常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察3日目は、秋田市と岩手県を訪問。秋田市在宅子育てサポート事業についてと、秋田市の学力向上に係る取組みについて。そして岩手県立図書館の震災資料コーナーの取組みについて、お話を伺い、開架、閉架の蔵書を拝見してきました。
在宅子育てサポート事業
秋田市では、保育所や幼稚園に入園していない、1歳以上の就学前児童がいる家庭を対象にして、児童1人あたり16枚つづり1セットのクーポン券を交付しています。事業の導入の経緯としては、子育て支援策の対象として、保育所や幼稚園に就園している児童に目が向きがちであるが、在宅で子育てをしている家庭にも何らかの支援が必要ではないかという考えがあってのことといいます。特に近年は、核家族の増加などにより、隣・近所との付き合いが薄れてしまいがちな中で、在宅で子育てしている保護者が、自宅へ閉じこもりがちになったり、孤立感を強めているケースもあり、こういった状況の改善のためにも、親子の多様なニーズに対応する複数のサービスを提供することとなったということです。
提供されているサービスは、5つに分野に別れます。
(1)「わんぱくキッズのおでかけプラン」:自宅以外で親子が触れ合うとともに、同一地域に住む親子同士が知り合いになれる機会を設けることにより、地域内のコミュニケーションを深め、保護者の孤立感や子育ての疲れの解消を図る。
⇒親子で出かける日帰り遠足
(2)「在宅ママ・パパゆっくりプラン」:日頃の育児の負担軽減とリフレッシュを図る。
⇒保育施設などの一時預かり料金の助成
(3)「親子の絵本プラン」:絵本の読み聞かせを通して親と子のきずなを深めながら、家庭における幼児期の情操教育に資する。
⇒対象となる絵本の購入費助成
(4)「なかよし親子でおでかけプラン」:在宅子育て家庭の外出の機会を増やし、親子のふれあいを促進する。
⇒動物園など公共施設の入場料等の助成
(5)「はいポーズ!プラン」:家庭の思い出となる写真を撮影する機会を増やし、家族のきずなの形成を促進する。
⇒家族の記念写真等の撮影料金の助成
平成24年度の実績としては、3,556人に交付(交付率79.75%)となっていて、ここ数年の交付率は横ばいであり、各家庭のご都合もあることから、実態としては高い配布率になっているのではないか、という認識をされていました。交付したクーポンが56,896枚、でその内利用されたのが49,965枚で利用率は87.81%。各プランの執行状況は、(1)わんぱくキッズおでかけプランが2,736世帯、5,507枚で11.0%。(2)在宅ママ・パパのゆっくりプランが2,434人、6,718枚で13.4%。(3)親子の絵本プランが3,067人、25,546枚で51.1%。(4)なかよし親子でおでかけプランが1,870人、5,683枚で11.4%。(5)はいポーズ!プランが524人、6,511枚で13.0%、となっています。
利用者の80%近くからは、満足している声を得ているといいます。その一方では、タクシーで使えるようにしてほしいとか、プランを増やしてほしいという声もあるそうです。そうした利用者の声のうち、0歳児への適用を求める声があったことから、4ヶ月以上1歳未満の乳児とその保護者を対象に、ブックスタート推進事業を始めたとのことでした。
秋田市の学力向上に係る取組みについて
秋田県は全国学力・学習状況調査で1位を獲得しています。今回は、秋田市教育委員会の取組みを伺いました。2013年3月に策定された秋田市教育ビジョンでは、学校教育の基本方針を、「主体的に未来を切りひらき、協働して社会を創造する「自立と共生」の力をはぐくむ学校教育の充実につとめます。」と定めています。そして基本的な考えとして、「幼保小連携の推進」、「小中一貫した考えに立った教育」、「徳・知・体のバランスのとれたこどもの育成」、「お互いに認め合い支え合う心をはぐくむ」といったことが示され、これに基づき学力向上の取組みが行われています。
秋田市には小学校が45校、中学校24校、児童自立施設内学校1校(内小中各1校)、高校2校、専修学校1校、の学校があります。単級の学校数は、小学校14校(内複式5校)、中学校6校。児童生徒数は約23,000人(小:15,000、中:8,000)で、教職員数は約1,500人(小:900、中:600 非常勤講師除く)となっています。
秋田市の取組みのうちで重要な取組みの1つが、小中一貫した考えに立った教育の充実です。義務教育9年間を見通し、系統的、発展的な指導計画を立て、学習指導や生徒指導、生き方指導などについて、小・中学校が連携して取組んでいると言います。実践例としては「合同研修会や一斉授業研究会等をとおした連携(4小1中)」が示されました。課題別研修として4つの小学校と1つの中学校がグループ分けされ、その全教職員が秋季休業日を利用した研修会へ参加したり、キャリア教育の視点に立った小中9年間の教育のあり方について講演と演習を行ったり、コミュニケーションを円滑にするためのエクササイズを行ったりしています。また、中学校区一斉授業研究会も行われ、小学校外国語活動、中学校理科の授業に小・中学校教職員が別れて参加したり、学習指導の系統性を踏まえた授業定時を行ったり、授業参観後に小・中学校教職員参加の協議会を設定するなどの取組みが行われています。
