常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察2日目は、石狩市を訪問。子育て関連施設の「こども未来館(あいぽーと)」と、「石狩市民図書館」についてお話を伺い、施設を拝見してきました。
こども未来館
こども未来館は、児童福祉法に規定する児童更生施設の大型児童センターとして、主に小学生を対象にした小型児童館に加えて、中高生の利用にも対応できる機能を有する施設として整備されています。施設の特徴的な設備としては、中高生のバンドやダンス、ミニ劇場等で利用できる防音スペースや、科学実験や物作りの備品を備えた創作活動室、屋外には農業体験の出来る畑などが設置されています。
施設が建設された背景には、札幌市で就労する方々のベッドタウンとして宅地開発の進展が、人口増加をもたらしたことがありました。既存児童館も、既存放課後クラブも、利用者の増加による施設の狭隘化や、必要教室数が増加し、代替施設の確保が求められていました。また、平成22年度からスタートした「次世代育成支援行動計画(こどもあいプラン)」の後期5ヶ年において、中高生の居場所づくりが「重要施策」として位置づけられたことがあります。
こども未来館は、設計・建設にも、運営にも利用者の声や、子ども達の声を反映する取組みが行われています。
石狩市では行政上の決定に市民の意見を活かす目的で、「石狩市行政活動への市民参加の推進に関する条例(市民の声を活かす条例)」が制定されています。この条例では、公共事業等を行う際に市民意見を聴かなくてはいけない、と定められています。条例に基づけばパブリックコメントなど1つ行えば良いそうですが、このこども未来館に関しては、(1)市民会議の設置、(2)パブリックコメントの実施、(3)児童等アンケートの実施、という3つの方法が取り入れられました。
市民会議では、ハード・ソフト両面から見て、子ども達にどのような施設が良いのかや、建設の是非も含めて、地域の代表者達で話し合いが行われました。そこから、(Ⅰ)既存児童館と既存放課後児童クラブの代替機能を持った施設、(Ⅱ)従来の児童館機能に加えて、中・高校生の居場所も兼ね備えた施設、(Ⅲ)隣接する図書館とソフト事業などを連携して運営する施設、(Ⅳ)市内既存児童館の中心的施設、また広域的利用が図れる施設、という4点の施設整備基本方針が示されています。パブリックコメントは2件しか回答がなく、いずれも建設に関係のない、中で働く人達に関する意見だったということで、直接設計等に反映されることはありませんでした。
児童等アンケートでは、建設予定地域の対象学校区の全児童や児童館を利用している児童、また市内児童館及び放課後児童クラブの児童員を対象にアンケートが実施されています。児童向けには学年、性別、利用経験、期待することが質問され、高校生に対してはプラスして、利用時間なども答えてもらったといいます(2,000人に配布)。このアンケートから、「飲食スペースが欲しい」、「バスケットボールのできる体育館が欲しい」、「防音ルームが欲しい」という声を得て、実際の施設整備に反映されました。また、施設の愛称である「あいぽーと」も1,121件の応募があった、小中高生への公募によって選ばれています。
また、子ども達の自主的な活動を促す取組みとして、「こどもかいぎ」という取組みが行われています。「こどもかいぎ」は、施設のイベント等が行われる際に、メンバーが公募され、小学校3年〜高校生が自主的に参加することができます。そこでは、行われる予定のイベントの企画などに子ども達が参加し、意見をし、それを実際の企画に反映していると言います。ただし、こどもかいぎには代表などの役割などはありません。あくまでイベント毎に参加者が集まり、大人が作った枠組み・企画に対して子どもが意見を言い、大人がまとめて行くというプロセスになっています。「こどもかいぎ」は石狩市内でもあいぽーとだけで行われていて、まだ3年目の取組みなので、今後の展開に期待したい所です。
利用者の声を反映して建設されたあいぽーとの利用実績は、オープンした平成23年度、2年目の平成24年度ともに、目標利用者数5万人を達成しています。利用者からも、「多くの異年齢児童に居場所・活動場所・生活の場として利用されており、地域の子どもの拠点施設として、総合的な放課後対策が推進されている」、「バンドやダンスの練習のために施設を無料で出来ることが好評となっている」など評価する声がある一方で、「異年齢児童が利用するため、安全で安心して利用できる施設を求める」声などもあると言います。
石狩市民図書館
こども未来館の後は、2000年6月にオープンした「図書館のなかに街を作る」をコンセプトとして設計された図書館、石狩市民図書館に訪れました。入り口の外にある喫茶コーナーでは、野菜の販売などが行われていました。ヒアリングの際は、学校図書館との連携を中心にご説明を頂きました(前段のこども未来館のやり取りが長引き、図書館のヒアリング時間が短くなってしまいました…)。
石狩市では学校司書の配置は、順次進められています。最初は適正規模化のための学校統廃合に伴い、新しく設置される「双葉小学校」の図書館を、魅力的にしようという所からスタートしたと言います。2つの学校が統合される時に、子ども達にどうしたら新しい環境に慣れて、喜んでもらえるだろうかという考えの中から、図書館を魅力的な場所にしようという取組みがスタートしたと言います。市長が図書館のヘビーユーザーだったということもあり、この考えは理解を得て、予算要求され、実現して行くこととなります。双葉小学校では司書の配置により利用者も増加し、この成功事例を基に石狩市は「学校図書館等整備方針」も策定し、司書配置校を増やしている所だと言います。市民図書館とのネットワークも構築し、豊富に資料提供できるようにしているということでした。
石狩市も市町村合併を行っていて、その際に課題になったのが市民図書館「厚田分館」の狭隘、老朽化問題です。この時は、効率的、効果的な施設整備の手法として、厚田分館を廃止し、厚田小学校の武道場の改修、地域開放を行う学校図書館の整備が行われました。元々厚田小学校の武道館が、その役割を既に終えていて、物置のように使われていたのを改修したということでした。厚田分館は、5千冊の蔵書に、13時から17時の会館時間。厚田小学校図書館は、5千冊の蔵書に、昼休みのみの貸出し。この2つを、旧武道場に統合、整備し、新しく「あいかぜ図書館」として生まれ変わらせています。あいかぜ図書館は、一般の市民も、学校の児童も利用できる図書館として、9千冊の蔵書に、10時から17時の開館時間などの環境下で運営が行われています。
石狩市民図書館でも、自動貸出カウンターが設けられていました。自動貸出の利用率は全体で7割、図書だけに限ると9割の方がセルフで貸出しを行っているそうです(現在の機械は老朽化しているので、来月新しい機械に更新予定)。横浜市山内図書館のように、宅配サービスも行っていますが、2011年度は34点の利用、2012年は22点の利用と、それほど利用は多くないそうです。
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