2025年11月21日、次世代活躍推進特別委員会の視察で北九州市を訪問し、「Z世代課」の取り組みについて調査してきました。Z世代課はその名の通り、1990年代中盤から2010年序盤生まれの世代、すなわち高校生から20代をターゲットに施策を展開する部署となっていて、令和6年4月に全国で初めて設置されています。
日本一若者を応援するまち・北九州市
全国の自治体において、Z世代を含めて若者の支援は様々な形で展開されていますが、Z世代課を組織し名前をつけることで、本気で取り組むことを示してきたといいます。課の職員構成としては、本務が課長と係長、職員2名、兼務が12名で、合計16名となり、平均28.3歳という若さで、課の職員にもZ世代が配置されています。北九州市も全国の自治体同様に、若い世代の転出の課題を抱えてきたなかで、Z世代課が新設されてきたという経緯があります。ただ、北九州市はその課題にとどまること無く、Z世代課の目指す姿として「日本一若者を応援するまち・北九州市」というキャッチフレーズを掲げ、課の目的を「若い世代のニーズ・価値観を学び、時代の変化にスピーディーに対応することで持続可能な北九州市となる」としています。行政やZ世代以上の人たちの都合で若者を捉えるのではなく、若者から学び、力を借りていこうという姿勢が示されています。
若者支援策については、引きこもり支援、就労支援、移住・定住支援等の各種施策が北九州市でも取り組まれてきましたが、各担当部署が行う事業は各担当部署に任せて、各局施策を効果的に実施する横串を通す仕事がZ世代課の役割であり、そのため政策局に課が置かれています。「持続可能=変化に対応し続ける」という考えのもとで、Z世代・若者の参加する取り組みを通じて当局として得た価値観や行動傾向について、各局へ共有し、浸透させる役割を担っています。これまでZ世代と交流する中で、物心がつくころにはスマホやインターネット、SNSに触れていることによって、情報の質と量が違うと感じていらっしゃいました。Z世代の特徴として挙げられたのは(1)自分らしさを大切にする、(2)承認欲求が強い、(3)効率性を重視する、(4)フラットなコミュニケーション力、の4点です。学校教育において探究学習が行われている世代であるため、自らの意見や考えをもって探求することに慣れていて、自分らしを大切にしているということ、SNSでの評価を求めるために承認欲求も強く、一方では保守的になりやすかったり、デジタルツールが前提であり非効率なことは嫌ったり、国籍や年齢、性別など関係なく人とのつながりを持てるという特徴があるということでした。
Z世代はみ出せ!コンテンスト
Z世代課の事業の中でも目玉的な事業に「Z世代はみ出せ!コンテスト」があります。若者の自由な発想や提案を引き出し、それらの実現を支援するプロジェクトとされ、応募条件は(1)若者ならではの新規性及び独創性があるもの、(2)北九州市を舞台に街の活性化につながるもの、の2つだけ。更に応募資格は(1)Z世代であることと、(2)自らが事業主体となり、企画した事業等が完了するまで責任をもって遂行できる人、の2点のみで、居住地は問わず、全国どこに住んでいても応募できるようになっています。1回目の2024年度は29件の応募、2025年は約倍の60件の応募が全国からあり、東京、千葉、岐阜、広島、京都など幅広い地域から応募があったそうです。
採択にあたってはスタートアップ支援とは異なるので事業性などは問わずに審査を行っているそうです。採択されれば300万円の補助金が支給されるので、市としての本気も感じます。2024年に1位になったのは有名な北九州市の成人式を「もっとド派手に!」というコンセプトのVR、「北九州市成人式 in VR」でした。アバターが派手な衣装で成人式を行うとともに、現実の成人式のリアル会場とも繋いで、「おめでとう!」とコメントを伝えたりしていたそうです。2位は「小倉珈琲園プロジェクト」で、若い人にも参加してもらえる、稼げる農業を行おうという企画でした。収穫まで2年かかるそうで、事業性を考えると採択されないような企画ですが、このプロジェクトが採択されたことで、高校生が自分も参加したいとDMを送ってきたこともあるということで、狙っていた若い人の農業参加に繋がっているそうです。3位は「Next-Gen福祉ロボット都市プロジェクト」で、介護ロボットの研究に取り組んでいる大学生の提案。こちらも若い人たちに介護を知ってほしいという内容で、子育て専門インスタグラマーとコラボして、大学キャンパスの工学部棟に子どもたちが訪問し、研究しているロボットなどを見たり触ったりする企画が行われたりしたそうです。
Z世代課パートナーズ制度
コンテスト等を通じてZ世代課を知ったZ世代の若者の中から、電話や手紙、訪問によって「自分たちに役立てることはないか」と相談、問い合わせが多数寄せられるようになったそうです。そうした熱意あるZ世代を登録して、活動してもらうために「Z世代課パートナーズ制度」が創設されています。市内在住かどうかは問わず登録可能で、市から委嘱を受け、名刺も渡されます。現在48名のパートナーが委嘱されていて、最年少が17歳、最年長が30歳で、高校生3名、大学(院)生17名、社会人28名、市内在住23名、市外25名という内訳になっています。
