オガールプロジェクトと循環型まちづくり。紫波町視察報告。

2015-07-17 23:33:05 | カテゴリ:活動報告


オガール紫波

「温暖化対策・環境創造・資源循環委員会」の視察3日目は、岩手県の紫波町を訪れました。視察テーマは、オガールプロジェクトにおける循環型まちづくりについて。

新世紀未来宣言と循環型まちづくり条例

紫波町では2000年6月に、「循環型社会の構築を担うのは町民一人ひとりであり、今の暮らしを見直し、変えていくことが何より大切であるという思いを込めて」、「新世紀未来宣言」を発表します。

「新世紀未来宣言」
日本文化の源流は農村の山ひだにありました。森の中から水が湧き、人々は集い、集落を形成し、自然と共存し、自然を崇拝してきました。厳しい自然に耐えた集落には、先人の知恵の結晶ともいうべき活きるための哲学があり、連綿と伝えられてきました。モノを粗末にすることは、すなわち生命(いのち)を粗末にすることにつながります。モノを大切にするこころ、生命を育むこころ、郷土の文化と伝統を伝えていくこころを、百年後にもひきついでいきます。母が見た風景を、浴びた陽の光を、感じた風を、清冽な水を、そして紫波の環境を百年後の子どもたちによりよい姿で残し伝えていきます。

この宣言に基づき、2001年には「紫波町循環型まちづくり条例」が制定されます。条例に基づき「紫波町環境・循環基本計画」が策定されますが、その中では(1)資源循環のまちづくり、(2)環境創造のまちづくり、(3)環境学習のまちづくり、(4)交流と共同のまちづくり、の4つの方針が掲げられました。この方針に基いて、「えこ3センター(※)」と言われる、堆肥製造施設、間伐材等炭化施設、ペレット製造施設などが作られ、堆肥を活用した土づくりや、地産地消が進められています。また一環として学校の給食では、町産農作物が積極的に使用され、お米は100%町内産、肉類は35.7%、果樹は24.3%、野菜なども積極的に町内産として、食材供給量の約42%が町内産となっています。給食の残さも「えこ3センター」で堆肥化され、資源循環の中に組み込まれています。町産木材の活用も積極的に進められ、2001年に完成した紫波中央駅では町産木材が多用され、紫波町立上平沢小学校、紫波町立虹の保育園では、町産木材100%を達成しています。
(※えこ3とは、Economy、Ecology、Earth Consciousの3つのEcoから。)

エネルギーステーション事業

紫波町が近年注目されているのは、「オガールプロジェクト」の取り組みがあるからと言っても過言ではないでしょう。公民連携(PPP)によって、商業施設や、町役場庁舎、図書館、住宅などを作るという事業です。このプロジェクトにおいても循環型まちづくりの方針が活かされ、1つの機能として再生可能エネルギーの活用が推進されています。こうした方針から、「エネルギーステーションで温熱・冷熱を生産し、オガール地区内の各施設に地域熱供給を行う」という事業が取組まれることになります。

エネルギーステーションでは、町内で生産された燃料用の木質チップを主燃料として、ステーション内のボイラーで80℃の温水を作り、蓄熱タンクから有機ランキンサイクル発電機を使って発電、蓄電、もしくは温水による給湯、暖房(冷房)が行われています。温水は、商業施設等が入る民間事業者棟や住宅、庁舎に、地下に埋設された配管を通じて送られ、活用されています。

オガール紫波
(写真:ボイラー)

オガール紫波
(写真:地域熱供給の仕組み)

紫波型エコハウスとオガールプロジェクト

オガールプロジェクトでは住宅地として「オガールタウン日詰二十一区」という分譲地が提供されています。日詰二十一区では「オガールタウン景観協定」が定められ、景観や環境等に配慮した建築のルールが設けられています。その中の環境に配慮したまちとして、「紫波型エコハウス」が定められています。この紫波町型エコハウスには、「山形エコハウス」の竹内昌義先生が関わっています。

紫波型エコハウスは明確な基準があり、分譲条件となっています。(1)年間暖房負荷48kWh/㎡以下、(2)相当隙間面積0.8c㎡/㎡以下、(3)構造材における町産木材の利用率80%以上、の3つです。この3つを満たすことで、エネルギー、人材、木材等の地産地消による経済循環を目指し、環境負荷に配慮し、エネルギー消費を抑えようとされています。分譲地区の1画には、エコハウスの普及を目指して「紫波型エコハウスサポートセンター」がおかれ、日詰二十一区以外の町内一般住宅の性能向上やリノベーション、省エネルギー設備効きの導入などのコーディネートが行われています。センターの建物自体が紫波型エコハウスの基準を満たしているので、モデルハウスの機能も果たしています。3つの基準に対してセンターの値は、(1)年間暖房負荷:47.71kWh/㎡、(2)相当隙間面積0.3c㎡/㎡、(3)町産木材100%、という数字となっています。この他にも景観協定には、美しい景観と暮らしやすい環境をつくるために、緑化に関するルール、灯りや家並みに関するルール、小道に関するルール、建築物の高さや背面後退距離、付帯設備に関するルールや色彩の基準などが設けられています。

オガールタウンの土地は、元々は紫波中央駅の誘致とともに計画された開発計画のために取得した土地でしたが、景気の低迷から税収不足に陥り、塩漬け状態でした。その土地を再生しようと、前市長が1998年に就任して以来取組まれてきたのがオガールプロジェクトです。逆境をはねのけて、行政主導の開発をやめ、民間主導の開発として、公民連携プロジェクトにしようと「紫波町公民連携基本計画」が2009年に策定され、「岩手フットボールセンター」が2011年に完成。2012年には「オガールプラザ」(飲食店、マルシェ、図書館、医院など)が完成。2014年にはバレーボール専用体育館と宿泊施設からなる「オガールベース」が、2015年5月には町役場の新庁舎が完成しています。民間による開発を行ったため、資金は金融機関からの融資。紫波町からは補助金が出ていません。そのため返済可能な計画が必要となり、プロジェクトの持続可能性が確保されます。実際オガールプロジェクトは基本計画の見直しが行われていて、コンクリート3階建てから、より安く仕上げることができる木造2階建てに変更されたといいます。ハコモノありきや、補助金使いきり、計画の見直しができなといった行政主導とは全く異なるところです。

紫波型エコハウス
(写真:紫波型エコハウスサポートセンター外観)

オガール紫波
(写真:実際に使われている断熱材の断面)

オガール紫波
(写真:熱交換機)

オガール紫波
(写真:センターの2階)

オガールプロジェクト
(写真:新築の町役場庁舎)

オガールプロジェクト
(写真:バレーボール専用体育館)

オガールプロジェクト
(写真:左側がオガールプラザ、右側がオガールベース)

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