オープンデータ活用で、介護事業のイノベーション。ウェルモ社視察報告。

2017-10-26 16:55:24 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

10月25日、横浜市会「政策・総務・財政委員会」の視察で、福岡市に本社のある「株式会社ウェルモ」を訪問しました。今回の視察は政策局分野における、オープンデータの取組において、民間事業者が実際にオープンデータを事業展開に活用した事例として、ウェルモ社の事業を学ぶことが目的。

介護業界のICT化と透明化

ウェルモ社は介護業界に情報化・ICT化の変化を促し、透明化・市場化による介護の質の向上と、イノベーションを実現しようと、事業を展開されています。オープンデータが活用されたのは、ウェルモ社が提供している介護事業所情報サービス「ミルモ」において、事業者のデータベースを作成するにあたり、事業者の公開されている登録情報について、福岡市から提供を受けた部分。2013年創業のベンチャー企業であることから、全ての介護事業所にアクセスして、必要な情報を集めるには時間や手間がかかりすぎることから、市役所に相談し、当時は「オープンデータ」として扱われていたわけではないものの、「公開されている情報だから」ということで、公開情報のデータの提供を受けたというものことです。オープンデータを取得できたことで、全ての介護事業所を網羅することができ、掲載情報の公平性を担保することができたと言います。ウェルモ社が独自に集めた事業者情報とオープンデータが合わさることで、事業者の特徴(優劣)を表現することが可能になり、市民にとって価値ある情報発信につなげています。

介護業界における課題の1つとして、何度も取り上げられたのは「情報の非対称性」です。アナログで、属人的な事業環境が続いていて、利用者本位になっていないという指摘です。介護業界の構造として、ケアマネージャーさんが介護保険法や介護サービス、事業者の情報を持ち、利用者の意思決定に主体的に関わる一方、利用者やその家族は制度や事業者の情報を十分に持たないため、典型的なプリンシパル=エージェントの関係になり、癒着やモラルハザードが生じやすいという課題があるといいます。ケアマネさんにも得意・不得意があったり、ケアプランの作成が個人の恣意性に委ねられるなど属人的であることから、利用者に合った事業所やサービスが選ばれるわけではないという課題もあります。この他にも、採用、教育、人事考課モデルが無いため、事業所の経営理念や方針と、介護士等被雇用者のマッチングが上手く行っていないため、離職率が高いという課題もあります。

情報の非対称性を解消し、サービスの質の向上を

こうした属人的な事業環境から脱するために、ウェルモ社ではICTを活用したソリューションを提供しています。介護サービスプラットフォームとして、「ミルモDB」という介護事業所のデータベース(一般非公開)の提供と、ミルモブックという冊子の発行を行っています。事業所からは最新の情報を提供してもらい、ケアマネさんが事業所の情報を入手できるようになっています。採用に関する問題については、DBの情報を活用して事業者と求職者のマッチングを行う、人材紹介事業「ウェルモキャリア」が提供されています。現在研究が進められているのは、AI(人工知能)を活用した、ケアプラン作成の自動化です。AIによりケアプラン作成における属人性の排除と、質の向上を目指されています(リリース時期未定)。

「情報の非対称性」の問題は、私がオープンデータに取組む理由の1つでもあります。行政と市民との情報の非対称性は、市民が求められる意思決定に影響を及ぼします。行政活動が可視化されていなければ、行政の仕事も属人的になり得ますし、それが属人的であることも十分に把握できなくなってしまいます。介護業界においても同様の課題があり、民間企業のビジネスとしてその課題を解決しようという取組として、ウェルモ社の事業は今後重要なものになるのではないかと考えます。ウェルモ社は「社会課題を資本主義と先端技術で解決するー福祉分野の情報活用を次世代の水準へー」というミッションを掲げています。代表が介護業界に携わり始めたときに、いまだにFAXと電話で事業者間のやり取りが行なわれていたことに愕然としたと言います。新たな技術の活用と、市場性のある事業によって、福祉分野の利用者サービスの向上や、働く方々の環境が改善されることに期待です。

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ウェルモ

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