まちじゅうの下水管を熱源に。仙台市、宮城県視察報告。

2015-07-17 16:35:46 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

所属する常任委員会「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察2日目は、仙台市と宮城県を訪れました。

仙台市における下水熱利用実証事業

仙台市では、「管路内設置型下水熱利用システム」という実証研究が行われています。これは、下水の熱を回収(利用)して、給湯システムの熱源にしようというものです。積水化学が開発した技術を用い、仙台市と積水化学が共同で研究をしています。

この取組では、下水道の耐震化や長寿命化の工事の際に、管路に熱回収機能を付加するという技術が用いられています。下水の温度は年間を通じて安定していて、夏は25℃程度、冬でも15℃程度。下水管に設置された熱回収管が下水の熱を回収し、ヒートポンプを使って5℃熱を奪います。その熱で水道水を温め、貯湯タンクにお湯が貯められます。現在の実験ではヨークベニマル若林店の調理場で使うお湯に、貯湯タンクのお湯が使われています。お湯は40℃で、1日に4,600リットル利用されています。これまで下水処理場やポンプ場といった大型施設において、下水熱を利用する例は数例あったようですが、下水管からという事例は日本では初めて。ドイツでは30件、スイスでは80件の事例があるということで、都市に張り巡らされた下水管を使うという方法を実用化できれば、広範囲での熱利用を可能にするものとして期待されています。エネルギー効率を示す指標COPでは3.5〜4位ということで、高い数値を継続して出しているそうです。

課題としては、ある程度の水量の利用が必要となるため需要者が限られることや、下水管の直径が80センチ程度は必要となることからそのポテンシャルを可視化すること、まだまだ費用が大きくかかるのでコストの縮減や効率の向上が必要、などといったことが示されました。とはいえ、今後期待がもたれる技術でもあります。日本中の地下を流れる下水を熱源に変えることができれば、環境負荷の低減にも、エネルギー自給率の向上にもつなげることができますね。

藤崎浩太郎

宮城県:東日本大震災に伴う災害廃棄物処理について

東日本大震災では宮城県も沿岸部を中心に多くの地域が被災し、それに伴ない膨大な災害廃棄物が発生しました。普段廃棄物処理は市町村が行いますが、多くの市町村が行政機能を喪失する中、宮城県が災害廃棄物処理の一部を受託することとなります。県では災害廃棄物発生量の推計を行い、何度も見直しを行います。当初の推計では1,800万トンもの廃棄物が出たとされましたが、時間の経過による軽量化や、海への流出などもあり、最終的な処理実績としては1223万トンでした。津波堆積物を合わせると、最終的な処理量は1,951万トン。そのうち、県が受託したのは972万トンとなります。こうした廃棄物は既存の県内自治体の最終処分場では容量不足だったため、内陸の自治体や産業廃棄物最終処分場にて、埋め立て処理を行いました。また青森県、山形県、福島県、茨城県、東京都、福岡県の協力を得て、広域処理が行われています。

こうした災害廃棄物処理業務については、2014年10月から2015年1月にかけて、検証が行われ、今後の大規模災害発生時における災害廃棄物処理のあり方についての提言がまとめられています。その中では、

1.大規模災害に対する備え
 ー仮置き場用地の確保又は想定
 ー廃棄物処理業者が優れた能力を発揮するための支援と民間事業者および関係団体との連携
 ー隣県等との相互協力体制の確立と県内市町村等との連携強化
 ー廃棄物処理全般に関する人材育成
2.災害廃棄物処理を行うに当たっての優先順位
 ー災害廃棄物処理における優先順位(①発生量推計、②最終処分場の確保、③減量化・資源化の推進)
 ー処理対象量推計の精度向上と処理実行計画の不断の見直し
 ー処理技術の多様性の確保
3.法制度の見直し
 ー廃棄物処理法の各種手続きの緩和と特例措置
 ー私有財産の取扱いの整理
4.財源や各種事業体制の弾力化・一元化
 ー補助制度に代わる交付金制度の創設
 ー補助制度を維持する場合の被害程度に応じた段階的な財政措置の事前設定
 ー復興事業を見据えた財政措置の弾力的運用
 ー国家存亡の危機の際、全ての復旧・復興事業を一元化する専門機関の設置

といったことが示されています。災害発生時は、初動での避難体制の整備などが非常に重要である一方、長期的にみればこうした廃棄物などの処理に関する課題も出てきますので、事前に準備をしておくことが重要ですね。

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