2022年8月2日、今年度所属する常任委員会「健康福祉・医療委員会」の視察で、富山県庁を訪問しました。健康対策室健康課からは富山県における健康課題と健康増進施策について伺い、高齢福祉課からはeスポーツを活用した高齢者の社会参加促進と健康寿命延伸について伺いました。
1.健康寿命日本一を目指して
富山県の健康課題として、健康寿命は伸びているものの、平均寿命との間に男性は約9年、女性は約12年の差があり、死因の約半数は生活習慣病である、ということが挙げられました。生活習慣病の背景にはメタボリックシンドロームがありますが、メタボ該当者(予備群含む)の割合が29.6%と全国11位で、そのうち市町村国保加入者に限ると34.6%で全国3位と、該当者が多いという問題があります。
背景には、冷凍食品購入額全国2位、揚げ物購入額全国2位、惣菜購入額全国5位、と脂質や塩分を摂りすぎの可能性や、1日あたりの歩数が男性は全国29位、女性は37位と、運動不足も背景にあると考えられています。「睡眠で休養が十分とれていますか?」という調査では、「いいえ」が男性も女性も共に1位と、ちゃんと眠れていない県民であることも分かっています。
こうした問題意識から富山県では、「富山県健康づくり県民会議」を設置したり、「とやま健康企業宣言」によって健康経営を推進したり、「とやま健康経営企業大賞」によって先進的な取り組みをする企業を表彰しつつ、取組事例の共有が行われるなど、機運の醸成が図られてきました。
みんなで参加する健康イベント「ウォーキングファンド」
富山県の運動を促進する事業の中で興味深かった点は、「みんなで一緒に目標に向かう」仕組みを設けている点です。横浜市が全国で先駆けて実施した「よこはまウォーキングポイント」は全国で同様な事例が数多く生み出されていますが、富山県でも「元気とやまかがやきウォーク」というアプリが作られて、現在2万ダウンロードを突破しています。沢山歩いてポイントを貯めると、抽選で商品がもらえる仕組みになっています。
このアプリを使って2021年11月の1ヶ月間行われたイベントに「ウォーキングファンドキャンペーン」があります。このイベントは、アプリをダウンロードしてアプリ内のミッションに参加すると、参加した人たちの合計歩数で社会貢献が行われるという企画です。具体的には、
・総歩数1億歩達成で子ども食堂への飲食料の寄付
・2億歩達成で社会福祉施設へ県産材ベンチの寄付
・3億歩達成で動物愛護団体に保護動物の飼育物資を寄付
となっていて、個人の頑張りが個人の健康に寄与するだけでなく、皆のがんばりが社会貢献につながるという動機づけ、誘引が設定されているというものです。このイベント期間中、アプリのダウンロードが大幅に伸びたということで、アプリやイベントの注目が高まり、参加意欲の喚起につながったことがわかります。最終的には合計歩数は4億4千万歩にまで達していて、自分自身に商品が当たることよりも、社会貢献につながることが、参加意欲につながったのではないかと、県職員の方は分析されていました。注目を集めたことで、企業の協賛も多く集まり、会社単位でイベントに参加した事例もあったそうです。自分の健康のためのウォーキングが、社会貢献に昇華されていて、面白い企画だと思いました。
また「ぐっすりとやまキャンペーン」という、睡眠不足を解消するためのイベントが2021年9月3日〜10月31日に行われています。こちらは①3人〜10人のチームをつくって参加することがルールになっています。その他のルールは、②3人以上で、3つの目標を、3週間続けるということと、③8割以上の目標達成、となっていて、①〜③のルールを達成すると、抽選で商品がもらえるという内容になっています。参加者からは、「チームで取り組むことで、励ましあえて継続でき、効果を実感できた」という趣旨の感想があったそうです。
自分一人で健康づくりに向き合うことが大変で、なかなか長続きしないという方も多いと思います。そこに、アプリを活用して社会貢献という意味を付加したり、仲間と一緒に目標に向かって頑張るという要素を入れることで、参加意欲が高まり、結果が出ていくというのは、良い仕組みだと思います。
2.eスポーツを活用した介護予防
富山県の人口は1998年にピークを迎え、人口減少が続いています。高齢化率は32.3%となり、今後も人口減少と高齢化率の上昇が見込まれています。そうした中で、介護予防を目的として「eスポーツ」が導入されています。富山県立大学と株式会社ZORGEがキープレイヤーで、県立大学は介護予防効果の高いゲーム開発を行い、㈱ZORGEはeスポーツを事業として行う企業として、富山県と連携して事業が実施されています。eスポーツに参加した方同士のコミュニケーションや、脳への刺激、手指、腕などの運動、集中力や心身の健康増進が目指され、社会参加機会の拡大によって、介護予防を促進することが目指されています。
具体的には、公民館等を利用した「eスポーツ体験会」が実施されていて、令和3年度実績としては5会場15回の開催で、会場にもよりますが参加者の平均年齢は70歳〜78.8歳となっていて、10名から30名くらいが参加されています。使用されているゲームは、太鼓の達人(リズムゲーム)、グランツーリスモ(カーレース)、ぷよぷよ(パズル)、窓拭きの達人(県立大学開発)、の4種類。県立大学の教員や学生、㈱ZORGEの社員、リハビリ専門職(理学・作業療法士)、県高齢福祉課職員(保健師・事務職)が運営スタッフとして参加しています。
参加者からは、楽しかった、またプレイしたい、など好意的な感想が多く、新たな参加者が得られ、交流や参加の場として、効果が期待されていました。一方で機材の調達や管理、活動の展開をしていくためのノウハウの普及による高齢者自身での運営が可能になる支援の必要性が課題とされました。
1983年にファミリーコンピュータが発売されてから40年近くが経ち、初期のファミコン世代が高齢者になる時代になっています。私からは、ファミコン世代が高齢者となり、eスポーツをゲートボールやグラウンドゴルフのように楽しみたいと思う人が増えていくことが予想される中、行政主導のeスポーツから、住民主体でサークル化していく道筋が今後必要ではないかと質問しました。県の担当者からも「その通り」ということで、今後自立した活動にできるように、老人クラブ等とも連携して普及させていく考えにあることが、説明されました。
オンラインゲームもどんどん普及していっているなかで、高齢者でも若者でも一緒に楽しめるeスポーツが、地域の交流や、地域対抗戦を通じた地域間交流、世代を超えた交流といった様々な交流を生み出し、外出機会や参加機会の創出につながり、介護予防に効果を発揮するのではないかと期待します。
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