避難所毎の担当職員制と、職員のこころの健康。熊本市の震災対応。

2017-10-27 23:25:49 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

10月26日、横浜市会「政策・総務・財政委員会」の視察で、熊本市を訪問しました。目的の1つは、熊本地震発生後の市職員のメンタルヘルスについてと、もう1つは震災復興計画について。

こころの健康に関するアンケート

平成28年4月14日の前震、16日の本震という、震度7を超える大規模な地震が熊本で発生し、市職員はその対応にあたります。19日には救護所が市役所に設置され、怪我や体調不良への対応にあたり、19日には「数日経った頃の心のケア」、21日には「1週間のこころのケア」として、ストレス等への対応方法が周知されます。精神科医等による巡回相談や、メンタルセルフチェックの案内などがその後行われていきます。その一方で、復旧・復興のために昼夜にわたって不規則な勤務と、長期間の継続勤務により、職員の精神的な負担の蓄積と、それによる心の不調を訴える職員が増加することが懸念されていました。

そこで5月6日に「災害時のこころの健康に関するアンケート」が実施され、職員の心身状態や、被災状況の把握が行なわれます。対象となったのは、8,982名の職員(県費教職員と市民病院職員を除く全職員)。アンケートの有効総回答者数は5,023人で、56%ほど。この内、612名(約12%)が、うつ状態やPTSDの傾向にあることが判明します。判明した職員や、それ以外でも面談が必要と判断された職員には、産業医や、保健師等による面談を実施。それぞれの状況に応じて、カウンセラーへの面談の勧奨、医療機関への受診勧奨、セルフケアのやり方の指導、などが行われます。合わせて所属長に対しては、休暇の取得促進、時間外勤務の抑制、災害対応業務のローテーションへの配慮、などの助言が行なわれます。面談後も継続的なフォローが行なわれたそうです。産業医による現場訪問では「うつ状態」や「PTSD」になる可能性が高い要因として、(1)避難所になっている施設に勤務する場合、(2)市民対応でこころ無い言葉を浴びせられた場合、(3)所属部署の管理職が、部下に対して配慮がない場合、(4)所属部署内の業務量に職員間で大きな差がある場合、の4つが明らかになります。こうしたことから、管理職が職員の状況を把握し、負担の偏りが生じないようにすることや、職場全体で気遣いやこころのケアに取組むことの重要性が認識されるようになります。

震災から1年経過した平成29年4月にも、1年後の状況把握のためにスクリーニング調査が行なわれています。全職員対象に行なわれ、回答者は1,816名。そのうち、「うつ」または「PTSD」の疑いがある判定された方は130名(7.2%)でした。判定された方に対しては、本人への通知の他、産業医やカウンセラーへの面接指導の勧奨が行われ、面談の結果必要があれば、医療機関への受診勧奨や、管理監督者や人事担当部門に対して、就業上の措置の必要性が進言されています。

熊本市震災復興計画

平成28年10月には、熊本市復興支援計画が策定されます。基本方針として、

1.避難から復旧、そして、74万市民が総力をあげ明日を見据えた復興へ
2.「安全・安心」と「元気・活力」、そして「地域経済」の回復に向けた効果的かつ迅速な市政展開
3.市民・地域と行政が協働で支える安全・安心で「上質な生活都市」の創造

の3つの方針が掲げられ、復興重点プログラムとして、

①一人ひとりの暮らしを支えるプロジェクト
②市民の命を守る「熊本市民病院」再生プロジェクト
③くまもとのシンボル「熊本城」復旧プロジェクト
④新たな熊本の経済成長をけん引するプロジェクト
⑤震災の記憶を次世代へつなぐプロジェクト

の5つのプロジェクトのもと、個別施策が年度毎に予算化され、復興が進められています。熊本市復興支援計画の詳細は、こちら(熊本市復興支援計画)からご覧いただけます。

避難所毎に担当職員を固定

今回の視察で気になっていたのは、昨年の5月に避難所を訪問した際、多くの被災者の方から伺った

❝避難所から聞かれた行政の問題は、市職員が1名いるものの、日替わりで毎日違う職員が来ること。現場のことを理解したり、そこで生活する人と関係性を深めることができずに、回っていくだけ。本当に必要な支援には結びつかない❞(※「熊本市の避難所と、ボランティアセンター。」2016年5月6日)

という課題への対応です。現状どのように対応が進んでいるか伺ったところ、「避難所運営委員会」が設置されていました。運営マニュアルも発行されています(事前準備編開設運営編)(※事後確認)。横浜で言うところの、地域防災拠点運営委員会と同等なものと見受けられます。運営委員は自治会長や民生委員、学校が避難所の場合は教職員、そして市職員が4名程度張り付きとなるそうです。市内には避難所が180〜200あるとのことで、600名ほどの職員が、どこかの避難所の担当として定められているとのことでした。この4名の職員は、できるだけ避難所に近いところに居住する人が選ばれていて、発災時のみならず、日頃の防災訓練などの地域活動にも参加し、地域の方々と交流を行っていくことになっているということでした。

この職員を地域に張り付けて防災にあたるという方法は、以前視察を行った佐久市での取組にも似ています(※「自治会ごとに2名の市職員配置。佐久市の防災減災。」2015年11月12日)。横浜市では防災目的ではありませんが、連合町内会毎に2名の担当職員を配置する、「地区担当制」という取組があります。上述のメンタルヘルスの問題においては、「(2)市民対応でこころ無い言葉を浴びせられた場合」という要因が挙げられています。職場の中での気遣いなども求められていましたが、市民と職員との信頼関係をいかに構築できるか、という点も重要ではないかと考えます。発災後の混乱の中で、市職員の皆さんも困難な中現場に当たられていたと思います。一方では毎日違う職員が来て、課題の共有も、現場を知ってもらうこともできない、避難所の市民の皆さんが思う気持ちも、もっともです。担当制を敷けば全てが解決する、というわけではありませんが、日頃から信頼関係を築いておければ、困ったときもお互いの立場に立ったコミュニケーションをとることができるのではないかと考えます。そうすれば、より良い共助、公助につながるのではないかと考えます。そのためには、どれだけ日頃の交流をはかれるかが、重要なポイントになりそうです。

熊本市役所

熊本市

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