「大地の芸術祭」越後妻有トリエンナーレ。視察報告。

2016-07-22 23:43:36 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

7月20日より、横浜市会の常任委員会「市民・文化観光・消防委員会」の視察を行いました。初日は新潟県十日町市を訪れ、「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」について、ヒアリングと、実際の展示会場を訪れました。

大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ

大地の芸術祭は、2000年の第1回目から3年毎に開催され、2015年に6回目が開催されました。元々は越後妻有エリアの1市4町1村の地域活性化を、現代アートをキラーコンテンツに据えて実現しようと、当時の県知事が決断を下し、スタートしたアートイベントです。現在は市町村合併があり、十日町市と津南町が越後妻有エリアとなっています。

2000年の第1回目から、約16万人もの入込客数があり、2015年の6回目では約51万人もの入込客数となっています。横浜トリエンナーレ2014の総来場者数が約21万人でしたので、およそ2.5倍もの方が、越後妻有を訪れていることになります。新幹線の越後湯沢駅から、車で1時間程度の場所が会場になっていることを考えると、凄いことです。一方で全作品を鑑賞できる3,500円のパスポートの販売は、およそ6万3千枚となっています。51万人と大きな差がありますが、芸術祭全体に参加する方よりも、特定の人気作品だけを個別鑑賞券で入場する来訪者が多いという状況が在り、そういうケースは数百円の参加費で終わってしまうことが1つの課題となっています。

入込客数は毎回増加していて、1回目の16万人から、2回目約20万人、3回目約35万人、4回目約38万人、5回目約49万人となっています。参加者の年代は若く、10代8.6%、20代27.2%、30代27.1%と、30代まででおよそ3分の2を占めます(40代16.1%、50代以上21.0%)。性別比率では、男性35%、女性65%となり、30代までの女性に支持されていることが分かります。来訪地域は新潟県内が約30%であるものの、県外からは約65%、海外からは5%と伺いました。県外の大半は関東方面からとうことです。十日町市内には宿泊施設が限られているので、大地の芸術祭の泊まりでいらっしゃる方は越後湯沢辺りに泊まることが多いそうで、地域経済によりプラスになるような取組が課題とのことでした。また、外国からの観光客が増加する一方、外国語対応が進んでおらず、地域の商業関係者も積極的でない雰囲気があり、課題となっていました。

第1回目の開催の時には、現代アートのイベントを行うことに地域住民の理解を得られず、越後妻有エリアの自治体の反対にあい、1999年開催予定を1年遅らせて、2000年の開催になったと言います。総合ディレクターの北川フラム氏らの2000回を超える説明会の実施と粘り強い説得により、28集落の参加が得られ、146作品の展示となりました。その後は、第2回目38集落、第3回目67集落、第4回目92集落、第5回目102集落、第6回目110集落と、着実に理解を得て、参加集落が増えてきています。こうした住民の理解や参加を促進した1つの要因には、「こへび隊」というサポーターの力があります。東京周辺の美大生をはじめとして、様々な地域から若者も多く集まり、芸術祭の運営や作品の制作にあたります。地域住民と「よそ者」が交流することで、地域に新たな化学反応が起きたといいます。「こへび隊」として芸術祭に関わったことで十日町市に移住したり、十日町市の人と結婚したという人も何組かあるそうです。また会期中には地域住民によって来場者へのおもてなしが行われ、食べ物や飲み物などが振る舞われます。このおもてなしによる交流が、来場者にはイベントの魅力になり、地域住民にとっても楽しみになっています。

里山現代美術館「キナーレ」

座学のあとは、大地の芸術祭の会場を拝見させていただきました。メイン会場のキナーレは、原広司氏設計の越後妻有交流館(2003年竣工)を第5回2012年の芸術祭を機にリニューアルしたものです。これまで大地の芸術祭は3年毎の開催でしたが、エリア内には常設の展示作品も増えてきて、そうした作品群を活かすために、2016年からは「大地の芸術祭の里」として、春夏秋冬の4期に分けて企画が行われるようになっていました。私達が訪れた段階では、8月6日〜21日の夏の企画展の準備中となっていました。

キナーレ

うぶすなの家

うぶすなの家は、市街地から車で30分ほどかかる山の中にあります。1924年地区の茅葺き民家が、2004年の中越地震後空き家になったものを、福武財団が取得し、NPO法人越後妻有里山協働機構が管理運営しています。建築当初の状態に戻しつつ、国内の陶芸作家の手による陶器を使った、かまど、洗面台、風呂などが置かれ、2006年の第3回目から芸術祭の作品として、公開されるようになっています。開館期間中は、地元で採れた野菜や「棚田米」を使ったランチを頂くこともできますし、今年の春からは1日1組限定で宿泊も可能となっています。1人1泊25,000円と少々値が張りますが、外国からの予約も入っているそうです。

うぶすなの家

うぶすなの家

うぶすなの家

うぶすなの家

絵本と木の実の美術館

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」は、2005年に廃校となった「真田小学校」を美術館にしたもの。「絵本と」とあるように、展示されている作品は、実際の最後の在校生3名を主人公に、学校に住みつくオバケと繰り広げる物語である、絵本『学校はカラッポにならない』が表現された、「体験型の”空間絵本”美術館」となっています。

絵本と木の実の美術館

絵本と木の実の美術館

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