水都大阪の取組みと、水辺に係る規制との向き合い方。

2012-10-17 12:14:12 | カテゴリ:活動報告


10月15日、「水都大阪2012」の取組みについて、視察を行ってきました。

水都大阪は、水と光をテーマにし、行政単独ではなく、経済界と、市民とが協働で事業を行っています。大阪は江戸時代より経済の中心地として栄え、運河を利用して船による物流や人の移動の結節点の役割を担ってきました。しかしながら近年の経済状況の悪化から大阪も大きな影響を受け、東京への企業の流出などから、法人税収はピーク時の3分の1まで減少しているといいます。そうした環境下で、「大阪をなんとかしなくては」という強い危機感から、たこ焼きや阪神タイガースだけではない、大阪の新しい魅力を、価値を創造し、多くの人に大阪に来てもらおう、経済を活性化しようという取組が、水都大阪です。

今回の視察ではまず、実行委員会の事務局長と、大阪府治水事務所の担当者から、ヒアリングを行いました。これまでの取組みの概要などを伺いましたが、何よりも大事だなと思ったのが、危機感の共有と、そこを基点にした前向きな意識です。

一般的に、河川や海の親水域の活用は、法律に基づく複雑な管理体制から、高い困難性を伴います。大阪ももちろん同じ法律でのもと運営しているわけですが、「できない理由」を並べて行くのではなく、「どうしたら可能か」を考え抜くことで、少しずつ前進させてきたと言います。例えば堤防。今回ヒアリングをさせて頂いたのが、治水事務所の方であった通り、もともと河川は「治水」という発想、つまり氾濫などの恐れがある河川を治めるという発想です。そのため、氾濫を防ぐための堤防の上で、店舗が営業するなど言語道断なこと。でも、堤防の上を店舗にできれば、堤防の上を活用できれば、もっと大阪を魅力的にできて、楽しめるようになる。そういった目的意識を強力に持ち、法律を守り、その枠の中でできる事を探し、関係者と調整を行い、実現させています。

堤防の上に設けられた川床

橋から見た川床

船着き場が設けられている場所も。

事務局長は民間企業出身でした。その事務局長からみて、大阪府と大阪市が、非常に前向きに取組んでいるといいます。知事や市長の強力に後押しされた行政職員も、なんとかしたいという意欲と責任感を持ち、リスクを理解し、そのリスクを覚悟した上で、ギリギリまで調整をしていると言います。例えば、中之島公園の取組み。中之島公園は河川に挟まれた中州です。河川が氾濫すれば水浸しになる、リスクのある場所です。でも、その公園で数々のプログラムを行ったり、アート作品を設置したりする。更に、普通は「占有」ができない公園に、常設のレストランまで建設し、そこのテラスも親水域の活用の一環で、テラス席が川にせり出していたりする。その結果、平日の昼間でも沢山のお客さんが居たり、近所のお母さん達が子どもを遊ばせていたり、高齢者の方々が散歩していたり、カップルがじゃれ合っていたり。リスクがあると言っても20年間中之島公園は浸水しておらず、近年上流には水門もできて、より氾濫しづらく危険性が減少している状況を踏まえて取組んでいるわけです。

ワークショップなどが行われている中之島公園

木の鍵盤に玉を転がすと音楽を奏でられるアート作品

格子状のシートの上には

オセロの盤が置かれています。

公園内のレストラン

レストランのテラス席は河川に面し、バーベキューを楽しめます。

また、公園には空気で膨らませた大きなコケシがあります。このコケシの設置も、「付近を通る高速道路から見えて、交通事故を引き起こす」という理由から警察に反対されたそうです。そこで、その高速道路に車を走らせ、車中からビデオを撮り、運転手からは見えないことを証明して、設置に至ったそうです。反対されたり、できないと言われても、徹底的に調べて、どうしたら実現できるかを考え、実行していく。

巨大コケシ

水都大阪の特徴は、民間の意欲が強いということです。そして行政側も、地域や市民の参加を主軸においています。そのため水都大阪の構想の中でも、シビックプライド(都市に対する住民の誇りや愛着)を向上させる事が、水都の将来像として1番目に描かれています。また水辺の利用は、もともとは市民活動から始まっていると言います。中之島公園の中には、青い揃いのTシャツを着たボランティアの方々が、案内からゴミ拾いまで、沢山参加されていました。公園内でのワークショップなども、民間の方々の取り組みです。水都大阪は公民協働ですが、1100年の伝統を誇る「天神祭」(集客100万人)や、「なにわ淀川花火大会」(同50万人)は、民間主導で行政の分担金が無いイベントです。また2009年からスタートした「平成のOSAKA天の川伝説」(同2万人)も民間主導で、川に放流されるLEDを光源とした青く光る「いのり星」は、パナソニックが5万個を提供していると言います。この「いのり星」を放流する行為も、最初から5万個ではなく、最初は少しで初めて、毎年毎年数を増やして、規模を大きくしてきたそうです。行政が整備し、民間が活用、表現をする。こういう協働の取組も、過去に行政主体で失敗した反省が活かされています。

ボランティアで水都大阪を支える方々

全国的に水辺の活用は、まだまだ取組みが進んでいません。横浜もこれからです。そこには、治水や公園、港湾などに係る、様々な規制が重なり合って、調整が非常に難しいという課題があります。水都大阪の取組みは、それでも大阪をもっと魅力ある都市にして、市民が大阪を誇りに思い、沢山の観光客が訪れ、経済を活性化させようと、時間と手間をかけながら、一歩一歩前進させている取組みでした。今回の「水都大阪フェス2012」でも社会実験がいくつか行われていますが、最初から規制を変えさせるのではなく、最初から大きく何かをしようとするのではなく、関係者と調整し、小さくトライアルを重ね、実績を見せ理解してもらい、少しずつ大きくしていく、というプロセスが繰り返し行われ、それによって一般的には実現不可能な、公園内での常設レストランや堤防の上に照らす席を設けたりすることに成功していました。

社会実験として、橋の上がカフェに。

北新地ガーデンブリッジカフェ、という社会実験です。

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