農福連携と認められる仕事づくり。社会福祉法人青葉仁会視察。

2024-08-02 09:32:43 | カテゴリ:活動報告


青葉仁会

2024年8月1日、所属する常任委員会「健康福祉・医療委員会」の視察で、奈良市にある「社会福祉法人青葉仁会」へお邪魔し、農福連携の取り組みについてお話を伺いました。

青葉仁会は1980年に創設された、歴史ある法人です。理事長の榊原典俊さんは、もともと養護学校の教員をされていましたが、卒業後の子どもたちに対する福祉活動の必要性から、青葉仁会を創設されています。当時、入所施設を市街地につくろうとしたものの反対が多かったそうですが、現在法人がある奈良市杣ノ川町は誘致をしてくれて、この場所での活動が開始されたそうです。

入所施設としては本部にある「あおはにの家」、「萌あおはに」(それぞれ定員50名)の他、奈良市、生駒市に9つのグループホーム(約100名居住)があります。通所施設としては、就労継続A型、B型、生活介護、就労移行、自立支援等に取り組む施設が、9か所あります。全体での利用者は400名程度となっています。

農福連携

農福連携と6次産業化

青葉仁会の大きな特徴が、農福連携の取り組みです。杣ノ川町は中山間地域にあり、少子高齢化による過疎化、米価の下落による耕作放棄地の増大、農産業崩壊による地域産業全体の衰退、人口減少によるライフライン消失、これらの理由による人口流出の加速、という課題に直面しています。こうした課題に対して農福連携には強みがあり、障害者にも豊富な活躍の場があり労働の親和性が高く、農業力は衰退していても豊富な資源を活用した6次産業化の可能性があり、共同体意識による地域住民との協力関係を構築しやすいなど、多様性と可能性があると指摘されています。

この地域はお茶の栽培が盛んなため茶畑が広がっていて、耕作放棄地となった茶畑を再生・活用されています。茶畑の土地は強酸性で、当初は地元の人から難しい土地だと言われていたものの、同じ酸性土壌で栽培されるブルーベリーに着目し、ブルーベリー園へと転換しています。元々は手鋸で茶の木を伐採するところからはじめ、現在では1,700本程度のブルーベリーの木が植えられています。年間で17t程度の収穫量になっているそうです。ブルーベリー園は、入園料を払えば園内では食べ放題となっていて、年間2,000人のお客さんがいらっしゃるそうです。ここのビジネスの考え方が面白く、ある面では園に来たお客さんも労働力として捉えられています。ブルーベリーを摘み取って、持ち帰る場合は1,000円/kgで園が「販売」することになりますが、お客さんが摘み取ったブルーベリーを園が「買い取る」こともできて、その場合は500円/kgという対価になっています。この摘み取りに対する500円/kgは、施設利用者(障害者)も同じ金額であり、更に地域の人が手伝い(労働)に来られた場合も同じ金額となっています。摘み取られたブルーベリーは、ジャムやお菓子などに加工して販売もされ、6次産業化されています。

ブルーベリーの他にも、茶畑をそのまま利用して無農薬のお茶づくりを行い、和紅茶を製品化している他、お茶のガトーショコラ、化粧石鹸への利用などがされています。さつまいもは年間17t収穫し、干芋やスイーツに加工。玉ねぎは法人内でオニオンフライへ加工して、レトルトカレーやスープへ商品化しています。お込めの栽培も十数年取り組んでいて、2018年度には「プレミアムライセンスグッドファーマー」に認定されて「おいしいお米」を生産できるようになっています。この認定の結果、青葉仁会だけでなく、地域のお米のkg単価が600円上昇したといいます。

認められ憧れられる仕事づくり

廃校となった小学校の校舎を青葉仁会として購入し、現在はレトルト食品や冷凍食品の工場に転換されています。現地も視察させていただきましたが、入口からすぐの場所には、沢山のレトルトカレーのパッケージが並べられていました。自社製品もありながらも、日本中の企業から発注を受けてOEM供給もされています。フードロス対策としての加工食品という側面もあり、スーパーから提供された店頭で並べられないジャガイモをカレーに使っていたり、同様にスーパーから出るバナナをジェラートにしていたり、天ぷら工場で端切れとして出てきたさつまいもをスイートポテトに加工したりと、青葉仁会が企業やNPOと連携をしてフードロスに取り組んでいます。この取り組みは2023年度「循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰」を受賞しています。

その他にも、青葉仁会が自家農園で栽培する小麦を使ったパンの製造、ブルーベリーを使ったワイン、自家農園のお米を使った日本酒、荒廃林の間伐材を使った木工製品、竹林再生のために竹和紙の開発、など地元のあらゆる資源や捨てられる素材を活用して、事業が行われています。農産品や加工品の提供の場として、そして通所施設として、レストランやカフェの運営が行われています。年間35,000人〜40,000人訪れる「カントリーレストランハーブクラブ」には、株式会社モンベルとの提携で「モンベルルーム」という、モンベル製品を扱う場所が併設されています。「アート&カフェ水仙月」には、利用者の絵画作品や、紙漉き製品を内装に活用し、テーブルや椅子などは法人内の木工事業所「どんぐり山猫工房」で製造しています。

「満天星めぐり石鹸工房」という石鹸の製造工場も設けられていて、薬機法に基づいて石鹸の製造が行われています。「薬機法に基づいて」が重要なポイントで、法律に基づいた許可を得て製造ができることで、化粧石鹸をOEMで供給できるようになっています。小売価格で数千円するような化粧石鹸を、青葉仁会でOEM供給されているということでした。また、化粧品に取り組もうと考えられたきっかけは、女性が憧れる仕事を作りたかったということでした。障害者の発達支援という視点では、認められ、褒められる経験が本人の成長につながるそうです。そのためには、当事者が興味を持てる仕事をどれだけ法人として持っているかが大事で、木工など男性がやりがいを感じられる仕事だけでなく、女性の利用者視点で事業展開を行われたということです。OEMで請け負った「無茶々園伊予柑しっとり石鹸」は、サステナブルコスメアワード2021でGOLD賞を受賞されています。

利用者は全体で約400人程度で、障害者ではないパート等の雇用は340人くらいとのことで、地域雇用の創出にも成功されています。法人全体での売上は3億〜4億円程度ということでした。工賃としては、働く場や個人によって異なるものの、レトルト食品の製造は毎日1,000〜1,500食で、月49,000円程度。ブルベリーでは最盛期に月50,000円稼ぐ人もいるということでした。法人として所有する農地は12haくらいではないか、山林は23haくらいではないか、ということで広大な土地を持ちつつ、本部・入所施設の建物や、廃校や閉園となった保育園跡地なども所有されています。

理事長の言葉からは、地域のあらゆる資源を活用しようという強い意思を感じました。あらゆる地域資源を活用するとともに、様々な製品や事業の提案・相談を企業等から受けて、0から企画し自ら事業化し、それを繰り返しながら利用者や地域とともに課題を乗り越え、地域再生を実現しようという姿勢と行動が、これだけの実績を生んでいるんだと、素晴らしいと感じました。

RIKUGOの森
廃校を利用した「RIKUGOの森」

RIKUGOの森
今も残る小学校の銘板

青葉仁会
青葉仁会で製造しているレトルトカレー

青葉仁会
石鹸やジェラートのパッケージ

青葉仁会
レトルトカレー工場の内部

満天星めぐり石鹸工房
満天ひろばと、星めぐり石鹸工房の全景

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