全国トップレベルの教育県秋田。秋田市の学力向上の取組。

2019-07-31 08:01:39 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

7月30日、所属する常任委員会「こども青少年・教育委員会」の行政視察で、秋田市を訪問しました。秋田市のある秋田県は、「全国学力学習状況調査」で1位になるなど、トップレベルの結果を出し続け、教育県として注目されてきました。その中で、県庁所在地であり、中核市でもある秋田市における取り組みを伺ってきました。

人間性の育成に注力した「徳育」

秋田市では「秋田市学校教育の重点」という、教育ビジョンに基づいた重点項目の設定を毎年度行っています。「平成31年度秋田市学校教育の重点」を基にお話を伺いましたが、その特徴となっているのは「徳・知・体」として順序立てられた目標と項目です。文部科学省など、一般的には、知・徳・体の順序で表現されますが、秋田市では徳を一番目に設定しています。重点項目も「1豊かな人間性の育成」とされ、その次に「2確かな学力の育成」と、まずは人間性、その次に学力、と配置されています。

「1豊かな人間性の育成」では、義務化された道徳教育を入口にしつつも、「1−2人と人との絆づくり」として、子どもたちと多様な人々との信頼関係の構築や、絆の重要性を実感できるようにするために「絆づくり教育プラン」が各学校で作成され、その検証と改善に取り組まれています。子どもの主体性を生かすことを目的にしていて、子ども一人ひとりが意欲的に参加できるよう、活動の目的や自分の役割、活動内容について話し合いをもつ場作りなどが示されています。また、「人間関係を築く力の育成」として、自分だけでなく他者の理解を促し、他者も大切にできるようにと、お互いを認め合えるよう価値を認めたり、スピーチやディスカッションなど相互評価可能な学習活動の充実が示されています。

具体的には、遠足などで1年生と6年生とが交流をしたり、「ふるさと先生」という地域の方が地域の文化などを教えに来たり、小さい学校が単独では実施できない合唱コンクールを複数校で実施したり、ということが例示されました。他者の参加が、クラスや学年、学校単位で行われることで、他者との交流と理解を必要とする機会が設けられていることがわかります。

更に「2確かな学力の育成」においても、「自己決定の場を設定する」、「自己存在感を持たせる」、「共感的な人間関係を育成する」という生徒指導の3機能をいかした授業が重視され、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善が冒頭に示されていて、学習における、子どもたちの人間性、主体性の育成が重視されていることが分かります。

この「徳」の部分を評価できるような数値は無い、ということでしたが、説明してくださった指導主事の方によれば、主事の方が子どもの頃や、若かった頃よりも、学校が落ち着いているという印象を持っていると仰っていました。この「落ち着いた授業環境」は、6年前に秋田市に視察にお邪魔した際にも、指摘されていた部分です(6年前のブログ)。数字的な評価ではないので、客観的に評価しづらいのが残念で、第三者である私達には分かりづらい部分でもあります。ちなみに、秋田県の犯罪発生率は全国一低いという数字がありますが、いじめの認知件数は全国平均より多く32位(少ない順)、一方では公立小・中学校における暴力件数は平均より少なく6位(少ない順)となっています(参考資料)。

藤崎浩太郎

その他の特徴:充実した職員研修や学力調査

秋田市の教育環境の特徴の1つには、学習指導力の向上を図るための取り組みが充実していることが挙げられます。秋田市教育委員会では小学校42校、中学校24校、児童自立施設内学校1校(内、小中各1校)、市立高校2校、専修学校1校に対して、毎年各学校1日かけて指導主事が計画訪問をし、実際の授業を見学し、授業の質を向上させるための指導が行われています。

また教職員研修は、基本研修や、職務研修、専門研修など、職域に応じたものや、希望者に対して行われるものなどが、全68講座用意されています。中には「全市一斉授業研究会」という小学校、中学校の全ての先生が集まって行われる研修があります。団塊の世代の教員が大量に退職することに伴い、経験の少ない若い教員が増加するという年齢構成のバランスが崩れる中、経験の伝達の必要性への危機感から、校長会の要請によって2010年度から行われています。

学力学習状況調査は、国が実施するものの他に、秋田県のものと、秋田市のものとで、合計3種類もの調査が行われています。実施学年が異なるので、学年で最大でも2回となりますが、4月の全国が小6と中3、10月の県が小5と中2、12月の市が小4〜中2となっていて、細かく状況把握ができるようになっています。調査結果を基に他都市との比較をしたり、「○ポイントアップ」などの目標を掲げることは行われていません。全国学力学習状況調査の結果は「秋田市の調査結果」としてまとめられ、設問ごとの評価ではなく、特徴の抽出と、学習指導改善の今後の方策がまとめられます。また学習改善の補助資料として、「学習指導改善の方策」がまとめられ、「どんな力が求められているか」、「どのような改善が必要か」という観点から方針やポイントが示されています。

藤崎浩太郎
委員での集合写真。

秋田市役所
秋田市役所1階ロビー。

Post comment