中心市街地での医療・福祉・健康拠点づくり。富山市のコンパクトシティ。

2022-08-04 08:56:37 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2022年8月3日、今年度所属する常任委員会「健康福祉・医療委員会」の視察で、「総曲輪レガートスクエア」について現地に訪問し、富山市役所企画管理部企画調整課を始め関係の方々から取り組みについてお話を伺いました。総曲輪レガートスクエアは、富山市の中心市街地にPPPの手法を用いて建設された、医療・福祉・健康の交流拠点となっています。

富山市といえばコンパクトシティの取り組みが有名です。レガートスクエアが位置している場所は、元々は小学校があった跡地です。昭和57年から平成19年にかけて、中心市街地にある小学校7校の児童数は、市内全体の減少率50%よりも高い、70%もの減少という状況にありました。富山市では、この7校の再編整備を計画し、2校(1小学校と1小中学校)への統合を行っています。そこで出てきた空き地については売却をせず、定期借地権を設定し有償貸付での活用という方針で跡地利用が検討されていきます。売却をしない方針にしたのは、好立地の広大な土地は一度手放すと返ってこないためです(私もこの考え方は重要だと考えます)。

コンパクトシティ

レガートスクエアの中心的施設となっているのは「富山市まちなか総合ケアセンター」で、富山市がDB(デザインビルド)方式を用いて整備を行い、完成後所有権が市に引き渡されています。同じ敷地内には、民間部分として学校法人青池学園、富山市医師会看護専門学校、立体駐車場、フィットネスクラブ、コンビニ等が整備されています。公共部分と民間部分は民間事業者による自由提案で公募され、大和リースグループが整備し、2017年4月に供用開始となっています。

まちなか総合ケアセンターには、「病児保育室」、「まちなか診療所」、「産後ケア応援室」、「医療介護連携室」、「まちなかサロン」、「地域連携室」、「こども発達支援室」が設けられています。サロンでは多世代にわたる市民が参加できるイベントが開催され、まちなか保健室や健康講座が定期的に開催されています。特徴的だったのは、「病児保育室」と「産後ケア応援室」と「まちなか診療所」です。

「病児保育室」は病児保育専門士、看護師、保育士が配置されていて、通常の医師の診断に基づいた保育の他に、「お迎え型」が提供されています。お迎え型は保育園で預かられている子どもが体調不良になった際、保護者からの依頼に基づいて病児保育室のスタッフが子どもを保育園に迎えに行き預かるという仕組みで、行政直営での実施は全国でも先駆けの事例となっています。保護者からすれば、仕事を早めに切り上げて迎えに行く必要がなく、安心して子育てを行える良い仕組みです。

「産後ケア応援室」は産後うつや虐待を予防するための施設で、5部屋ある宿泊室で最大6泊7日の宿泊利用が可能となっています。全体の75%は1泊2日の利用で、リピーターが多いそうです。施設が新しいこともありますが、ホテルと変わらないきれいな部屋になっていて、利用者の目線で安心して利用できる環境が用意されていました。「まちなか診療所」は在宅専門診療所で、施設内での外来診療は行わず、訪問診療のみを行っています。地域の診療所等んお在宅医療サポートや、病院等から在宅への移行支援、研修などが行われています。

レガートスクエア全体の運営には、認定NPO法人まちづくりスポットが中間支援組織として入っています。交流スペースの「まちなかサロン」での地域コミュニティ活動の活性化や、人と人とが支え合える交流の促進をコーディネートし、ギャザリングスペースという貸しスペースの運営を行うことを通じて、レガートスクエアの活用によって公民一体となって市民の健康や幸福な生活が目指されています。

富山市まちなか総合ケアセンター

目標と指標と学校の魅力化

富山市では2005年から「中心市街地活性化基本計画」が策定され、現在は4期目(2022〜2027年)に入っています。レガートスクエアの整備の目的として、「社会経済文化活動が活発に行われるとともに、日常生活に必要な機能や子育て・教育・医療・福祉等に関する機能を集積したエリアとして整備」するということが示されています。第4期の中心市街地の目標としては、1.来街者が回遊する魅力的な都市空間の創出、2.商業・賑わいの再生による活力ある歩きたくなるまち、3.多世代が集い、良質な暮らしを享受できるまち、という3つの目標が掲げられています。この目標を測定する指標としては、①市内電車一日平均乗車人数、②中心商業地区及び富山駅周辺地区の歩行者通行量(日曜日)、③-1中心市街地の居住人口の社会増、③-2中心市街地の健康な高齢者の割合が設定されています。

レガートスクエア周辺には近年マンションが増え、小学校の児童数も最小だった2007年の839人から、2018年には1,020人へと増加しています。再編した小学校・小中学校(中央小学校芝園小・中学校)についても、校庭を人工芝にしたり、屋上に可動式屋根のあるプールを設置したりと魅力化し、通いたくなる学校施設にした点も、中心市街地での児童数増加につながっていると言います。これまでの計画と目標値の達成については、コロナ禍で厳しいものがあったそうですが、取り組みの方向性は間違っていないと考え、信じて取り組みを進めているとのことでした。

総曲輪レガートスクエア
中庭

ギャザリングスペース
ギャザリングスペースの和室

総曲輪レガートスクエア

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