2026年8月18日、札幌市東部児童相談所を訪問しました。施設概要の説明、館内見学、質疑応答という流れで、児童相談所の業務実態と一時保護所の運営について理解を深める機会となりました。
東部児童相談所の開設経緯
札幌市の児童相談所は、政令指定都市に移行した昭和47年に北海道から独立する形で開設されました。当初の1所体制から、平成5年に庁舎を建て替えて中央区に移転。そして2025年9月22日、市内10行政区のうち白石・豊平・清田・厚別の4区を担当エリアとして切り出す形で、2所目となる東部児童相談所が新設されました。視察時点でちょうど開設から11か月ほどが経過していました。
開設以来「専門性の向上」と「地域との連携」の2点を重視して運営してきたといいます。管轄区域内にある5つの福祉系学部を持つ大学との連携を進めており、一時保護所の補助職員として現在56人の学生を受け入れているとのことです。24時間365日体制の一時保護所は多くの部分を人手に頼っており、学生の協力なしには成り立たない状況にあるといいます。地域で福祉を学んだ学生が実習を通じて経験を積み、将来的に職員として戻ってくるという好循環を目指しているとの説明がありました。
相談内容の内訳と推移
児童相談所が扱う相談は、養護相談・障害相談・育成相談・非行相談・保健相談の5類型に分けられます。全国的な傾向として養護相談(虐待関連を含む)が全体の6割弱を占め、東部児童相談所でも同様の傾向が見られます。説明担当者によれば、担当者ご自身が20代の一般職員だった十数年前は障害相談が5割を超え、養護相談の比率はそれほど高くなかったとのことです。当時年間3,000件程度だった相談件数は、現在では7,000~8,000件規模まで増加しており、その増加分の大半が養護相談によるものだといいます。障害相談は療育手帳交付に必要な知能検査を児童相談所でしか実施できない制度上の理由もあり、一定の比率で推移しています。
札幌市全体の相談受理件数は令和6年度で8,603件。東部児童相談所単独では約32%(2,748件)を占め、残りは中央区にあるもう一方の児童相談所が扱っているとのことでした。
虐待相談の実態
虐待相談の内訳では、心理的虐待が全体の約5割を占めています。これは、いわゆる面前DV(夫婦間の激しい言い争いなどを子どもが目撃するケース)が警察に認知された場合、機械的に心理的虐待としてカウントされる制度上の扱いによるところが大きく、こうしたケースは単発の指導で終わることも多いとの説明でした。一方で、対応に苦慮するのはネグレクト(親の障害等により養育が行き届かないケース)、身体的虐待、性的虐待であり、これらのケースへの対応が現場の負担となっているとのことです。
初動対応については「緊急対応課」が専門に担い、通告受理から48時間以内に安全確認を行う体制を整備しているとのことでした。また、援助方針の決定は職員個人の判断に委ねず、所長を含めた全体会議で決定する運用を徹底しており、判断の適正化と職員個人への負担集中の回避を両立させているとの説明がありました。
一時保護所の概要:ユニット型の導入
一時保護所の定員は36名(男子棟18名・女子棟18名(幼児6名含む))です。最大の特徴は、定員6名単位の「ユニット型ケア」を採用している点です。リビング・個室6室・浴室・トイレを備えた居住空間を1ユニットとし、複数人が同室で過ごす旧来の相部屋方式とは異なり、子ども一人ひとりのプライバシーが確保される設計になっています。担当者からは、ユニット型導入後、子どもが手に負えないほど荒れる事態は発生していないとの説明があり、個室という「逃げ場」があること、家庭的な雰囲気が子どもの心理的安定に寄与しているとの見解が示されました。
特徴的な3つの設備
東部児童相談所の特徴として、3つの設備が挙げられました。
1つ目は「親子支援ルーム」です。マジックミラー越しに職員が観察できる構造になっており、明るい側の部屋で親子に遊んでもらいながら、保護者にイヤホンを通じて具体的な関わり方を助言する仕組みです。虐待をしてしまう保護者自身が虐待の連鎖の中で育ち、どのように子どもと接していいか分からないケースが多いことを踏まえた取り組みとのことでした。
2つ目は「司法面接室」です。性的虐待などの事案では、児童相談所・警察・検察の三機関がそれぞれ子どもから聴取を行いたいという事情があります。しかし子どもに何度も同じ話をさせる負担を避けるため、三機関の代表者一名が同席し、他の機関はモニター越しにイヤホンで聴取内容を確認しながら追加質問を依頼する形で、一度の面接で聴取を完結させることを目的とした部屋です。なお、実際の運用では検察の施設が使われることが多く、この部屋自体の使用実績はまだないとのことでした。
3つ目は「箱庭室」です。児童心理司が砂場とミニチュア玩具を用いて子どもの心理状態を把握し、心理治療にもつなげる目的で使用されています。
このほか、心理検査専用室(防音・クッションフロア仕様)、医務室(小児科・児童精神科で部屋を分離)、プレイルーム、体育館なども見学しました。
一時保護中の学習支援
一時保護中の学習支援については、一時保護所からの通学が原則できないため、法律上配置が義務付けられている学習支援員(教員資格を持つ非常勤職員、校長経験者等)が学習指導にあたっているものの、小学1年生から18歳までの子どもを対象とした一斉授業には限界があり、自宅での学習環境と比較して十分なフォローができていない点は課題として認識されているとのことでした。一時保護期間は児童福祉法では原則60日以内とされ、札幌市では行動観察は1ヶ月程度で終わらせることになっています。1ヶ月を超えて家庭に戻れないような長期化する場合は、「一時保護委託」に切り替え、子どもの通っている校区に近い児童養護施設等へ委託し、そこから通学できるようにしているという工夫がありました。
横浜市でも一時保護機関の長期化が問題になっています。一部の子どもは学校に通うことができていますが、子どもたちの学習機会を保障することは大きな課題です。職員の方は3月に川崎市や横浜市の一時保護所の視察に行かれたそうですが、札幌市との違いは児童養護施設やファミリーホーム、自立援助ホームなどの社会資源が札幌市は豊富で、首都圏は少なすぎるという課題が指摘されました。札幌市の一時保護所が定員に達することがほとんど無いのは委託ができるためであり、委託ができない首都圏では、一時保護所から学校に通わせるという発想にならざるを得ない、という指摘は大変重要な指摘でした。
司法面接室
箱庭室
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