グッドデザイン賞を受賞した、自治体の電力地産地消。視察報告。

2015-10-31 00:41:55 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

10月30日は、横浜市会の「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察3日目、最終日。福岡県みやま市の自治体新電力の取組と、福岡県大川市の衣料・繊維再生ビジネスについての2か所を訪問しました。

電力の地産地消とみやまスマートエネルギー株式会社

福岡県みやま市は合併でできた、人口約3万9千人の市。全国の地方自治体同様に、人口減少(10年前の人口は約4万5千人)、高齢化、一人暮らし高齢者の課題を抱えています。こうした課題の解決に向けて、全国で様々な取組が行われていますが、みやま市が選択したのはエネルギーの地産地消による、経済活性化、人口増加です。

みやま市内には民間企業が持つメガソーラー施設(30メガ)と、市が有するメガソーラー(5メガ)があります。市内の約1割の住宅にはソーラーパネルが設置され、概ね6〜7kWの発電量があり、余剰電力を九州電力よりも1kWhあたり1円高く購入しています。市内の再生可能エネルギー全体では、およそ4万kwの発電量があり、これは市内の消費電力の約50%に相当しています。ここに目をつけたみやま市は、2016年4月からはじまる電力の小売自由化に向けて、市内で発電された電力を市内で消費してもらうために、「みやまスマートエネルギー株式会社」を設立しています。新会社は市が資本金の55%を出資する第3セクター。市内で発電された電力を購入し、市民や市内事業者向けに販売する、電力の地産地消を目指しています。従来の電力供給は九州電力等に支払いが行われていたため、年間20億円程度の電気代がみやま市外(福岡市)に流れています。新会社が電力を供給することで、この電気代を市内経済に循環するようにしようということが目的になります。

今後の課題として、(1)価格競争力、(2)非価格競争をどう作るか、(3)電源調達の安定化、(4)インバランスリスクの極小化、が示されました。価格競争力に対応していくために、広域自治体連合による共同購買によって、コスト削減、管理コストの分担、電力融通によるインバランスリスクの低減を行っていこうというのが、今後の方策です。みやま市同様に地産地消電力を有する自治体が新電力会社を運用し、相互に電力を融通しあうことを、九州一円、全国にみやまモデルを広げていくことが計画されています。また現在の地域エネルギーの構成では、50%近くが再生可能エネルギーとなるものの、太陽光依存度が高いため、回避可能原価の市場連動など、制度変更が経営リスクになります。今後は水力発電等の24時間安定発電再生可能エネルギーの導入を進めることで、ベースロード電源比率の拡大を実現し、安定供給を行うとともに、九州電力からの電力購入量を減らすことが目指されています。

みやま市では経済産業省の「大規模HEMS情報基盤整備事業」の補助を受け、市内2,000世帯にHEMSをモニター導入しており、この数は市内世帯の約7分の1に当たります。モニターにはタブレット端末が配布されていますが、このタブレットでは電力のモニターだけでなく、高齢化や一人暮らし高齢者の増加に対応した、様々な付加サービスが提供されています。電力消費の変動から居住者の生活の変化を読み取る見守りサービスの提供のほか、買い物代行サービス、市の広報や生活に必要な情報の提供などが行われる予定になっています。

こうした「国内初」の、市が主体となった電力の地産地消の取組が高く評価され、みやま市の「みやまスマートコミュニティ」は、グッドデザイン賞を受賞しています。こうした取組を通じてのみやま市の目標としては、周辺自治体より安価に電力を供給することで企業誘致を行い、雇用を生み、若者に定住してもらい、人口を4万人まで増やそうというものです。今後は民間企業との連携などを進めて、より若い世代に魅力のある取組を増やしていく計画があるということでした。

みやまスマートコミュニティ
体感ショールムの前には、みやま市マスコットキャラクター「くすっぴー」。

みやま市
体感ショールームにて

みやま市

みやま市

みやま市

みやま市

衣料・繊維再生ビジネスについて

今回の視察最終地は、福岡県大川市となりました。現在横浜市での古布回収は、(1)町内会等の実施団体が直接回収業者と契約して行う、資源回収、(2)資源回収ボックス(一部の区役所、地区センター、スポーツセンター等に設置)やセンターリサイクル(各区の資源循環局収集事務所)に持ち込まれた古布を回収する方法という、2つの方法があります。このうち、(2)の回収場所から集められた古布は、大川市に所在する日本ファイバー株式会社に運搬され、分別されています。

日本ファイバーには毎日約40tもの衣料が入荷しています。24か所のブースにおいて分別作業が行われますが、なんと1人当たりの作業量は、1日2t!1枚1枚を人の手によって選別し、まだ衣料として着用可能なものは、同社が経営する「古着屋 西海岸」にて販売や輸出。そうでないものは加工されて、ウエス加工用、フエルト・綿原料用にと仕分けされていきます。経営としては、売上の7〜8割を古着の販売が占めているそうです。輸出入に関しては、規制や景気などに左右されるので、販売で成り立たせている側面があるそうです。また販売も、国内の古着は80%が女性ものということで、販売店での男女比を保つためには輸入品も欠かせないということでした。

工場内も見学しましたが、1日2tというのもうなずける手慣れた作業。ひとまず運ばれてきた衣料の山には驚きましたが、各ブースに服が運ばれ、衣料の種類ごとに約80種類(!)に選別されていく現場は、海外の向上とは比較にならないほど効率性の高い作業になっているとのことでした。1枚1枚ムダにすることなく、人の手によって作業されることが、横浜市の3Rの取組を支えています。

藤崎浩太郎
選別される前の山積みになった衣料の前にて

日本ファイバー株式会社
人の手による選別作業

日本ファイバー株式会社
選別作業を終えて梱包された状態

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