シンガポール視察1日目:シンガポールZOO

2012-04-11 02:19:28 | カテゴリ:活動報告


シンガポール視察第1日目は、シンガポールZOOを訪れました。横浜市内には、ズーラシア、野毛山動物園、金沢動物園という3つの動物園があります。しかしながら、この3つの園を観光資源として十分に活用できていないのではないか。どのようにしたら、多くの観光客に訪れてもらえる、魅力ある園にできるのか。そういった問題意識から、訪問しました。(シンガポールZOOはシンガポールの有料観光スポットの中で第3位の来客数(2009年)です。)

まず何よりも驚いたのが、徹底したマーケティングが行われていることです。シンガポールZOOをはじめ、ナイトサファリ、バードパークの3園をワイルドライフ・リザーブ・シンガポール(WRS)が運営をしています(年内にリバーサファリが完成予定なので、それを含めると4園)。WRSには約500名のスタッフが居るということですが、その中には22名のマーケティング担当者がいて、広告・プロモーショングループ、スポンサーを探すグループ、広報・IRグループの3つに分かれています。また営業部門には16人のスタッフがいます。この体制の中で、3園それぞれの強みや課題、ターゲット、広報メディアの選択などが行われています。バードパークは子ども連れの家族がターゲット、ナイトサファリはティーンエイジャーからその上の世代、シンガポールZOOは子ども連れ家族と、マレーシア人、といった具合です。一方例えばナイトサファリの課題は料金が高い、暗いなどといったことが挙げられていました。こうした分析に基づき、3園は明確な棲み分けが行われています。

徹底的に分析された情報をもとに、広報活動も工夫が凝らされています。例えば広告の配置では、まず飛行機の機内に広告があります。次に手荷物受取所での広告。そして空港のホール、タクシーの中、道路沿いの広告、ホテル内、オーチャードロード、その他観光地という順序で、シンガポールを訪れる観光客が、あらゆるポイントで動物園の広告を目にするように導線を築いています。また個人旅行客が多い国と、パッケージ旅行が多い国の分析もされています。マレーシアやオーストラリアは個人旅行が多いので、当該国でTVCMを放映したり、旅行雑誌に広告を掲載したり、インターネット広告に注力したりと、マスメディアを活用する戦略が取られています。インターネット広告では、最近増えているLCC(格安航空会社)のWebサイトでの広告や、SEM(サーチエンジンマーケティング)の活用が行われ、eDMで8万5千人にイベントの案内を送ったりしていました。一方、パッケージ旅行の多い中国や韓国などに対しては、観光局と協力したプロモーションやプレスカンファレンスを用いているということでした。これらの取組みの結果、3園は黒字経営を続けていると言います(バードパークは以前赤字だった)。WRSにはシンガポール政府の出資は無く、完全に民間と同じ経営が行われ、納税をしているということでした。

また、教育にも力を注ぎ、学校や教育省と協力なタイアップを行っているということでした。私たちが訪れたときも、複数の学校の小学生が来園していました。子ども向けには学習用のドリルなども用意されていました。園内のあちこちで、一生懸命ドリルに取組む子どもたちを見かけました。私たちも園内を見学させて頂きましたが、動物との距離が近いこと、園内を回るトラム用に通路が広くとられていること、独特の臭いがしないこと(1日2回の清掃と、消臭剤の効果)、案内板やゴミ箱まできめ細やかに世界観の統一が計られていることなど、参考になることが沢山ありました。

そして、もう1つ重要なポイントが、シンガポールZOOも横浜のズーラシアも、どちらもアメリカのサンディエゴZOOを参考にしてつくられているということです。ヒアリングを行ったマーケティングの方からは、シンガポールZOOの設計段階でどこかの動物園を参考にしたかは分からないということでしたが、運営においてはサンディエゴZOOをベンチマークとして、マーケティングや人材育成を行っているということでした。一方ズーラシアは、設計こそサンディエゴを見習っていますが、残念ながらマーケティングや人材面は、そのノウハウを十分に見習えていないというのが現状です。今ある資源を把握し、磨き上げ、発信し、集客力を高める。その為に必要なことを行う。そういったことが横浜市の動物園にも求められています。

(※写真やリンクなどは帰国後更新予定です。)

Comments 2

  1. 檜垣 徹 より:

    シンガポールに5年半住んでいました。
    シンガポール動物園はマーケッティングも素晴らしいですが、熱帯保護林をしっかり守る体制で動物園を観光地として活用していることがもっと素晴らしいです。小さな国で都市化が進んでいますが、その地域は原生の熱帯雨林が守られています。

    もうひとつ見てきていただきのは、シンガポールの学校の校庭は芝生だと言うこと。子どもとっては最適の学校環境です。さらに街路樹とビルの外壁の緑化もご覧下さい。都市緑化の可能性がよく分かり、横浜をグリーンガーデンに変えていくヒントがあると思います。
    東京都は校庭緑化事業を推進していますが、横浜市は全く進んでいないと感じています。是非次の世代の子ども達のために、校庭の芝生化と都市のオアシスとしての緑化をお考え頂けると幸いです。(青葉区住民)

    • 藤崎浩太郎 より:

      返信遅くなってしまいまして、失礼しました。

      今回は学校へは訪問できませんでしたが、シンガポールの教育環境も今後見てみたいと思っている点の1つです。今回はカリキュラム上、英語や数学に力を入れていることや厳しい競争環境ばかり聞きましたが、その一方では学校施設を豊かにしている側面もあるんですね。街路樹やビルの緑化は目を見張るものがありますよね。1960年代から緑化計画がスタートしているというので、驚きです。「この国をこうしたい!」という首相の強い意志が、シンガポールの魅力を高めていますよね。

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