本日(1月29日)は、所属会派の仲間と仙台市の中学校給食に関して、視察を行ってきました。私たちは、横浜市でも中学校給食を実現しようと、これまで議会で何度も市長や教育長に求めてきています。
仙台市では昭和42年に中学校での完全給食が開始されています(小学校は昭和26年)。中学校給食の早期実現の観点から、「センター方式」が採用されてきました。現在は市町村合併の結果、単独調理場方式(自校調理)が12校、親子方式が2校、共同調理場方式(センター方式)が49校となっています。
今回視察で訪れたのは、現在6か所(今年5か所に統合)あるセンターのうち、「荒巻学校給食センター」です。まずは調理中の施設をぐるっと拝見。平成15年竣工で、ドライシステムを初めて導入したセンターで、国の衛生管理基準順守のために徹底した管理が行われていました。食材もミニトマト以外は全て加熱処理。加熱された食材のうち一定の温度に下げる必要があるものは、菌の繁殖を防ぐために急速に冷やす設備なども設けられていました。
直営センターとPFIセンターと費用
仙台市の給食センター6か所のうち、完全直営は2か所、運営委託・部分委託は2か所、PFI方式は2か所となっています。この内昭和50年代に建てられた宮城学校給食センターと、加茂学校給食センターは、老朽化のため廃止、統合され、1つのセンターとして2016年8月から運用される予定となっており、こちらもPFI方式が採用されています。
直営とPFIの大きな違いは、やはり費用。ご説明頂いた中で、直営(荒巻学校給食センター)とPFI(高砂学校給食センター)の比較が行われました(どちらも調理能力11,000食)。施設整備費は直営がおよそ38億円に対し、PFIは29億円。人件費や光熱費など運営にかかる費用が直営で年5.1億円に対し、PFIは年4.6億円。
運営経費で大きく差がでるのは、やはり人件費。直営の場合、事務職(正職員)4名(行政)、栄養士(正職員)4名(行政)、栄養士(非常勤職員等)1名(行政)、調理員(正職員・正社員)20名程度(行政)、調理員(パート・社員)90名程度(行政)となります。一方委託やPFIの場合は、事務職(正職員)4名(行政)、栄養士(正職員)4名(行政)、栄養士(非常勤職員等)1〜3名(行政)、調理員(正職員・正社員)20〜30名程度(民間)、調理員(パート・社員)60〜70名程度(民間)となります。
現行のPFIセンターも、これから新設するPFIのセンターも、BOT方式(施設整備後、施設を民間事業者が保有し、運営期間終了後に所有権を市に譲渡する方式)となっています。他都市のPFIセンターではBTO方式が主流とのことですが、新設するセンターでもBOTを採用したのは、震災などで施設の修理などが必要になった場合、民間が施設を所有していれば民間の判断でスムーズに復旧できるが、行政だと補助金やら何やらの意思決定に時間がかかってしまい、復旧も遅くなってしまう可能性があるからとのこと。
配送
給食の提供は年に170日ほど。センター方式では調理場から各学校へと、食器や食缶を配送者で届けることになります。概ね配送車1台(2〜3t車)につき、2校程度を分担することになっていて、1運行(片道)につき、概ね30分程度の範囲内になるよう配送計画を設定しているといいます。こうした計画や車両数などはPFIの場合は民間に委ねられることになります。PFI方式の高砂センターでは19校8,784名の配送先に対して配送車14台、同じくPFIの野村センターでは25校8,888名に対して11台、直営の荒巻センターは22校9,145名に対して14台ということで、対象学校数やエリア、センターからの距離などで、車両数も異なっていました。
センターからの配送で心配されるのは、遅延。仙台市でも給食時間に配送車が間に合わなかったことが何度かあったそうです。その多くは降雪など事前にある程度分かっていたケースで、1本しかない道路が事故で通れなくなったケースなどは稀だそうです。またそうした遅延するケースでは、出来る限り早い段階で学校に連絡をいれて、給食時間をずらしたりすることで対応を行っているそうです。
アレルギー対応
仙台市の小・中学校で食物アレルギーを有する児童・生徒は年々増加しています。平成27年5月の調査では、3,591名の児童生徒が食物アレルギーを有していることが判明しています(全体の4.5%)。その内、給食のメニューで提供される食物に関するアレルギーを持つ児童生徒がおよそ2,000名。この2,000名には何らかの対応が行われていて、自校調理の場合は給食室で対応が行われたり、重篤な場合は家庭から弁当を持参してもらったり、配膳の際に取り除いたりとケースごとに対応が取られています。また現在2か所あるPFIの給食センターにはアレルギー専用調理室が設けられていて、それぞれおよそ30名分、合計60名分ほど、調理が行われています。
平成20年に1度だけアレルギーの事故があったそうですが、幸い命に関わるものではなかったそうで、その後アレルギー対応の管理が一層徹底され、その後事故は起きていないそうです。アレルギー対応が必要な児童生徒毎に食缶なども分けられ、2人がかりでチェック作業が行われています。
その他
給食の残食率は、平成26年で小学生9.5%、中学生で14.0%となっています。食べ残しや野菜くずの90%は、仙台市堆肥化センターにて肥料となり、地域の方々に無料で配布されています。この残食については、給食時間が短いことが1つの原因として認識されていました。小学校では45分の給食時間を確保している学校が約7割ですが、準備片付けを抜かすと会食時間は25分ほど。中学校では35分の給食時間を確保しているのが約6割ですが、実際の会食時間は20分ほど。児童生徒も給食を残す理由の1つに「時間が無いから」と答えているため、仙台市では給食時間を長くすることが課題となっていました。
センターから配送された食缶や食器などは、各学校では給食の時間まで施錠された場所にて保管されます。そのため、配送された給食にいたずらをしたりすることができないようになっています。これまで、勝手に食べてしまうとか、異物を混入するといったようないたずらは起きていないということでした。
実食
最後に本日実際にセンターで調理された給食を、頂きました。ご飯は宮城県産ひとめぼれが、年間通して使われています。わかめのサラダに、鶏肉の味噌だれ、吉野汁というメニュー構成。塩分は年間通じて1食平均2.5g。栄養士さん達が献立を考え、調理の現場にいらっしゃるので、子どもたちの栄養のバランスを考えたメニューとなっています。吉野汁は出汁を効かせて、塩分少なめでも旨味がたっぷり。配送用の食缶も保温効果の高いものが用いられているので、スープ類は70℃くらいで子ども達に提供されています。
※参考:議会で藤崎が中学校給食を取り上げたところ。
・横浜市会平成27年度予算第一特別委員会 教育委員会審査(2015.3.3)
・平成25年度決算特別委員会決算第一・決算第二特別委員会連合審査会(2014.9.26)
・横浜市会平成25年第3回定例会本会議(2013.9.18)
・横浜市会平成25年度予算第一特別委員会 教育委員会審査(2013.3.12)
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