11月30日、所属している「観光・創造都市・国際戦略特別委員会」が開かれました。今回は建築照明デザイナーの面出薫氏を参考人(講師)としてお招きして、「歴史的都市と建築の照明デザイン」というテーマでお話いただきました。面出氏は、東京駅丸の内駅舎の照明や、シンガポールの中心市街地における照明マスタープランの策定、大阪市の光のまちづくり推進委員会などでご活躍される、高名な方です。先生からのお話で印象的だったのは、照明デザインは観光施策として行われることが多いが、観光は半分で、もう半分は住民の誇りにつながるような取り組みが重要だという指摘です。
※特別委員会全体の様子は、こちらのリンク先からご覧ください。
横浜市会インターネット中継
私もこれまで文化観光局等とは、照明や夜景、水辺空間の活用にもっと力を入れて、都市の魅力づくりにつなげるべきではないかと議論を行ってきました。観光消費額をあげて、横浜市の経済を活性化させようと、様々な施策が行われています。そのためには、滞在時間を長くし、夜食事をしてもらい、横浜市に宿泊してもらう、という行為を増加させることが必要です。
先生の講演後の質疑においては、
・照明デザインによって観光客の動線を作り出すことが重要ではないか。
そうしたことが可能かどうか。
・昼の光はコントロールできないが、夜の照明はコントロール可能であり、
都市ブランディングにとって他都市との差別化が可能であり、
横浜市の魅力づくりに重要ではないか。
・市民の誇りになる夜景づくりが、ひいては観光にもつながると考えるが、
投資を行うには、経済効果をどう考えるといいか。
といった質問を行いました。
以下、質問1〜3は質疑の要約です。
質問1 動線について
藤崎 横浜の夜景や水辺を活かすには、照明は欠かせないと考えています。シンガポール・リバーも色んなお店が並び、照明で照らされ、大勢の方が歩き、その先に何があるのだろうと、つい歩きたくなります。その先に行くとクラークキーがあり、キレイな明かりで照らされ、水面に反射し、なんとも言えない夜の空間を演出されていることが印象的でした。横浜の経済を考えると、観光による消費を生み出すことが重要だと考えています。横浜の魅力を伝えるために、照明を用いて、人の動線を生み出していくことが、今後必要ではないかと考えている。照明によって、動線を生み出していくことは可能なのでしょうか?
面出氏 とても大切なポイントを言っていただいた気がします。どこの都市に行っても、案内がなくても、光で導くことはとても大切なことだと思います。ホテルなんかでも、場の連続性を考えて、動線を作っていく。横浜のように沢山の魅力があるところでは、夜の回遊性を考えると、光で自然に導かれていくという作り方をすることが大切。自然に目線を誘うような作り方を、考えている。「ここに行きなさい」という矢印ではなく、自然に足が向かう作り方を、街ぐるみで取り組めると素晴らしい。
質問2 都市ブランディングにおける照明について
藤崎 みなとみらいのスカイラインなどは、横浜市の素晴らしい都市計画・開発であったが、その先に進めるには先生のご指摘のような取り組みを行うことが、横浜市のこれからの都市ブランディングにとって重要だと考えます。昼の太陽の光はコントロールできないが、夜の照明はコントロールができるもの。海外から「横浜の夜景を観たい」と思ってもらえるような光を作り出すことが、今後の横浜市にとって重要ではないかと考える。シンガポールにおいて都市ブランディングにおける、光の位置づけについて教えてください。
面出氏 シンガポールは50年前の汚い街から、リー・クワンユーによって川をキレイにしたりと、色んなことが取り組まれてきた。僕たちは50年のシンガポールがどうやって光とともに建設されたかの年表を作り、これから50年先どっちに行くのかを考えた。暑い国であるシンガポールでは日中にはあまり外に出ない。夕暮れになると子どもが遊び出したりする。赤道直下の国では「この人達は影を求めているんだ」と、昼間はキレイな影を作ることが大事なんだということで、そのために緑などが用意されている。すごく大切なアクティビティは、夕方から夜にある。日が暮れた後にどういう街づくりができるか、がテーマになってきたことがあり、早くから「シンガポールでなければできない夜景を作りたい」ということを潜在的に考えていた。気候風土と共に、シンガポールが世界中に胸を張れるのは夜の景色だということを、リー・クワンユーの時代から培ってきたのではないか。昼は太陽の光によって隠しようがないが、夜は意図を持って「こうしたい」という景色をデザインできる。
質問3 市民の誇りと経済効果について
藤崎 先生の冒頭の話では、半分は観光であり、半分は住民の誇りだということがありました。横浜は東京の周辺の住宅街として栄えてきた部分と、開港から160年近い港町として栄えてきた他の都市では得られないアイデンティティを持ってきた部分があります。横浜らしさを活かしていくには、「俺の住んでる横浜の夜は凄く良いんだよ!」と住民が誇れることの先に、横浜の成長があるのではないかと考えます。横浜であれば、都内で17時か18時に仕事が終わった後に食事に行ける距離にあることは横浜の長所。折角だから横浜で打ち上げをしようとか、横浜の夜景の中で食事をしたいから、今日の会議は横浜でやりましょうとか、そいうことが可能なのが横浜。そのためには、市民が、住民が、働く人達が、「横浜って良いんだよ」と言える夜景が重要ではないかと考えます。そのための投資を市だけでなく、民間企業も一緒に行っていくには、経済効果をどう考えておくと、市民にとっても、観光としても、横浜の照明に力を注げるのかを、教えてください。
面出氏 やっぱり「面出さん、それやるとどのくらい観光客来ますか?」と聞かれる。リヨンでも、ストックホルムでも光を使ったイベントが行われている。観光という意味では日常的なものではなく、フェスティバルのようなものを、スマートに365日に細かくプログラムされたり、ウィークエンドに変化をさせたりすることで、「行ってみたいな」という仕掛けは必要だと思う。ただちょっと間違えると、レーザーがバンバンでるようなものになってしまうが、観光客には良いが、毎日見ている人はうんざりしてしまう。それは横浜らしくない。スマートな、横浜に行ってみたいと思われるような、光のイベントや、アートワークも必要かもしれない。時系列のものを入れていくとプラスになるのではないか。大阪でも「光の歳時記」といって、1年の季節がかわる中で、紅葉の木をライトアップするだけでなく、光、明かりにまつわる色んなことが細かくある。「横浜というのは明かりが沢山仕込まれている、魅力ある明かりを見に行こうという」ストーリーづくりというのがあるのではないかと思います。
これらの質問は、これまで市とも議論を行ってきたポイントでした。
・横浜市会平成29年度第2回定例会一般質問より
11 観光都市としての魅力づくり 質問32部分
・文化観光局平成28年度決算審査より
5 コンテンツとの連携による魅力づくり 質問17部分
先生のお話や、特に質疑において、我が意を得たり、とも言えるような議論ができて、得るものの多い委員会となりました。文化観光局と都市整備局からも職員が出ていたので、今後の議論にもプラスになると良いなと思います。
藤崎から面出先生への質疑の動画はこちら
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