2026年6月11日号の「タウンニュース」に、私の市政報告「在宅避難の課題と対策」が掲載されました。紙面をご覧頂いた方からの反響もあり、紙面でお伝えしきれなかった課題や、私が議会で訴えてきた問題意識について、加筆して以下にまとめました。
横浜市の防災戦略の見直しと「在宅避難」の現状
昨年、横浜市は新たな「横浜市地震防災戦略」を策定し、今年度は見直された最新の被害想定が公表される予定です。地域防災拠点(避難所)における食料・飲料の備蓄が「2食1日分」から「3食分3日分」へと拡充される等、令和6年能登半島地震等の経験が生かされ、従来の戦略の見直しが行われてきました。
近年、横浜市は「在宅避難のすすめ」のリーフレット配布などを通じて、「自宅が安全であれば、避難所よりも在宅避難の方が普段の生活に近い環境で過ごせます」というメリットを示し、市民の皆さんに在宅避難の準備を推奨しています。避難所のスペースや備蓄に限りがある中で理解できる方針ではありますが、一方で「在宅避難」の定義や支援のあり方には、まだ多くの課題が残されています。内閣府が令和6年に示した「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(P31)では、在宅避難者について以下のように定義されています。
「在宅避難者」とは、単に災害時に自宅等で生活を行っている人を広く指すものではなく、災害によるガスや水道といったインフラの途絶や物流網の途絶、家屋への被害等のため、自らの備蓄を利用し、或いはなんらかの支援を受けて避難生活を送る人であり、必要な支援を実施する必要がある。
誰がどこで避難しているかわからないという課題
国の定義では「必要な支援を実施する必要がある」としていますが、過去の被災地(熊本地震など)の経験からは、在宅避難の課題が明らかになってきました。それは、「在宅避難者の把握が困難である」ということです。避難状況が把握できなければ、最新の情報が行き届かなくなります。食料等の支援物資も行き届きづらくなってしまいますし、健康状況が悪化しても治療等につながりづらくなります。行政がいくら在宅避難を推奨しても、その情報が十分に届かないために、もしくは不安で仕方ないがために、自宅が安全でも避難所に大勢の方がいらっしゃる可能性は高いのではないかと考えています。一方で、市の要請に従って在宅避難を選択した人たちに情報が届かず、物資も得られないという事態が生じないようにしなくてはいけません。
市は「在宅避難のすすめ」においてメリットのみ記載していますし、定義も記載していません。定義が不明瞭なまま、メリットや自助ばかりを強調した啓発を行うと、避難所に行くべき人が遠慮してしまったり、間違った判断で在宅を選んでしまう心配があります。さらに「在宅避難圧力」を生じさせることも懸念しています。震災関連死は発災から1〜2週間後が多く、ストレスも大きな要因になっています。ただでさえ慣れない不安な環境に置かれているときに、「在宅避難しなくては」と無理を強いてしまうことがあってはいけませんし、就寝は家でしても、昼間は避難所で話したり、手伝ったりして過ごしたい人もいるでしょうから、そういう緩やかな部分が許しあえる避難のあり方であってほしいなと思います。役所は被災者、避難者が、助けを求めることを躊躇してしまうことがないよう、人の気持ちに寄り添い、細心の注意を払って備える必要があります。
私はこれまで議会において、この課題を繰り返し指摘し、対策を求めてきました。具体的には、在宅避難者がスマートフォン等を活用して避難状況を登録したり、登録した人へ情報を的確に届けられたりする仕組みの構築です。私の提案が実を結び、横浜市は防災戦略において「多様な避難生活を支援するシステムの構築」をすることを定めました。しかし当初令和9年度中に運用開始予定とされました計画でしたが、現在の進捗は遅れています。いつ起こるかわからない震災に対して、部分的にでも必要な対策を早急に取り進めるよう、市に強く求めています。
出典:「横浜市地震防災戦略(令和7年3月改定)」P20(赤線は筆者加筆)
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