省内の中立的立場としての、フューチャーセンター。デンマークMindLab。

2013-05-07 14:59:39 | カテゴリ:活動報告


マインドラボ

4月30日〜5月6日の日程で、デンマーク、オランダに視察に行ってきました。今回の目的は、横浜市における政策形成プロセスの今後についてを探るため。これまで、フューチャーセンターやオープンデータについて議会でも議論を行い、都内や横浜市内で行われた様々なフューチャーセンターに参加したり、勉強会に参加したりしてきました。そこで今回は、フューチャーセンターなどの先進地である、デンマークとオランダを訪問し、現状や課題に付いて調査を行ってきました。

1件目の訪問先は、フューチャーセンターの「Mind Lab」。

マインドラボ

マインドラボはデンマークの児童教育省と雇用省、経済成長省の3省庁が設置しているフューチャーセンター。10人の選任スタッフが働き、ほとんどの方がコンサルティング会社出身ということでした。複数の省庁が中立に、横断的議論ができるようにすることを目的に設立された機関です。専門領域を超えて、他の人達が持つ手法を学び、取り入れることが可能になり、市民サービスの向上に役立っているといいます。

具体的な取組み事例として紹介して頂いたのは、飲食店のオープンに関する手続き情報の改善についてです。

農水省が保健所機能を持ち、飲食店の新規オープンに関して指導を行っています。マインドラボには農水省が入っていませんが、以前は税務署を所管する財務省がマインドラボの設置者の1つだったことと、雇用省が入っていることもあり、農水省、財務省、雇用省の協力のもと、新規オープンする実際のカフェを現場に、3省の担当者で2日間のワークショップを開催したといいます。

1日目はカフェで最初のプロジェクトミーティングを、各省の行政官とカフェオーナーが集まり実施。オーナーによる立ち上げの説明や、マインドラボスタッフによる視察、税務署と労働省のチェック項目の相互把握などが行われました。その後マインドラボにて、各省の行政官が集まり、それぞれが管轄する法的事案に関して、どうやって相互に情報交換を行うかについて、ワークショップが行われました。そのワークショップでは、訪問した際の資料や写真などに基づいて対話が行われたそうですが、スケッチや写真を用意することで、参加者のクリエイティビティ(創造性)を刺激するよう取組んだといいます。ワークショップでの対話は視覚的に訴求力のある資料にまとめられ、省庁に提出されます。また、ワークショップの最後には、カフェオーナーに対して、アドバイスも行われています。

2日目は、初日のまとめ・提案に基づき再度現場へ。パンフレットの案を持参したり、PCを持参しながら、更にブラッシュアップを図っていきます。オーナーとも直接話し、現場にも訪れ、関係省庁と話し合いながら作業を進めることで、「伝わるかどうか」の具体的な感覚をもって取組めます。ワークショップを通じて「正しく飲食店をオープンする時の注意事項」について、行政官が記す内容が良くなったといいます。

マインドラボ

こういった省庁連携での取組みにより、必要な情報が分かりやすく伝達されることの重要性が認識され、迅速に伝えることの重要性も認識されたといいます。事業者にとっても、必要な情報をどこで得ていいのか分からないという課題もあり、事前に入手可能であることも告知されたといいます。

マインドラボが設置されたのが10年前。現在の形になったのが7年前です。マインドラボの取組みによって省庁の人達に与えた影響として、決定的に言えることとして示されたのが、「これまでは四角四面に、文章に落とし込むことが重視されたが、施策を受ける対象者をイメージできるようになった」という点です。

マインドラボのベースになっている方法論は、
 1)ケーススタディ、ケースストーリーを用いていること。
 2)プロトタイプを発案・考案し、今まで一度も無かったものを創ること。
の2つだといいます。設立当初からこの手法が用いられ、常に改善が行われているといいます。民間のIT企業などでは一般的に使われていたものの、公共部門ではこうした手法は使われていませんでした。上述のカフェのワークショップなどは、まさにケーススタディ。

ケースストーリーを用いた取組みとして例示されたのは、「様々な地域から人材を招聘する」というテーマがあった場合について。この場合、実際に日本など国外から移入してきた人を招き、普段の生活や仕事などについてインタビューを行い、ビデオなどにまとめたケースストーリーを作り、関係省庁に配布し、1つの議論の基盤にします。このケースストーリーを基に、ブレインストーミング的なワークショップを行い、デンマークにきた人達に深く入り込み、どういう環境にあるのかを把握し、「企業が優秀な人材を外国から採用するにはどうすれば良いのか」などを、自分達にできることを提案しながら対話を重ねます。

マインドラボ

こういった取組みを通じてワークショップに参加した人達は、大企業などで働く外国人の労働環境について、「いかに知らなかったか」を学んでいきます。現実に直面しながら更に、デンマークに来たが帰ってしまった人達が、なぜ帰国してしまったのかを調査・把握していきます。新しい施策を講じるにあたり、ケースストーリーを通じて「特定の誰かが使っている言葉」を各企業や省庁が獲得し理解することで、分析的な言語を使うのではなく、伝わる言葉を使うことの重要性を認識していくといいます。

マインドラボが設置されたのは10年前ですが、当時は経済成長省単独での取組みでした。行政に新たな息吹を入れ、住民参加の契機にすることを目的とされたものの、当初の3年間は新たな効果が生み出せなかったといいます。その後3つの省庁(財務省、雇用省、経済成長省)が協力し、7年前に再編されました(現在は財務省が抜け、児童教育省が入った)。この3つの省庁が一緒になって設置できた背景には、
 1)3つの省庁が、業務上重なる部分があるため、日常的に対話が行われていたこと。
 2)3つの省庁の事務次官が、個人的に密接な人間関係があったこと。(最も重要だった)
という2つの要素があるといいます。

これまで様々なメディアが取り上げ、外部からの評価を得たことにより、事務次官クラスの人達も、マインドラボに対する理解を深めているといいます。マインドラボの契約自体は5年毎の見直しとなっており、今年の1月に向こう5年間の契約が結ばれ、今後は更に1省メンバーが増える可能性もあるといいます。

3省から予算を得て、省庁横断的な役割を果たすマインドラボの取組みは、内部機関としての機能とともに、外部的、第3者的な役割も果たしています。その事例の1つが、デンマークで行われている、大々的な小中学校制度の改革について。改革の内容に関しては各省庁が公開しておらず、学校の先生達も教育内容や、労働環境について、改革の中身を心配しているといいます。そういう状況下でコムーネ(基礎自治体)が調査を行うと疑心暗鬼になってしまい、十分な調査が行えないという課題があるといいます。しかしながら、マインドラボのスタッフのように、中立的な立場で現場に入ると、話を引き出しやすくなるといいます。行政の内部に置かれ、行政情報にアクセスできる権限を持ちつつも、中立的立場として外部コンサルタント的振る舞いが可能であるという役割も、マインドラボの見逃せない機能です。

マインドラボ

マインドラボ内にある、球体型の部屋

マインドラボ

球体の中は、壁がホワイトボードになった会議室。マインドラボの施設内は、クリエイティブな遊び場であり、シリアスな場でもあって欲しいと、インテリアデザイナーの手により設計されています。

マインドラボ

マインドラボが講演などを行った場所を示す地図。日本にもピンが。

Comment

  1. [...] となりました。会談の詳しい内容は、横浜市議会局経由で議長に提出します視察報告書か、みんなの党横浜市会議員団に分析レポートと一緒にアップする予定になっています。もしくは伊藤大貴市議のHPか藤崎浩太郎市議のHPも参照してください。非常に詳しくまとまってあります。 [...]

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