印象的だったのは、教職員への研修を重視していることと、授業の改善のために授業訪問・参観に力が入れられていることです。教職員の研修は2013年には72講座用意されています。その研修の中にも、国語や算数等の教科研修において、小中学校教員の希望者が一緒になって研修を受ける内容のものがあったり、全市一斉授業研究会として、小中学校教員が原則全員参加する研修があったりと、小中一貫のという考えが反映されています。学校訪問による授業参観は、全ての学校、全ての授業に対して行われています。授業によっては数分しか参観できないことはあるものの、一つ一つを見て行くことで授業力の向上につなげています。
秋田市内ではいくつかの学力調査が行われています。4月には小6、中3対象の全国学力・学習状況調査。10月には秋田市独自で実施している、小5、中2対象の基礎学力調査、12月には小4から中2対象の秋田県学習状況調査、となっています。こういった調査の結果を、高い低いで評価するのではなく、学習力の現状把握や、今後の学力向上のための資料と位置づけ、分析し活用しています。これまで、全国学力・学習状況調査の結果を活かして、「学習指導改善の方策」の作成・各校への配布、秋田市の調査結果概要のウェブサイトでの公表が行われています。秋田市基礎学力調査の結果は、「授業改善のヒント」の配布、調査結果の分析、「授業改善ポイント」の作成・各校配布、「実践事例集」の作成・配布、として活かされてます。この秋田市基礎学力調査は、以前は業者が作成したものを利用していたものの、秋田市の現状や目標に合うものではなかったため、現在では市が独自に作成し、実施しています。
秋田は40年ほど前まで、全国的にも学力水準が低い位置にありました。その後学力が向上して行くわけですが、「学力向上」を目指したというよりも、徳育に力を入れ、キャリア教育に秋田市として取組んで来たという歴史があり、その手段の1つが学力向上だったといいます。秋田市教育委員会は頻繁に視察を受け入れていて、その度に秋田市の特徴を聞かれるそうですが、特別なことをやっているという実感はあまり持っていないと仰っていました。とはいえ、以前調査を行った大学の教授は、
(1)落ち着いた授業環境
(2)朝食を食べる生活習慣、予習復習を行う学習習慣
(3)先生達が熱心に授業をつくっている
の3点を、秋田市の特徴として指摘していたと言います。
実際学習状況調査の結果では、「毎日、ほぼ毎日朝食を食べる」小中学生の割合も、「家で自分で計画を立てて学習する」小中学生の割合も、全国平均を上回っています。「熱心に授業をつくっている」の指摘通り、様々な調査結果を活かして冊子を作成・配布したり、国が発行している分厚い資料を、教職員がより読みやすく、理解しやすくなるよう秋田市独自の「学習指導改善の方策」を発行したりと、沢山の資料が作成されている点も、その指摘通りだなと印象的でした。
ヒアリング終了後は市役所のそばにある、秋田市立旭北小学校の授業を拝見させて頂きました。
岩手県立図書館の震災資料コーナー
今回の視察の最後には、岩手県立図書館にお邪魔しました。岩手県立図書館では、2011年10月から震災資料コーナーが設けられ、図書や雑誌などが配架されています。2013年度業務実施計画にも、「図書館資料の収集、整理、保存及び活用」の中で「(4)東日本大震災及び津波関係の記録の収集については、喫緊の課題として、関係機関と連携を図りながら重点事項として取組む。その結果は、震災関係資料コーナーやホームページ等で情報発信する。」と規定されています。
震災から2年半以上が経過した現状において、大変になってきているのは、ボランティア団体など様々な活動資料の確保だといいます。販売されている図書や、新聞などの収集は比較的容易にできるものの、被災地や避難所などで行われた活動に関する資料はなかなか入手できない上に、時が経過して解散する団体もあり、活動そのものの把握も困難になっていると言います。これまでも、県や市町村が発行して臨時広報や災害対策本部情報、避難所だよりやボランティアニュース、一時的なイベントのチラシやポスターなどを収集、公開しています。こうした資料を収集するために、職員の皆さんが情報収集し、出向きながら集めているということでした。
震災資料の収集活動は現在も継続中です。収集方針としては、(1)郷土資料として収集、(2)図書、雑誌、視聴覚資料を収集、(3)寄贈を受けるものは、形態、媒体にこだわらない、(4)収集後は整理して公開する、となっています。収集点数は9月末日現在で、図書2,385冊、雑誌6,146冊、チラシ類7,503点と、単純に合算すると約16,000点なっているということでした。
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