2025年8月6日、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察で、紫波町図書館にお邪魔しました。10年前にもお邪魔したことがあり、私は2回目の訪問となりました。10年ぶりに主任司書の手塚さんにお会いすることもできました。紫波町図書館は、「Library of the Year 2016」の優秀賞を受賞しています。紫波町図書館は、「オガールプロジェクト」という公民連携プロジェクトの、中核施設で「推進エンジン」とも表現されています。「オガール」は、紫波の方言で「成長」を意味する「おがる」と、「駅」を意味するフランス語「Gare」(ガール)を組み合わせた造語です。
町民から長年望まれた図書館
紫波町図書館の設立は多くの町民の、長年の願いだったそうです。設立までの経緯は1983年(昭和58年)にまで遡り、当時の町勢要覧に「図書館建設計画」が載って以来、何度も構想があったものの実現せずにいました。2001年(平成13年)には町民によって図書館を自分たちの手でつくることを目的に「図書館を考える会」が結成され、2002年には構想案が教育長に、2004年には提言書が町長に提出されています。その後、「図書館をつくり育てる会」へ組織が発展し図書館運動が展開され、2006年4月には町長に対して図書館の早期開館と構想検討委員会の設置を求める要望書が提出。2006年5月には「図書館をつくろう委員会」が公募委員と育てる会メンバーによって開催され、12月には図書館整備検討委員会が設置されていきます。2008年12月に図書館基本構想や基本計画原案等が策定され、2009年3月に基本構想と基本計画が決定し、いよいよ紫波町図書館の建設が具体化していきます。(※参考:紫波町図書館10周年記念誌)
基本構想において図書館の理想像が示されています。理想像では「図書館の生み出す可能性」として、
町に図書館があることによって、人々が情報を得、学び、行動するために大きな役割を果たす場となります。そこで得た情報を糧に人々は自身の活動を更に深め、極め、他と共感します。そして新たな「知識」が生み出されると、やがてそれを「情報」として図書館へと還元することになります。このように、「情報」と「知識」の輪が次々と発展していく可能性を秘めている施設が理想的な図書館です。
と示され、図書館の果たす目的として「7つの目的」が定められています。
①「たくさんの情報に出合える場」であること
②「次代を担う人づくりの場」であること
③「まちの歴史・風土・文化に出合える場」であること
④「活力あるまちづくりを支援する場」であること
⑤「協働の推進に寄与する場」であること
⑥「人に出会える場」であること
⑦「新しい自分を発見できる場」であること
の7つで、幅広い目的が定められているとともに、本日の説明では「知りたい」「学びたい」「遊びたい」を支援するというコンセプトとしてまとめられていました。隣接する交流機能との相乗効果によって、協働のまちづくりを具現化することが目指されています。
町民が紡ぐ町の歴史
今回お話を伺って興味深かった取組の1つが、「聞き書き」です。町民の、特に高齢の方々から街の歴史や文化について話を聞き、それを記録して残す作業が行われています。塩野米松さんという聞き書きの名手が講師として関わり、町民一人ひとり、その人の言葉で記録されているそうです。集めた聞き書きの資料はまだ提供できていないそうですが、作品ができつつあり、今後はWebでの公開や、館内での公開を考えているそうですが、個人情報も含まれるので取り扱いに注意が必要であるということでした。
昨年の「Library of the Year 2024」では、沖縄県立図書館の「“Finding Okinawan Roots” Project」という、海外に移住した沖縄県人のルーツ調査とデータベース化の取組が大賞を受賞しています。優秀賞を受賞した真庭市立図書館では統廃合校を含む市内の小中学校の校歌を収集・整理・発信する取組が行われていました。どちらも、地域の住民の歴史、文化の収集であり、そこの地域で暮らす人達にとって大切な情報であり、地域の図書館だからこそ蓄積し、活用できる情報です。
私は、地域の文化や歴史の蓄積や、個々人のルーツの蓄積が、今後地域の図書館が果たす役割として非常に重要なものとなると考えています。図書館がコミュニティや、アイデンティティの形成、醸成を支える役割を果たすことになりますし、「情報の拠点」としての図書館だからこそ担える機能だと考えます。こうした視点から、紫波町図書館の「聞き書き」の取組は素晴らしいと感じました。
町に飛び出す図書館:アウトリーチ型レファレンスサービス
もう1つ興味深かったのが、「出張としょかん」という取組です。紫波町の商店街に図書館が出張する、という名前の通りの企画ですが、民間のブックイベント「本と商店街」と連携した企画です。「本と商店街」は実行委員会によって開催されていて、実行委員は盛岡市の独立系書店や、紫波町のコワーキングスペース等の地域の方々が務め、紫波町と紫波町図書館が共催として関わっています。本の販売だけでなく、飲食店の出店や、トークセッションなどが開催されるイベントです。現在の図書館長である天野さんは、もともと地域おこし協力隊で紫波町に関わるようになり、協力隊の時から「本と商店街」に携わっているということで、人のつながりにより生まれた良い広がりだなと思います。
紫波町図書館はこの「本と商店街」と連携し、地元商店街にまつわる企画展示や、観光情報・パンフレットの提供等を行っています。企画展示としては、地域情報の収集として実施した「どこコレ?」企画として、商店街の昔の写真の展示が行われていますが、特に重要なのは「レファレンスサービスの出張」です。図書館の持つレファレンスサービスの体験として「メモリーブック・カフェ」という企画が行われていて、本の名前を思い出すことができないけれど、子どもの頃など昔読んで印象的だった本の特徴を司書さんが聞き取ることで、探し当てるという試みです。出張する図書館と聞いて「図書館の本を町で借りられる」と捉えてしまいましたが、図書館の二大機能である貸本とレファレンスサービスのうち、レファレンスサービスの出張であるというのがこの企画の面白いところです。思い出せないけど大好きだった本を探し当ててもらう、なんてことも司書さんにお願いしても良いんですよ、それも役割ですよ、ということをアウトリーチ型で伝え、図書館でもレファレンスサービスを利用してもらいたいという企画です。
紫波町図書館では司書さんの存在が大きく、司書さんによるレファレンス機能をもっと知ってほしい、活用してほしいという意識が強く打ち出されています。館内ではレファレンスカウンターが中心的な場所に配置され、「司書に相談してみませんか?」という案内がなされています。利用者さんが気づいていないニーズの把握や、調査内容の深堀りなどを、司書さんが担ってくれるということを体験してほしいということと、そのために利用者さんが司書さんと話しやすい環境づくりが行われています。カウンターには「本日のおすすめ」という本が置かれていて、おすすめ本が利用者と司書とが話すきっかけになっているそうです。
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