ここにしか無い価値を地産地消で発信する。「四万十ドラマ」の取組み。

2014-10-28 00:14:39 | カテゴリ:活動報告


四万十ドラマ
四万十ドラマ

2014年10月27日、所属する「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察で、高知県四万十町を視察に訪れました。視察先は「株式会社四万十ドラマ」で、1994年に四万十川流域市町村(旧大正町、十和村、西土佐村)が出資して第3セクターとして設立されました。2005年には市町村合併の影響もあり、株式が近隣住民に売却され、住民が株主の完全民営化が行われています。

四万十ドラマは「四万十川に負担をかけないものつくり」をコンセプトに、「地域密着による地域資源の展開」、「環境循環ビジネス」、「住民が活躍できる人材育成」というRIVER宣言をまとめています。また「ローカル(四万十川を共有財産に足元の豊かさ・生き方を考えるネットワークの構築)」、「ローテク(農林漁業に生きづく技術や知恵や第1次、1.5次産業にこだわる)」、「ローインパクト(四万十川に負荷をかけない風景を保全しながら活用する仕組みづくり)」という3つの考え方を軸に、「ローフード・ローライフ(四万十川に負荷をかけない食べもの、生き方)」を提唱しています。

四万十ドラマ

今では四万十町(旧十和村)の名物として、お茶や栗が製品化されていますが、20年ほど前までは他県のお茶や栗製品に混ぜられたり、ただJAに原料を提供するのみでした。それを四万十ドラマが商品化。お茶は「じつは茶所」というキャッチコピーとともにペットボトル化されています。また40数年前には紅茶が栽培されていたことが分かり、「しまんと紅茶」として復活、商品化。緑茶は一番茶を使用していて、二番茶は売り物になっていなかったところを、二番茶を紅茶として商品化し、収益化。栗は、「四万十栗の渋皮煮」として25g以上の大きな栗をシロップにつけて、1瓶3,500円で販売し、菓子の原料として「地栗のペースト」や、モンブラン(400円)などが商品化されています。

こうした商品化には、地産地消の考えが貫かれています。ペットボトルのお茶は町内では製造できないものの、高知県内の業者に茶葉を納品し製造しています。栗の生産、商品化も力が入れられています。最盛期には年間500tもの栗が取れていたものが、一昨年は17t、昨年は14tと栗の生産量が落ちています。背景には生産者の高齢化と後継者不在という問題が、栗園が荒れてしまったそうです。また栗の木の高齢化で実をつけづらくなったことも重なったそうです。そこで「四万十の栗再生プロジェクト」を立ち上げ、岐阜から先進栽培技術を導入して、木の若返りや作業効率の向上に取り組んでいます。また栗再生の一環で「しまんと新一次産業株式会社」が設立され、毎年1,000本栗の苗木が植樹され、10年植え続けて新たな農園を作り、雇用を生み出していこうと取り組まれています。

四万十ドラマ

四万十ドラマでは、地域の素材を活用した商品開発を行っていますが、その商品開発を行う「意義」についても、しっかりとコンセプトが立てられています。商品開発はただものを作るのではなく、地域の産物、産業、生活、人情、風景を載せて飛び回る宣伝員と位置付けられ、その土地オリジナルの情報が載っていることが重要であり、そうすれば商品が考え方を広げていく。地元で加工を行うことで、新しい産業を地域で生み出し、雇用を生み出す。考え方が広まれば、共感を生み、交流を起こし、四万十に人がやってくる。やってきた人と、地域の人とが交流することで、さらに新しい考え方を生み出し、人材を育成する。考え方が共有され、地域の素材を大事にしようとすれば、風景の保全の必要性に行き着き、風景を「保全しながら活用する」という循環ができていることが、商品の背景として大きな「価値観」になる。そうコンセプトが定義されています。

こうしたコンセプト、価値観があるからこそ、値段だけ見れば高い商品でもしっかりと売れていきます。商品の背景にある物語が消費者に伝わり、その価値が認識され購入されるという、まさにブランド化を徹底して行っています。上述の栗の渋皮煮も、3,500円と非常に高く感じます。しかしながら、都内のバイヤーなどが四万十まで訪れて、生産現場や考え方を理解し、販売を行うと、遠く離れた都内での販売現場でもしっかりとその価値を伝えることができ、売れていくといいます。そのため、四万十ドラマでは「サンプルを送ってくれ」という業者には決してサンプルを送らないそうです。現場を知らなければ、単純に高い商品としてしか見なされず、考えも伝わらず、売れないからです。この実際に現場を知ってもらうということは、四万十ドラマの地産地消の考え方の一つ、「来てもらって消費してもらう地産地消」というところに反映されています。いくら地産地消と言えども、四万十町の人口を考えれば、町民だけの消費では経済として成り立ちません。また、町外に物を納めるだけの物流を行っていても、考え方や価値が伝わらず売れません。だからこそ、滞留型の道の駅「とおわ」などに町外からお客さんに来てもらって、消費してもらうことに力を注いでいます。

商品開発は基本的には、四万十ドラマの代表取締役である畦地履正さんと、高知在住デザイナーの梅原真さんの二人で行われているそうです。畦地さんは営業担当としてニーズを知り、梅原さんは生産現場をよく知り、その二人の力を買わせて製品開発が行われるそうです。この二人が、四万十ドラマのキーパーソンでもあります。パッケージデザインが優れていることに目がいきがちですが、地域を知り、現場を知り、出口である消費、消費者を設定、イメージして、トータルでデザインが行われています。ただ単にキレイなデザインではなく、素材、商品の本質を表現したデザインが行われています。

いろいろお話を伺いましたが、課題もありました。人口減少と流出に伴う、人材不足です。四万十町は約18,500人の人口を抱えますが、毎年300人減少していると言います。そもそも地域に雇用がなかったため、親達は子ども達に対し大人になったら外へ行くよう教育を行ってきたと言います。そのため、地域の中に若い働き手がいません。求人自体も安定的な求人が無く、基本的には誰かが辞めたからその後枠として雇用が行われるので、即戦力が必要とされ、若者が就職先を探すには厳しい環境となっています。現在四万十ドラマの社員は25名ということでしたが、その3分の1は「Iターン」ということでした。内閣府でインターンシップの制度が取り組まれ、四万十川流域に20名、雇用されたり起業したりで残ったと言います。こうしたインターンシップやIターンで人材を確保したいと行政でも考えている一方では、住居がないという問題があります。町内におよそ8,000軒家があり、その内300軒ほどが空き家になっているものの、空き家の持ち主がよその人に、先祖代々の家や土地を貸したがらないため、空き家の活用が進まないそうです。人口減少に伴う人材不足と、空き家問題。縮図のような課題です。

最後に、四万十ドラマが指定管理者として運営を行っている「道の駅とおわ」にお邪魔しました。四万十ドラマの年間の売り上げは、およそ3億円。その半分の1億5千万円を売り上げているのが、道の駅とおわです。地域の米や野菜、果物の販売はもちろん、アイスやコロッケ、お菓子など加工品の販売に、四万十の季節の素材と、四万十川周辺の風景を楽しめる食堂やカフェがあり、2012年3月には合計来場者が70万人を超え、総売り上げも7億円に迫るほどになっていました。

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