児童養護施設「ならさ」の取組と、課題について。視察報告。

2019-10-31 08:37:41 | カテゴリ:活動報告


児童養護施設ならさ
2019年10月30日は、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察2日目。石垣市唯一の児童養護施設「ならさ」を訪問し、取組内容について伺いました。2005年8月に設立された児童養護施設「ならさ」は、社会福祉法人紺碧の会によって運営されています。今回の視察では、理事長であり、設立者である翁長克子さんからも直接お話を伺うことができました。

設立までの経緯

翁長さんは26歳で石垣島に戻るまで、埼玉県にて学研の営業職を経験し、全国トップの売上を達成するなどの実績を残されます。石垣島に戻ってからも学研の仕事を続けつつ、30歳の時には保育園を設立されます。背景には、本土と石垣の子どもたちの間の学力の差を目の当たりにしたことがあり、「石垣の子どもたちに何かしたい」と立ち上がったといいます。

そうした石垣市での子育て支援の取り組みを経ながら、石垣の子どもたちの不登校問題に関心を持ち始め、フリースクールについて調べ始めていたところ、石垣市の職員から、児童養護施設の設立を頼まれたといいます。知識も経験もなく、最初のうち2年間は断り続けたといいます。しかし沖縄本島の養護施設に石垣の子どもたちが沢山いる現場を見て、その子どもたちを石垣島に戻したいと思うようになり、児童養護施設の設立計画に着手することになったといいます。計画を進めるために土地を購入し近隣住民に説明をして、という中で、周辺住民からの反対運動に遭い、計画は3度頓挫します。

2005年、4度目の挑戦にしてようやく設立に開所にこぎつけます。この4度目の挑戦のときは、ここでダメなら最後にしようと思いながら取り組んだといいます。現施設のある真喜良地域は母子家庭率が高く、児童養護施設への理解をしてもらいやすいのではないかと考えていたそうです。3度目までは準備委員会として民間人の翁長さん達数名で地域調整にあたっていましたが、4度目は市長をはじめ県や、市職員も一丸となって水面下から交渉にあたり、一切の反対に遭わなかったといいます。翁長さんは当初設立までを担って、理事長になるつもりはなかったそうですが、「設立した人が運営しないでどうする」と周囲からも言われ理事長に就任します。開設時は25名いたスタッフは、全て地元の人ばかりで、経験も無いなかから始めたといいます。地元の子どもを、地元の人たちで育てたい、という想いがあったそうです。

藤崎浩太郎

運営について

2019年10月1日現在、34名の子どもが入園していました。1〜6歳が9名、7〜12歳が12名、13〜15歳が5名、16〜18歳が4名、19歳以上は0名です。石垣島には一時保護所が無いため、警察や児童相談所からの連絡を受けて、「ならさ」が一時保護所としての役割を担うこともあります。里親さんに預けることもあり、子どもたちの状況に応じた対応が取られています。国の方針もあり、石垣市でも里親委託への転換も進めようとされていて、施設としても児童相談所とも相談しているとのことでしたが、まだまだ委託率は低いという話でした。里親さんのケアのために、里親さんのレスパイトも行われています。

子どもたちには「離島だからできない」「施設出身だからできない」、と考えたり、そういう気持ちを持たないようにしてほしいと考えながら接していらっしゃいます。映画なども本島に行かないと映画館には行けませんが、施設の中で上映会を開いたりして、機会を作っています。土地柄的に四季を感じづらいこともあるので、料理を通じて四季を感じられるように取り組んだりもされています。また、地域との交流や学校との交流にも取り組むようにされていて、キャンプ地としているプロ野球チーム千葉ロッテマリーンズの選手との交流も行われていました。一方では狭い地域でもあるため、過去には子どもの後ろ姿の写真でも個人が特定されてしまうなど、個人情報の取扱には丁寧に対応されていました。

児童養護施設ならさ

課題としては、人材不足が挙げられていました。当初は島内の人材のみの運営ができていたものの、現在では島外の人材も採用が行われています。職員の定着の課題もあり、就労規則の改正などを行いながら、働きやすい環境づくりに取り組んでいらっしゃいます。また職員の研修を年に1回島外や県外で行っていて、情報をしっかりと得ながら、質の向上に取り組んでいらっしゃいます。今後の課題としては、子どもたちのアフターケアが挙げられていました。沖縄本島や内地で就労する子どもたちが多い中で、直接会うことができなくなります。以前も島を出た後に金銭トラブルに遭った子どもが、電話でのやり取りはしていたものの、トラブルについて電話では相談できなかったというケースがあったそうです。就職先とも連絡を取り合ってアフターケアに取り組んでいらっしゃったり、これからは児童養護施設出身の子どもの就労支援に取組む企業とも、連携を行おうとされていました。

児童養護施設ならさ
理事長がこだわった、食堂から中が見える調理室。調理している様子を子どもが見えるようにして、感謝の気持を忘れないようにと工夫されています。

児童養護施設ならさ

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