探究学習等の影響もあって、地域や公共に対する意識の高い若者が多く、中には海外留学中で就職先も北九州市にはなさそうではあるものの、なにか貢献したいという気持ちを持って参加している人もいるといいます。登録動機の中には、北九州市にお世話になったので「恩返ししたい」というケースが多いそうです。パートナーは市役所関係や、企業関係に対して、これまで32案件に派遣されています。市役所関係だと審議会委員として派遣されていたり、企業関係だとバス会社の企画に派遣されたり、シニア情報誌で市長とZ世代とシニアの3世代対談が行われていたりするそうです。市としては誰もが住みやすいまちを目指す中で、今後は多世代交流を増やして行きたいとも考えていて、「年長者の祭典」のパネラーにパートナーを派遣した事例も作られています。
メディア露出は100件以上
これまでZ世代課がメディアに取り上げられた件数は100件を超えているといいます。わかりやすい名称をつけたことが奏功しているようでした。ありがちな行政部署の名称だと、若者政策推進課のようになりそうですが、これだと誰がターゲットか曖昧にもなってしまいます。名称の妙はメデイア露出にも影響しただけでなく、Z世代の若者が「自分のことを行政が見てくれている」という受け止めにも繋がっているそうです。行政という組織の事情もあり、あまりターゲットを絞り過ぎることは苦手でもあり、批判を受ける可能性も考えてしまいますが、設置後は応援の声が意外と多く寄せられたといいます。
今後は、市民や企業との取り組みを広げていくことが課題となっています。市の広報誌「市政だより」を活用して、温故知新にかけた「温Z知新」というコーナーを設けられています。このコーナーはZ世代をきっかけに、世代を超えた人のつながりや経験・発想の共有の機会を作っていくことを目的とし、Z世代の意見やアイディアに対して、多世代の意見をインタビュー形式で掲載する記事が連載されています。企業との取り組みにおいては、「株式会社みんなの銀行」と連携を行い、Z世代課を応援する人の預金額に応じて、銀行から市に寄付が行われる仕組みが設けられています。預金額は1億円集まり、その結果数十万円の寄付をもらい、アイデアコンテストの補助金の一部として活用されています。JR西日本との連携では、小倉駅のあまり利用されていない空間の活用を、Z世代に考えて欲しいという提案がなされています。ダンスをできる場所にしたいというZ世代の意見をもとに、まずは実証実験として大型の鏡が仮置きされ、口コミで利用が広がったことで本格整備が決まり、2025年11月19日から「KOKURA DANCE STATION」として正式にオープンしています。
ご説明を伺って、非常に重要なことだなと感じたのは、Z世代の提案を実現できるように取り組んでいきたいと発言されていた点です。これまでは、若者の力を借りてなにかしようとアイディアを募集しても、予算の都合や様々な関係者の都合が出てきてしまい、結局途中で頓挫してしまうことがあったそうです。そうならないように、最後まで役所が関われるようにしたいと考えていらっしゃいました。そのためにも、大人の度量を見せられるような取り組みにし、Z世代によるZ世代のためだけの課にならないようにしたいと考えていらっしゃることが印象的でした。
所感
若者の意見や力を借りたい、と考える自治体は多いと思いますが、どうすれば良いのかが難しいテーマではないかと考えます。役所の都合に若者を合わせれば、それらしい形はできても、若者が主体ではなくなってしまいます。様々な支援策があっても、その情報が届かなければ、若者を支援することに実際には繋がらなくなってしまいます。Z世代課という際立った名称を1つの広報ツールとして活かしながら、「あなたのための施策」であることをターゲットとなる若者に伝え、Z世代が主体となるコンテストや、パートナー制度を作ることで自発的な提案、参加を促し、そこから得られた力を、地域や行政や企業に展開するという流れができていました。今後はZ世代・若者の参加から得られる力や、知見を幅広く市政に生かしながら、「持続可能な北九州市を実現」していくという意欲的な目的を実現しようとされていて、どのような展開になっていくのかも興味深い取り組みです。行政の仕事は様々ありますが、Z世代課は横串を通す役割とともに、コーディネーターとしての行政のあり方を示す好事例です。役所の都合に市民に合わせてもらうのではなく、市民の力を存分に発揮できるように、行政職員がコーディネートし、必要な施策を行っていく先に、若者にもあらゆる世代にも魅力的な街、地域づくりが実現でき、持続可能性が高まるのではないかと感じました。
Post comment
RECENT POST
- 2026.01.21
京都市会のペーパーレス化と通年議会。視察報告。 - 2026.01.19
神戸市会のペーパーレス化と、議会制度改革。議員の宣誓制度も。 - 2026.01.08
山内図書館のリノベーションと、市民の意見と利用しやすさ。 - 2026.01.07
定員超過と長期化という横浜市一時保護所の問題。里親支援の充実。 - 2025.12.29
新横浜の大型図書館と、ブックス&ラウンジ。図書館ビジョンの推進。
RELATED POST
- 2025.08.20
分教室型と本校型の学びの多様化学校。世田谷区の取組。 - 2025.08.07
町民と町と町の情報をつなぐ、紫波町図書館視察報告。 - 2025.08.05
教育ビジョンの具現化。秋田市における学力向上の取組。 - 2025.06.12
豊島区の男性育児支援「For PAPA プロジェクト」。視察報告。





