体感−7℃。神戸市はスマートシェードと木陰で暑熱対策。

2026-08-23 01:03:41 | カテゴリ:活動報告


神戸市スマートシェード
2026年8月21日、神戸市が進める暑さ対策「スマートシェード」と「こうべ木陰プロジェクト」の取り組みについて視察を行いました。神戸市建設局の担当者から会議室で説明を受けた後、実際に三宮周辺の設置現場を拝見しました。

横浜市も神戸市同様、港町としての歴史をもち、観光客の集まる都市です。来年には「GREEN×EXPO2027」を控えるなか、住民や来街者のための暑さ対策は課題だと考えています。そうした中で、神戸市が日陰づくりの政策で先行しているため、今回視察にお邪魔しました。

実証実験からの改良の経緯

神戸市がスマートシェードに取り組み始めたのは2024年度からです。建設局が持つ「共同研究制度」を活用し、日除けを一緒に考えてくれる企業を公募したところ2社が応募し、継続して取り組むことになったのが東京に本社を置くBXテンパル社(文化シヤッターのグループ会社)でした。

神戸スマートシェード

(出典:市長定例会見2026年6月11日資料)

2024年度の1号機は、イベント用の日除けをカスタマイズして作られたものでした。2m×2mの4本足で、コンクリートの重しを道路上に置くだけの簡易な設置方法でした。上部のシェードは手動での開閉です。しかし2m四方という大きさでは、影の中に自ら入り込まなければならない圧迫感があるうえ、太陽の動きに合わせて影の位置がずれてしまいます。設置コンクリートの重しにはベンチを設置したものの、真上に影が来る時間が非常に短いという課題がありました。また台風接近時には手動で撤去に行かなければならず、その手間も大きな負担だったといいます。同時に試みた一人掛けのベンチ一体型日除けも、ベンチ上に日陰ができる時間は限定できであり、台風のたびに職員が撤収に行かなければならないという課題があったそうです。

これらの課題を解決するため、2025年度モデルでは大幅な改良が加えられています。構造は2本脚へと刷新され、横幅6m、奥行きは両側に2mずつ伸びることで、最大6m×4mの広大な日陰を創出できるようになりました。あわせて、日照センサーと風速センサーが設置され、照度20,000lux以上で自動で開き、未満で閉じ、風速10m/sが3秒以上の場合にも自動で閉じるようになっています。緊急時に備えてタブレットでの遠隔操作も可能にし、万が一の場合には職員が現地に行かなくても閉じられるようにし、状況確認のためのカメラも搭載され、機能が大幅に強化されました。照度20,000lux以上だと、朝の8時頃には開くそうです。

神戸市スマートシェード

会議室からカメラの映像をタブレットで確認

幅を6mとしたのは、横断歩道の幅をすっぽり覆うことで、信号待ちの間に日陰を使って欲しいという目的が、誰の目にも分かりやすくなるという狙いがあるとのことでした。設置基礎は当初の据え置き型から地中埋設型に変更されましたが、地下には電気・ガス・水道が縦横に走っているため、これらを避けて1立方メートル程度の2本のコンクリート基礎を6m間隔で正確に設置できる場所を見つけることが非常に難しく、都心部では設置したい場所に必ずしも設置できないという新たな課題も見えてきたそうです。

昨年9月に設置された1台は、設置直後の10月の時点ですでに多くの方に利用されている様子が写真からも確認できました。この2025年度モデルの開発にあたっては、神戸市とBXテンパル社が費用を分担する「負担金」という形が取られ、折半ではなく物品費・工事費相当を神戸市が多く負担する形で、神戸市の負担額は800万円程度だったとのことです。事業者側にとっても、共同研究という形で実績を積み、他都市へ展開していく足がかりになるというメリットがあるという説明でした。

2026年度モデルは機能を絞ってコンパクトに

2026年度は7月から順次拡大を進めており、今年度中に9基程度の設置を予定しています(視察時点では設置途上)。ただし今年度のモデルは、昨年度の反省を踏まえて機能を大胆に絞り込み、1本足で幅3m×奥行き4m(片側2m×2)とひと回りコンパクトにしたうえで、遠隔操作機能とカメラを取りやめ、日照と風速による自動開閉のみとしています。ソーラーパネルとバッテリーが搭載され、スタンドアロン型の設置が可能となっています。現場でのリモコン操作は可能で、手動でも開閉でき、センサーの故障などの緊急時には市の職員が現地に向かって対応するとのことでした。設置エリアはほぼ中央区に集中しており(例外は妙法寺の佐野公園のみ)、対応できる職員体制の面からも、今後さらに基数が増えていった場合には別のやり方を検討する必要があるという課題認識も示されました。
価格については、設置費込みで1台あたり400万円弱、設置費を除くと300万円程度とのことでした。まだ量産段階ではないため、今後さらにコストが下がる余地があるとの見立てでした。耐用年数は機能面でおおむね10年程度、生地の日焼けについても5年程度では大きな色の変化は見られないと聞いているとのことです。なお冬場(12月頃から3月頃まで)はそもそも電源を落として、閉じたまま稼働させないとのことでした。

