2025年8月5日、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察で、秋田市を訪問しました。秋田は「全国学力・学習状況調査」で全国トップレベルの成績を誇る、教育市、教育県として知られます。秋田市は人口約29万人で、横浜市青葉区と人口規模ではそれほど変わらない中核市です。
秋田市教育ビジョンと「学校教育の重点」
令和4年3月には第4次となる「秋田市教育ビジョン」は策定されています。第1次から維持されているのが「自立と共生」という基本方針のキーワードであり、教育理念として継承され、「志を持ち『徳・知・体』の調和がとれた子どもをはぐくむ教育の充実」という目標が定められています。このビジョンを推進するために、「令和7年度秋田市学校教育の重点」という冊子が作成され、秋田市教育の理念や目標を、学校現場で具現化できるように取り組まれています。
「令和7年度秋田市学校教育の重点」は、「Ⅰ 本市教育の目指すべき姿および学校教育の目標」から始まります。文部科学省では「知・徳・体」の順序で教育の3要素が示されますが、秋田市では「徳」を最初にし、「徳・知・体」の順序で目標が定められています。そのため「Ⅱ 重点項目」は「1豊かな人間性の育成」が最初に置かれて、価値観が多様化する社会において、人と人との関わりを通してよりよく生きるための基盤となる道徳性をはぐくむことが大切であることや、よりよい人間関係を築くことができる力を育成し、集団の一員として主体的に行動できるよう規範意識の涵養を図ること、郷土に根ざしたキャリア教育の充実、などが示されています。
「2確かな学力の育成」では、一人ひとりが基礎的・基本的な知識・技能を習得し、自ら課題を見付け、他者との協働的な学習を通して主体的によりよく問題を解決する力を身に付けることが大切であることや、様々な人々と協働して社会を創ろうとする態度をはぐくむためには、各教科等において様々な文化や価値観、生き方にふれ、思いや考えを伝え合う機会の充実を図ることが大切であることがしめされています。「3健やかな心と体の育成」では、全国的に子どもたちの体力の低下や生活習慣の乱れなどが指摘されているなか、、発達の段階に応じた保健教育や体育学習、食育の充実を図り、心身の健康づくりに取り組むことが大切であることなどが示されています。このほか重点項目は「4今日的な課題に対応した教育の充実」、「5系統性・連続性を踏まえた教育の充実」、「6家庭・地域・関係機関等との連携体制の充実」という全部で6項目から構成されています。
「Ⅲ 各教科等の指導重点事項」では国語、社会等すべての教科における重点事項と、「子どもの「もっと学びたい」につなげるために」という項目、指導のポイントに関わる教師の働きかけ方についてがまとめられています。例えば「社会」では、「もっと学びたい」につなげるためにでは、「社会的事象をより多面的・多角的にとらえることができるよう、既習事項や複数の資料を関連付けて考察したり、収集した情報を整理・分析しながら話し合ったことをもとに自分の考えを再構築したりする場を設定することが重要」とされ、教師の働きかけ方としては「日本のエネルギー政策について、資料をもとに話し合いましょう。」、「話し合ったことをもとに、「環境大臣」として今後のエネルギー政策の案を考えましょう。」ということ等が示され、現場での具体的な指導のあり方まで、落とし込みされています。
職員室の空気と教え合う教員
ビジョンを定めるだけでなく、具体的な指導のあり方まで落とし込むことで、目標を達成、実現するために、現場の教員までが一丸となって子ども達に向き合えるよう工夫されていることがこのビジョンと重点の特徴です。また、説明してくださった職員の方の話では、職員室での教員同士の関係性が非常に良いということも、秋田市の特徴ではないかということが指摘されていました。先生同士が相談したり、教え合ったりする関係が日頃から構築されていて、協力し合える環境のようでした。労働組合の評価でも、学校長の評価が悪いケースも少なく、昨年度は評価の悪い校長はゼロ、その前年度も1人くらいだったということで、管理職との関係も良いのではないかということでした。
「令和6年度全国学力・学習状況調査」での秋田市の結果において気になった点が1つありました。それは、ICTの活用です。示された資料においては、各教科の正答率などあらゆる項目が全国平均を上回っているなかで、「前年度までに受けた授業で、PC・タブレットなどのICT機器を、週1回以上使用した」と回答した子どもの割合が、秋田市は小学生84%、中学生88%で、全国平均を小学生は2ポイント、中学生は1ポイント下回っていました。この数字については、この3年位で伸ばしてきて、だいぶ差が縮んできたということでした。「学校教育の重点」のなかでは教員の研修についての説明もあり、その中では「ICT活用サポート講習会」が小・中学校教員に対して行われていることが特徴として説明され、ICT環境の整備状況の説明では、「ICT支援員」が国の配置基準4校に1人よりも多い、約3校に1人配置されていることなども示され、この間ICT活用の充実に取り組まれてきたことがよくわかりました。ICTの活用においても教員間の関係がよく機能していて、近年団塊の世代の退職に伴い、秋田市でも若い教員の採用が進み、若い教員がベテラン教員にICT機器の活用について教えたり、勉強会を開いたりしているということでした。
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