2018年11月2日、所属する常任委員会「建築・都市整備・道路委員会」の視察で、神戸市を訪れました。目的は無電柱化の推進について伺い、現場を見せていただくこと。横浜市では現在、「横浜市無電柱化推進計画」策定作業を行っており、今年度中には策定される予定となっています。
山本通りの無電柱化
神戸市の観光スポットとしても有名な北野・山本地区では、異人館の並ぶ山本通りの無電柱化が行われてきました。もともと狭小な歩道と、一方通行の車道で構成されていた道路は、車道幅を維持しながら地上機器を設置することが難しいことを理由に、無電柱化は困難とされていたと言います。しかしながら、北野・山本地区のシンボルとしての雰囲気を守る景観を作り出すために、他都市での事例などを検証しながら、検討が進められます。最終的には、車道幅を狭め、歩道を拡幅し、人と車が共存できる、快適な道路づくりとして、電線類の地中化に成功します。
神戸のみちづくり
神戸市では第5次マスタープラン「神戸づくりの指針」の部門別計画として、「みちづくり計画」を策定しています。2016年に改定されていて、道を活かして暮らしを豊かにする「活かす」という視点、地域をつなぎ経済を支える「つなぐ」という視点、災害に備える・環境に配慮する「守る」という視点の、3つの視点からインフラ整備、まちづくりが行われています。
神戸市の取り組みで興味深かったのは、「人が集う神戸の都心づくり」として、6つの駅が集まる三宮を中心に、駅とまちの空間の再整備を行おうとしていること。そして、その再整備の将来ビジョンとして「人の活動が生まれる場所」を創出しようとしていることです。このビジョンで描かれている「絵」は、三宮駅前の車道を完全に封鎖して歩行者空間、広場に変え、「人と公共交通優先の空間」をこれから30年後に創り出そうというものです。
道路のリデザインと街のネットワークづくり
街路を自動車中心の設計から、歩行者中心の設計へ変えていく取り組みはすでに始まっていて、「えき=まち空間」として、駅から北のエリア、旧居留地、ウォーターフロントなどの来街者が多いエリアへの導線、歩行者ネットワークを形成するために道路の「リデザイン」が行われています。実際に現地を拝見した、三宮駅南側にある「葦号南54号線」では、南行き一方通行2車線と停車帯で形成されていた車道を、1車線に変更します。車線を減少させることによって、もともと4mだった歩道を7〜10mに拡幅し、歩行者空間を広げるとともに、ベンチなどを設置し、回遊性や快適性の向上が図られています。併せて、車道を蛇行させたり、54号線の入口となる横断歩道を「スムース横断歩道」という起伏を設けた形状にしたりしながら、通行車両の削減、速度の抑制を図っています。配置されたベンチは無機質な配置ではなく、人間工学に基づいた配置をされているということで、視察の際もベンチを利用している方がいらっしゃいました。
道路のリデザインとして、「KOBEパークレット」という道路上の余剰空間を公共空間に変える取り組みが行われています。停車帯の一部および歩道上にパークレットと呼ばれる、ベンチやテーブル、人工芝などのユニットが設置され、食事してもよし、読書してもよし、お話してもよし、という自由に使える場所になっています。パークレットはサンフランシスコ市で始まったもので、車道を使ったパークレットとしては日本初となっていて、2018年度のグッドデザイン賞を受賞しています。他にも、公共駐車場に隣接する半地下広場を「三宮プラッツ」と名付け、改修し、街中の公共空間をイベントなどで活用できる、賑わい創出の場所に転換する事業も進められています。今後の神戸市のみちづくり、まちづくり、公共空間の活用に注目です。
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