延岡市の駅まちワークショップと、たまプラーザのまちづくり。

2012-07-14 01:16:44 | カテゴリ:活動報告


本日は、宮崎県延岡市に視察に行ってきました。目的は、駅前整備に伴うまちづくりに関して学ぶためです。

横浜市と東急電鉄が今年の4月に5年の協定を結び、美しが丘1〜3丁目で「次世代郊外まちづくり」という取組みを行います。地域住民とワークショップを重ねながら、24年度内に「次世代郊外まちづくり構想」をまとめるということになっています。

延岡市においては駅周辺の整備に伴い、ハードとしての駅舎のあり方とともに、コンパクトシティなどの視点から駅前と駅舎の利活用というソフト面のあり方について、ワークショップなどで議論が重ねられてきました。今回は、この市民の声をまちづくりに反映させる事、そしてワークショップがどう運営されたのかを学ぶために、延岡を訪れました。

お話を伺ったのは、延岡市ボランティア協会会長の松下さん、延岡市民協働まちづくりセンターの運営者であるNPO法人のべおか市民力市場事務局長の福田さん、延岡市の中心市街地活性化推進室副参事兼室長の野々下さんの3名。私がアポをお願いしたのが1週間前だったにも関わらず、快く受け入れてくださいました。

本日お話を伺った場所は、「延岡市民協働まちづくりセンター」の「四畳半cafe」。名前の通り、畳が敷いてあるんです。でも、元々は普通の公共施設な感じの造りで、畳を敷く前はよくあるテーブルなんかが置かれていたそうです。そこに野々下さんから「畳があるんだけど」と提案があり、福田さんが「じゃ敷こう」ということでできたのが「四畳半cafe」。こういう所が、このまちセンでは徹底されていて、「完成されたものを提供しない」というスタンスで、あえて「不便」にすることで、利用する市民が創意工夫をしたりする余地が生まれ、参加し、楽しめるようになるのだと。そして、不完全を前提にして運営することで、クレームも出ないと。そして、まちセンは市民活動の「エンジンルーム」では無く、「プラットフォーム」なんだと、いうお話でした。この四畳半には不思議な魅力があり、また魔力もあるのか、靴を脱いで、座布団の上で胡坐をかいてお話を伺っていると、リラックスできて、あちこちに議論が拡散しながらも、興味深いお話を伺うことができました。

市の覚悟、市民の覚悟

延岡市での駅周辺整備事業は、新生延岡プロジェクトの中に位置づけられています。今回の目的である「駅まち市民ワークショップ」という参加型で市民意見を構想に反映する取り組みとともに、「駅まち会議」という鉄道事業者や建築家、学識経験者や地域で公共活動を行っている団体などが参加しての議論なども行われてきました。

今回ワークショップについて伺った中での大きなポイントの1つが、延岡市が市民に対して、駅前のあり方を白紙で委ねたということです。駅舎のデザインも白紙。利活用のあり方も白紙。青写真を提示する事無く、0から市民のワークショップに任せたというのです。行政側が描いた駅舎デザインに基づいて、それをどう修正するかとか、そのデザインに基づいて、どう利用するのか、という話ではなく、全くの白紙から。ワークショップから表出してくる市民の意見、こんな駅舎が良いとか、こんな活動をしたいとか、そういった意見を可能な限り取り入れて、建築家が設計図を起こす。延岡市には市民に委ねる覚悟が、市民にはそれを受け止めて議論する覚悟があったといいます。

そして、ワークショップの前に、十分に手間をかけていること

延岡市の「駅まち市民ワークショップ」と「駅まち会議」には、コミュニティデザイナーの山崎亮さんが関わっています。山崎さんは、ワークショップを始める前に、50以上の市民活動グループと面談を行ったそうです。どんな人が、どんな活動をしているのか。それぞれの活動内容や考えを知り、信頼関係を築いていく事が、ワークショップを成功させるために重要だということです。また、この市民活動グループが、最終的には駅舎や駅前広場を利用した、市民活動の担い手になっていく方々でもあります。ワークショップを、ただの意見交換の場で終わらせるのではなく、その先にある利用段階まで描いて、準備がされてきたことがわかります。

全部で5回行われたワークショップですが、毎回開催する前にはコアメンバー(商店会、建築士会、まちセンスタッフ、県職員(たまたま)など)で集まって、次の回のワークショップについて、どこまで議論を進展させるかなど、綿密な打ち合わせを行ってきたそうです。また、コアメンバーは、各テーブルに配置され、テーブル毎のファシリテーターとして活躍したそうです。

参加者の募集は、市の広報やWebなど、特に普段と違った方法はとらなかったそうです。それでも、第1回目のワークショップには120名が参加。その後も最後の5回目まで、70~80名の方が参加されたということです。しかも、皆勤賞が約半分。皆勤賞じゃなかった方も、3~4回参加した方が非常に多かったそうです。その背景には、「延岡市民協働まちづくりセンター」の取組みがあるといいます。まちセンで活動・利用する団体や人々が、延岡市の駅まちワークショップを口コミで広げる。その結果、高校生から80代の方まで幅広い年代の、団体に所属している人も、していない個人も、多様な方がワークショップに参加されたということでした。

また中には、山崎さん目当てで参加する方、もしくは参加して山崎さんのファンになって何度も来るようになる方もいらっしゃったそうです。福田さんたちからは、「山崎さんは天才だ」という声もありました。どんな意見を言っても、笑顔でしっかり聞いて、肯定してくれると。それで皆ファンになるんだ、と。私もワークショップなどに参加してきましたが、ファシリテーターが重要だという指摘は、その通りだと思います。ファシリテーターがうまく意見を引き出したり、方向を修正したり、議論を活性化させたりできるかどうかで、表現される意見も大幅に変わると思います。

横浜市の覚悟は

さて、横浜市。これまで何度も、横浜市のパブリックコメントに関する課題を指摘してきました(集まる件数が平均130件しかない)。市民の声を集めるといいながら、ほとんど集められていない一方で、計画の策定はその声を反映したという形で行われていく。今回の「次世代郊外まちづくり」の取組みは、市民の、住民の声をいかに表出させて、集めて、地域の施策に反映できるかどうかが、問われています。これからワークショップが始まるのに、3月末には構想が出来上がる予定。練り上げるための時間は、実質的には半年程度でしょう。延岡の駅周辺整備は、ワークショップも含めて、3~4年かけて今に至っているといいます。どうなっていくか、十分注目をしていきます。

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