援事業、「中間的就労の推進」事業、住宅支援給付事業、家計相談支援事業、その他連携事業

(2)地域就労支援事業:地域就労支援センター
就労実践塾、体験実習、生活保護受給者等就労支援事業、就労準備事業

(3)無料職業紹介事業:無料職業紹介所
支援機関と連携したマッチング促進、合同面接会、企業等での体験実習、企業の雇用・労働管理等の支援

という3つの事業を中心にして、それぞれが緊密に連携を図りながら、就労という出口を重視した取組みが行われています。そのため、生活困窮者自立促進支援や、高齢者支援、障害者支援、ひとり親支援。再就職を目指す女性支援など、様々な対象を扱う周辺の事業とも連携を取りながら事業が展開されています。子ども・若者支援については、全国の自治体同様「とよなか若者サポートステーション」が置かれ、連携した取組みが行われています。

豊中市では2010年11月から翌年1月にかけて、市独自で「若者等の自立・就労実態調査(ひきこもりに関する実態調査)」が行われています。この調査は、2010年7月に内閣府が行った同様の調査を受けて、市の実態を把握するために行われています。対象は15歳〜39歳。その調査結果では、ひきこもり群が2.01%(国1.79%)、ひきこもり親和群5.04%(国3.99%)というように、国の調査より率が高い事が分かりました。また、ひきこもりの人数が中間値で2,342人と推計されていますが、実際に窓口へ相談に来る若年者の数(市の統計では34歳未満)は、2010年度でたった60人(新規・過年度合計)でした。こういった状況に危機感を抱き、対策を充実させてきたと言います。

サポステを受託しているのは、一般社団法人キャリアブリッジさん。サポステを受託する前から、豊中市役所の裏にある定時制高校、府立桜塚高等学校の支援を行っていました。高校内での支援においては、「相談窓口」といった看板を掲げても誰もこないので、「アルバイト募集」という看板を掲げ、生徒達の心理的ハードルを下げながら、生徒の家庭の状況などを把握してきたと言います。相談室自体は茶道部の畳敷きの部屋に置かれ、「ウーパー」と呼ばれたと言います。昼のバイトを紹介することで、子ども達の居場所を家と学校以外に作り、小遣いを得て、家にもお金を入れられるようにする、ということを目的にされていました。(現在は在校生の支援ができなくなっている。)

先日訪問した横浜市の三春学園でも聞かれたことですが、豊中市でも子ども達の様子が変わってきていると言います。20〜30年前の桜塚高の生徒はエネルギーを持て余すような、ヤンチャな子が多かったと言いますが、現在では非常にエネルギーが小さい生徒が多いと言います。また障害を持っていたり、診断はされないもののそのボーダーにあるような生徒が多くなり、家庭環境も、ひとり親家庭等課題を抱えているケースが増えていると言います。そうした中で、1対1での面談等では対応できないケースが増えていると言います。

豊中市の就労支援は、とにかく「出口」にどうつなげるかが意識されています。そして、「ハローワークは出口にならない」という認識でした。就労支援で大事なのは、「こうすれば、こうなる」という道筋と出口を用意する事が大事なものの、ハローワークではそれが出来ないという事です。豊中市の3つの事業と周辺事業を連携させ、制度から抜け落ちる人が出ないようにしながら、個人個人を出口までつなげて行けるよう対応していると言います。そして、出口につなげるためには行政側のサポート体制だけでなく、受け入れる地域の企業やお店とのネットワークが重要になります。サポステでも職場体験などが提供されていますが、無料職業紹介所のネットワークが活用されています。

マッチング先の企業を開拓する、4人の企業開拓員

ここで冒頭の、無料職業紹介所の取組みについてです。現在豊中市では嘱託で、4人の企業開拓員を雇用しています。人材派遣会社に務めていた経験のある方や、企業で障害者雇用に携わった経験のある方、企業で人事を担当していた方など、就労・雇用に経験のある方を雇っています。それぞれ週4日、30時間勤務となっています。これまで豊中市だけでなく、大阪市や吹田市、尼崎市など周辺地域の企業も回り、3000社ほどの企業情報をもち、800社が登録し、毎年300〜400社から求人があると言います。

開拓員は、就労支援の相談に来る相談者のニーズに合いそうな企業・お店を回ります。そのために必要なニーズ等の情報は、紹介所等のスタッフと打合せ、共有されています。対象となる中小企業も、求人のミスマッチに悩んでいるケースが多いそうです。一般的な求人を行っても、100人以上の応募者が来てしまい、求めている人材を見つけきれないと言います。しかしながら、豊中市の取組みでは、相談者個々の状況も把握しつつ、企業側のニーズも細かく把握しやすく、個別に相談、調整もしやすいというメリットがあります。また豊中市の無料職業紹介所の特徴の1つは、多くの自治体では相談者を生活保護受給者に限定しているのに対して、相談者を生活保護受給者に限定していない点です。そのため企業の求人情報に合わせて、障害者の方を紹介する事もできるし、「週40時間の仕事」というニーズに対して「週20時間」を2人提案する、ということが可能になります。

豊中市

無料職業紹介所のチラシには、「企業の応援団」という言葉が掲げられています。制度上雇用・就労支援という、相談者に寄添う支援ではあるものの、採用活動を行う企業に取って、メリットを感じられる取組みに設計されています。そのため、人材紹介は勿論ですが、合同面接会、企業説明会、職場体験実習・見学会といった取組みと、各種企業支援を企業が包括的に相談できる場所となっています。

こうした「豊中モデル」が実現した背景には、目立つ職員を応援するという市役所の文化があったからではないかと指摘がありました。新しくて、負担が増えるような仕事は、誰もやりたがりませんが、それをやろうとした職員を、みんなで応援する文化。現在では、全国各地から視察があり、豊中をモデルに新たに無料職業紹介所を開設しようと言う自治体も増えているそうです。国も、豊中市を見習い始めているということでした。

今回の視察、私もメディアで4人の企業開拓員についての記事を見たのがきっかけでした。企業を沢山回り、情報を集め、マッチングを行う。当たり前のようで、行政ではなかなか出来ないことでもあります。分野や目的は違えど横浜市経済局では、現場訪問支援事業や中小企業支援コーディネート事業という、企業を訪問する事業も行われています。しかしながら、3月の予算委員会でも指摘をしましたが、週3日働くコーディネーターが、1ヶ月に8.5件しか訪問していない、という状況だったりするわけです。豊中市のように、支援を必要とする様々な状況の相談者に対して、包括的に網を張り、「出口」のために汗を流し、調整等を行うという作業、コーディネーター的役割が、今後行政の大きな役割になると考えます。

※参考資料:豊中市雇用・就労支援事業参考資料

豊中市

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  1. […] 足で稼ぐ、3000社の企業情報とマッチング。豊中市の、若者就労支援。(横浜市議会議員 藤崎浩太郎さんのブログより) […]

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