2024年11月19日、所属する「健康福祉・医療委員会」の視察で、沖縄県議会を訪問し、「沖縄県の障害者雇用支援の取り組み」について調査を行いました。沖縄県の人口は1,462,871人に対し(2022年度末)、障害者手帳所持数は110,436人となっています。いくつもの島によって県が構成されているなか、障害保健福祉圏域は北部、中部、南部、宮古、八重山の5つの圏域によって構成されています。
沖縄県の障害者雇用の状況
沖縄県の民間企業における障害者実雇用率は3.24%で、全国平均の2.33%を上回り、全国1位となっています(2023年度)。法定雇用の対象となる企業数は1,086社あり、そのうち法定雇用を達成しているのは708社(65.2%)、未達成企業が378社(34.8%)。さらに、未達成企業のうち全く雇用していない「0人企業」は235社(未達成のうちの62.2%)となっています。就業中の障害者の人数は9,795人(2023年度)に上る一方で、2023年度末の障害者有効求職者数は6,826人であり、雇用率が高いとは言え働きたくても働けていない障害者が数多くいるため、県としては障害者雇用の一層の推進が必要とされています。
障害者雇用推進企業登録制度「ワークわく!おーきなわ」
上記の課題から、沖縄県では障害者雇用の取り組みとして、周知啓発や働く障害者の育成、支援体制の充実に取組んでいます。その1つが障害者雇用推進企業登録制度「ワークわく!おーきなわ」です。企業間ネットワーク構築のために、障害者雇用の実績がある企業「応援企業」と、これから取り組みたい企業「チャレンジ企業」の登録を行う制度です。
「応援企業」は、過去3年間法定雇用率以上の障害者を雇用している企業です(就労継続支援A型事業所は含めない)。これまでの実績を踏まえて、
・取り組み事例の提供
・セミナー等における事例の紹介や
・学校や支援機関の就職支援における助言
・障害者の職場見学や学習の受入
・他の企業等の職場見学の受入
・チャレンジ企業への助言
のいずれかの活動を行うこととなっています。応援企業に登録するメリットとしては、ロゴマークが活用できるようになることや、県ホームページへの掲載されることによってPRやイメージアップにつながりることや、障害者雇用における課題や更なる取組向上のために、企業間の意見交換や情報交換ができる、ということが挙げられています。
「チャレンジ企業」は、応援企業の登録要件を満たさないものの、今後障害者雇用に取り組みたい企業が登録し、障害者雇用にあたっての必要な情報を得られることを目的としています。応援企業の話を聞いたり、相談することで、法定雇用率を達成することに近づこうというものです。実績を紹介するパンフレット等では、雇用者の考えや障害者の実際の就労状況などを知ることができて、これから障害者雇用に取り組もうという企業や、もっと採用したいという企業にとって、有益な情報発信が行われています。2018年11月から「ワークわく!おーきなわ」がスタートし、チャレンジ企業に登録した企業が法定雇用率を達成したり、応援企業になるという事例も生まれているそうですが、達成せずに登録から外れるケースもあるということでした。
職業訓練(職場適応訓練)
他の取り組みとしては、障害者の訓練や、企業とのマッチングの取り組みとして「職業訓練(職場適応訓練)」が行われています。「雇用予定の企業」で実際の業務内容を訓練するというもので、期間は6ヶ月間(重度障害の場合は1年まで)の訓練で、訓練期間中は雇用契約は結ばれません。
メリットの1つは、訓練期間中障害者に対して県から手当が出されることです。基本手当は月10万円。通所手当は実費で、受講手当は期間中2万円となっています。訓練を受け入れる事業所にも県から委託料が支給され、1人あたり月24,000円(重度は25,000円)となっています。障害者も事業所もお金を得ながら、それぞれが適正や能力の見極めができ、雇用前に作業の習得ができるといったメリットもあります。事業所側には、訓練に適した設備や指導体制等の受入環境の整備や、公共職業安定所長の指示が必要という条件がありますが、県や支援機関が定期的に訪問して助言がもらえるなど、金銭だけでないメリットがあります。
2023年度は12人の訓練生のうち、修了したのが8人、雇用につながったのが7人、2022年度は18人中13人修了、10人雇用、2021年度は17人中7人修了5人雇用、2020年度は29人中21人修了、21人雇用と、一定の雇用実績につながっているものの、訓練者数の減少傾向があります。受け入れる企業側にも手間がかかることもあり、当初は多様な企業が参加していたものが、最近はスーパー等の小売業が中心になっていて、受入企業の量の確保と訓練生の量の確保は課題となっていました。訓練を修了できない、雇用に繋がらない理由としては、仕事と本人の適性が合わないことや、欠勤が多い事例などが挙げられていました。
障害者雇用は、受け入れる企業が増えていくことと、その職場で障害者の就労に対する理解が進むことが重要です。沖縄県では法定雇用率が高いなかで、一層の雇用拡大に取組まれていることが印象的でした。応援企業とチャレンジ企業の関係においては、先輩が後輩の面倒をみるような取り組みですので、実績のある企業からアドバイスを貰えたり、具体的な方法を学べることは、0人企業のような手を付けられていない企業をバックアップしていく面で、地道に進められる良い取り組みでした。また、職場適応訓練も、雇用契約を結ぶ前にそれぞれの適性を確認できる上に、金銭面での支援もあり、双方安心して就労に一歩踏み出せる良い事業だと感じました。
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