2019年10月30日は、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察2日目。視察2ヶ所目は沖縄県子ども生活福祉部子ども未来政策課で、沖縄県の「子どもの貧困対策」の現況について伺いました。沖縄県は子どもの貧困率が29.9%(2014年)と、全国平均の13.9%(2016年)の2倍以上という数字が出ています。
豊富な実態調査の実施
沖縄県の子どもの貧困問題は、内閣府沖縄振興局としても取り組まれていますが、施策の方針を決めていくためにも「実態把握」に力が入れられ、調査に基づくデータの分析、活用が行われています。「沖縄県子どもの実態調査」として、2015年には第1回貧困率調査と第1回小中学生調査、2016年には第1回高校生調査、2017年は第1回乳幼児調査、2018年は第2回小中学生調査、2019年は第2回高校生調査、そして2020年には第2回乳幼児調査が予定され、2021年には第2回貧困率調査が予定されています。これらの調査に基づいて、施策の効果が測定されていきます。施策点検評価サイクルも設けられていて、第1次「沖縄県子どもの貧困対策計画」の期間2016年度〜2021年度全体の施策が毎年度点検を受け、2018年度には中間評価があり、2021年度には最終評価を行い、これらの点検評価に基づいて、2021年度中には第2次計画が策定される予定となっています。
調査の中では、就学援助の利用状況や、子どもの自己肯定感、保護者の子育てに関する気持ち、子育て施策の利用状況、医療機関での受診状況、学校生活についてなどが調査され、それぞれの回答における困窮層と非困窮層との比較や、前回調査との比較などが行われています。そうすることで、困窮層における特徴を見出して対応策につなげたり、比較した結果の施策の効果測定が行われています。
就学援助制度については、その利用率が課題とされてきました。主な要因としては、制度の認知が低いことも調査から判明し、就学援助制度のテレビCMを流したり、入学前や進級時などにチラシを配布するようにしたといいます。その結果、2015年度は利用率が20.39%(29,539人)だったものが、2017年度には23.59%(34,134人)に上昇しています。制度の認知度についても、就学援助制度を利用していない理由についての調査結果では、2015年度調査では10.9%が「知らなかった」と回答していたのが、2018年度調査では3.8%まで低下していて、確かな実績を挙げています。
沖縄県子どもの貧困対策計画
「沖縄県子どもの貧困対策計画」では、重点施策として「つながる仕組みの構築」が掲げられていて、2016年度当初予算が205.0億円だったのに対し、2019年度は234.1億円と、この4カ年度の間に29.1億円の予算増と、力が入れられていのが予算からもわかります。
主な施策として取り組まれているのは、「1沖縄子供の貧困緊急対策事業」として(1)市町村に支援員の配置、(2)子供の居場所の設置、「2沖縄県子どもの貧困対策推進基金」として(1)就学援助の充実、(2)放課後児童クラブの利用料負担軽減、(3)母子健康包括支援センターの設置促進、「3子育て総合支援モデル事業」として、準要保護世帯・ひとり親世帯への学習支援、「4沖縄子どもの未来県民会議の民間資金による基金」として(1)児童養護施設等退所者への給付型奨学金、(2)低所得世帯等への高校生への通学費(モノレール)負担の軽減、(3)ジョイントプロジェクト助成事業、などがあります。
支援員配置事業は、「子供の貧困対策支援員」が、スクールソーシャルワーカーのような形で、学校や、学習支援施設、居場所づくりを行うNPO等と連携をし情報共有しながら、必要な支援に子どもたちをつなげていくもので、29市町村に117名配置され、県はその研修を実施しています。放課後児童クラブの利用料負担軽減は、学童保育が民設民営で行われてきた沖縄において、利用料が困窮世帯にとっては高く負担となっていることが調査により明らかになったため、その対策として20市町村において5,000円程度の軽減が行われています。児童養護施設等出身者の大学進学率は30%と、一般生徒の45%を大きく下回るなか、同等な進学率まで引き上げられるようにと、「子どもに寄り添う給付型奨学金」が設けられています。これは児童養護施設退所者や里親委託措置を解除される子どもを対象に、大学や専門学校等の進学にかかる入学金、授業料の全額を奨学金として給付する(返済不要)もので、これまで応募者全員に給付が決定し、2016年9名、2017年18名、2018年13名という実績になっています。
若年妊産婦のケア
今回の視察で特徴的な取組だなと感じたのは、「若年妊産婦」(おおむね18歳以下)のサポートに力を入れられている点です。沖縄における10代の妊娠・出産の割合は全国と比べて高く、全国が1.1%であるのに対し、沖縄県2.6%、沖縄市3.7%という水準になっています。「温かな家庭へのあこがれ」も背景にあるとのことでしたが、若年妊産婦の中には、パートナーや家族から十分な経済援助が得られなかったり、周囲に相談できなかったりと、妊娠、子育てのために必要なサポートが得られないという課題があります。
横浜市では「にんしんSOSヨコハマ」として予期しない妊娠への支援が行われていますが、その背景には児童虐待の問題があります。若年での妊娠・出産は、シングルマザーになる割合が高いことが示されてきていて、学校中退や教育機会を失うことにより低収入など経済的自立が難しくなるという問題もあります(参考)。結果的に貧困世帯となり、子どもの貧困にもつながりますし、また貧困の連鎖にもつながりかねません。2018年には沖縄市に「沖縄県助産師母子未来センター」が設立され、課題を抱える若年妊産婦に対して、助産師等が妊娠、出産、育児に関する相談対応や、生活支援等を実施し、安全な居場所を提供し、自立していけるよう支援が行われ始めています。若年妊産婦の課題はこれまでも指摘されてきていますが、沖縄のように割合が高くなくても、支援を行っていくことは重要だと考えます。
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