横浜市新市庁舎整備計画について、反対討論を行いました。

2014-09-18 17:56:29 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

本日(9月18日)横浜市会第3回定例会本会議が開催されました。今日の本会議では、今定例会に上程されている議案や請願の採決等が行われました。

今定例会で上程されていた議案のうち、市第58号議案「市の事務所の位置に関する条例の一部改正」は、新市庁舎の整備に関して、その場所の移転を条例で定めるもので、3分の2以上の特別多数の同意を要する議案となる重要案件です。この条例が可決されると、「北仲通南地区」への移転が決定し、北仲通南地区での整備計画が次のステップに移る事になります。この「北仲通南地区」での整備は、示されてきた中で最も高コストな整備方法です。私たちの会派メンバーは、現市庁舎が抱える課題については十分に認識していますが、費用の問題や、市民の意見が反映されない問題、まちづくりの問題や、長期的な市政運営に対する視野の問題などを論点に、より市民負担が少なく済む方法や、市民が参画できるプロセスを入れる事などを求めてきました。しかしながら、低コストな案として建設費が200億円以上削減できる方法も既に示されてきていたにも関わらず、最も高コストな計画が、市民不在のもと選択されてきました。財源は、市民の税金です。

また市長は、元々の整備スケジュールを2020年の東京オリンピックに間に合わせるために、前倒しを行いました。ご存知の通り、現在大型公共工事ラッシュにより、深刻な人手不足に、建築コストの高騰という問題も起きています。総事業費1250億円にものぼると見込まれている新市庁舎整備を、この一番高く付く時期に実施する事は、市民負担の更なる増加も容易に予想され、非合理です。既に他の自治体によっては、事業費の大幅上昇により、事業開始をオリンピック以降に延期したり、場合によっては事業を断念している例も出ています。

長期的に見れば、地方分権も進みますし、横浜市に於いては市から区への権限委譲の議論も行われてきています。より住民自治を機能させて行くためには、区や地域への権限、財源などの移譲が必要です。そうすれば、市役所の本庁舎よりも、区庁舎の重要性が高まります。人口減少時代においては、市民の数も、職員の数も減少する事が予測されます。働き方や、生活のあり方なども変化しはじめ、長時間労働の見直し、テレワークなどの住まいでの就労や、住まいに近い場所での就労なども促進されていきます。

上述のような問題意識から今回上程された市第58号議案と、関連する市第46号議案に反対し、反対の立場から討論を行いました。討論の全文は以下に記載しています。採決におきましては、賛成66名、反対20名ということで、可決されました。

<2014年9月18日 横浜市会第3回定例会本会議 反対討論原稿全文>

 「横浜の未来を結ぶ会」の藤崎浩太郎です。会派を代表し、市第46号議案「横浜市市庁舎移転新築工事技術提案等評価委員会条例の制定」および市第58号議案「市の事務所の位置に関する条例の一部改正」に対し、「反対」の立場から討論いたします。

 冒頭にまず申し上げますが、本議案は市庁舎の位置を変更しようとするものでありますので、現市庁舎の抱える課題解決の手段として「北仲通南地区への新築・移転が最適なのか」ということが論点であります。そのため、おもてなしであるとか、プレゼンテーションルームが必要だとか、市民広場が寒いからというようなことから、新築・移転が必要だとするのは、あまりにも論理が飛躍しており、何の説明にもなっておりません。

 ここで市民に説明し、理解を得るべきは、「なぜ、課題解決の手段として、現時点の見込みでも、30年間での総事業費1250億円と、他の地区に整備するよりも遥かにコストがかかる場所に、全国で建設費が大幅に高騰することが避けられない、このオリンピック直前の時期に、建てようとするのか」ということです。本事業の事業費は、ほぼ全てが市民の納める税金を財源としており、横浜市民である限り、数十年にわたりその負担を余儀なくされるものです。私たちは、費用を圧縮するためにも、これまで、あらゆる手法、選択肢を検討するべきであると、繰り返し、繰り返し、お願いしてきましたが、結局、それらが表に出てくることはありませんでした。

 また現在、全国において復興事業や、東京オリンピックに向けた施設整備など、大型の公共工事ラッシュが続いている事による、深刻な人手不足と、大幅なコスト高騰が問題になっており、各自治体においても入札の不調が相次ぐなど、事業費の大幅増のみならず、事業そのものを延期・断念せざるをえない例が多く出ています。

 直近では、千葉県木更津市において、かねてより計画をされていた新市庁舎の整備事業費が110億円から150億円に膨れ上がる見込みとなったことから、事業開始をオリンピック後に延期するという判断がなされました。また、近い地域でも例えば、県の総合リハビリテーションセンターの工事入札において、2度にわたる入札不調から、当初より想定事業費を4割近く上げて、再入札が行われるといった状況が報じられております。

 本市の新市庁舎建設の規模はそれらの5倍以上です。当然、そのリスクも5倍以上になります。市長や市当局の言われる早期整備によるメリットは、そうした数百億円に及ぶとも知れない、巨額の負担に見合った物と言えるでしょうか。そして、そうしたリスクを負い、ツケを払わされるのは、常に市民です。

 過去にも、本市では、事業推進にあたっての現実的な検討がなされず、多くの心配の声をよそに、いきおい楽観論に流れた結果、多額の赤字を出してしまったことがあります。しかし、その際にも結局、「責任の所在はさまざま」という理屈のもとに、市民の税金によってのみ赤字が補填されることとなったのは記憶に新しいところです。

 それから数年で、市長はまた「いつか来た道」を進もうとされています。口先でいくらリスクを取ると言われても、市長お一人で責任を取れるような事業ではありません。

 また、現時点で市民の理解がほとんど進んでいない上、スケジュールの前倒しによる非常にタイトな行程であるが故に、今後も市民の意見を取り入れる猶予がない計画になっているということも、きわめて重要な問題です。

 市庁舎は市の中心施設であり、市民のものです。法によらずとも、最大限、市民の理解を得るようにすることは、市の根本的な責務であり、本計画における市長および市の対応には、そうした姿勢が欠けていると言わざるをえません。
 
 また、市民が、市庁舎の構想、計画に関与することは、合意形成を促進するのみならず、市民が市政、庁舎に愛着を持つためにも、きわめて有効であると考えます。

 いずれにせよ、こうした状況化でいま、強行に市庁舎を移転・新築することに合理性はみられません。市長および議員の皆さまにおかれましては、市の最重要事業の一つを、このような状況で進めてしまう事が、いかに多大なリスクを市民に負わせる事になるか、いま一度お考えいただき、思いとどまっていただけることをお願いしまして、討論を終わります。

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