神戸市スマートシェード

磯上公園内の2026年モデル

このほかラインナップ多様化の一環として、三宮の歩行者空間を拡幅したエリア(カフェが集積するエリア)には、韓国製のパラソル型シェード(手動)を新たに2基導入する予定です。このモデルは、柱が中心ではなく片側に寄ったオフセットタイプで、金額は1基150万〜200万円程度と、既存のシェードの半額以下に抑えられる見込みです。ただし道路付属物として必要な安全基準を満たそうとすると、地中の基礎の大きさ自体は変わらないとの説明でした。

設置場所の考え方と木陰プロジェクトとの役割分担

設置場所を選定する考え方としては、①建物の陰になりにくく1日を通して日差しから逃げ場のない場所、②横断歩道が広く信号待ちの時間が長い場所、③人通りの多い場所、を優先しているとのことでした。また三宮駅からウォーターフロント側(再開発が進む海側エリア)へと人の回遊をつなぐ動線を意識した配置も検討しているといいます。一方で、住民の理解形成には時間がかかっており、「日除けよりも木の方がいい」という声もあり、必ずしも希望する場所に自由に設置できる状況ではないとの率直な説明もありました。

木陰プロジェクトとスマートシェードの役割分担については、当初は植樹が難しい場所にスマートシェードを、という住み分けを想定していたものの、実際には地中埋設物の関係でスマートシェードの基礎確保自体が難しい場所も多く、明確な住み分けには至っていないとのことでした。初期費用はスマートシェードの方が高い一方、灌水や施肥、落ち葉対応など植樹に伴う維持管理コストを含めたトータルで考えると、シェードの方が安く済む可能性があるとの見解も示されました。現状は「設置できる場所に設置している」段階であり、最適な配置や効果検証はまだ実証実験の延長線上にあるとの認識が共有されました。

そもそも神戸市の暑さ対策は、市長の発信を起点に始まったもので、日陰づくりが最も効果的だという環境省の知見も踏まえて木陰プロジェクトとスマートシェードの双方が進められてきたとのことです。市長会見でも取り上げられ、コンビニや薬局など地域の店舗が涼めるスペースを提供する「クールシェア」的な取り組みも合わせて展開されています。

体感温度−7℃「こうべ木陰プロジェクト」

こうべ木陰プロジェクト

(出典:市長定例会見2026年6月11日資料)

神戸市の暑熱対策、日陰を増やす取り組みとしてもう1つ注目しているのが、「こうべ木陰プロジェクト」です。今回の視察では、公園部の担当者と予定が合わず直接お話を伺えませんでしたので、紙面でのやり取りを行いました。中心市街地である三宮周辺において、シンボル的に取り組まれている事業で、歩行者滞留の多い交差点や、通行料の多い路線において、新植・移植・樹幹拡大のための土壌改良が実施されています。

2023年度から始まっていて、新植直後の樹木は大きな木陰を提供できないため、ある程度成長した樹木を用意するために、六甲山の木を移植しています。「六甲山」からとされたのは、移動距離が短く気候風土も似通っているため、樹木への負担を減らすことができるという観点です。樹木の種類については、植樹する場所にある樹木と同一のものにしているのが基本ですが、一部では大きな木陰を創出しやすい、ケヤキ類を選定しているそうです。木陰設置場所は神戸国際会館前、磯上公園など、三宮・元町周辺に対象を絞り、将来的に「木陰の回廊」としてつなげていく、面ではなく線・拠点を意識した整備計画になっています。
こうべ木陰プロジェクト

(出典:市長定例会見2026年6月11日資料)

木陰は体感温度を7℃下げる効果があるとされています。これまで私は横浜市の街路樹も、木陰を増やす視点での整備を提案してきましたが、横浜市も夏の暑さが厳しくなる一方という状況において、街路樹の樹冠による木陰の形成を暑熱対策として進めることは重要な視点です。神戸市においては、木陰プロジェクトの具体的な数値目標はないものの、今後も木陰プロジェクトをはじめとして、高温常態化対策を進めていくということでした。今回、三宮駅から市役所へ向かう際の信号待ちで、たまたま入った日陰が木陰プロジェクトの日陰で、木陰のありがたさを実感する視察でした。

所感

神戸市が実証実験を重ねながら、機能とコストのバランスを見極め、段階的に改良を進めてきたプロセスが素晴らしいと感じました。2024年度モデルの課題を踏まえて2025年度に機能を強化し、その結果を踏まえて2026年度にはあえて機能を絞り込みコンパクト化・低コスト化するという判断は、限られた予算の中で効果的に展開を図ろうとする姿勢の表れだと感じます。一方で2025年の多機能モデルは高コストであり、結果的に1台で終わっていますが、「何をしたいのか」を説明するには絶大なプレゼンテーション力のある1台になっているとも感じました。横浜市においても暑さが厳しい夏を市民や、来街者が過ごしているなかで、日陰、木陰を設ける対策が必要だと考えています。場所や予算など課題もありますが、道路や公園等まちなかでの日陰づくりは重要な施策です。

神戸市スマートシェード

タブレットを使って、片側を閉じてもらっている様子

神戸市スマートシェード

パラソル型シェード設置予定箇所(黒いアスファルト部分)

神戸市スマートシェード

磯上公園内にはスマートシェードも木陰も両方設置

こうべ木陰プロジェクト

こうべ木陰プロジェクトの樹木にはプレートが設置

神戸市スマートシェード

屋根上にソーラーパネルが見えます

ペルチェベンチ

磯上公園内のペルチェベンチと電源となるソーラーパネル

神戸市磯上公園

磯上公園は2024年にリニューアルしたばかり

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