市長自ら、災害時にTwitterで情報収集。佐久市視察報告。

2015-11-12 04:33:12 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

11月11日は「減災対策推進特別委員会」の視察で、佐久市役所を訪問しました。

大雪被害の中、市長自らTwitterで情報発信、収集

2014年2月15日、16日と、佐久市は80cm以上の降雪を記録する大雪に見まわれ、道が塞がれ、家も雪が覆い、大きな被害を生み出しました。そうした緊迫した中、佐久市の柳田清二市長自らがTwitterを活用し、市民から情報収集を行いました。その結果、課題箇所の迅速な除雪作業を行ったり、自衛隊の派遣要請まで結びつけていくなど、市長のTwitter活用が全国から注目を集めました。

(※取組についての情報は、こちらのリンク先をご参照ください。(1)NAVERまとめ (2)R25

横浜市では昨年、台風19号接近の際に緊急速報メール(エリアメール)で避難準備情報が送信され、その文面がHPへのアクセスを促すものだったため一度にアクセスが集中し、HPを閲覧出来ない状況が生じ、市民が必要な情報を得ることができず混乱を招きました。私は議会において、本市HPだけを利用するのではなく、災害時など迅速な情報発信が必要であり、インフラ等がどうなるか分からないケースに対応できるよう、TwitterやGoogle Docsなど外部サービスを活用することを提案してきました。また、Twitterのサービスのうち「Twitter アラート」の導入や、危機管理室や区役所における積極的活用などを働きかけてきました。今回佐久市を訪問したのはこうした経緯から、市長自らが率先して情報を発信しつつ、市民のTwitterユーザーから直接情報を集めるという先駆的な取組について、具体的なお話を伺おうとの目的があってとなりました。今回幸いなことに、市長自らご説明くださり、質疑を行うことができました。佐久市議会からは、小林貴幸議長がご出席くださり、議会、議員としての視点からお話を伺うことができました。ありがたい限りです。

課題の可視化としてのTwitter活用

Twitterによる災害情報の収集は、ある意味「マーケットにおけるクレーム対応に似ている」という考え方が示されました。大雪災害の際、市内各地の道路の除雪状況や渋滞情報などをTwitterで収集されていますが、課題を実際にツイートする方がいるおかげで、Twitter上で課題が「可視化(見える化)」され、直接投稿していない、声を上げられていない市民にも、納得してもらうことができるということです。また写真を活用することで、現場の判断も早くすることができたと言います。電話での相談も市役所として沢山受けているなかで、現場の状況を共有しやすいというメリットがあります。現場の担当者へ市長が指示を出す際には、Twitterのユーザーが市民の中では限られていることを踏まえ「参考に」するよう指示を出していたと言います。Twitterからは「◯丁目◯番地」のようなピンポイントの情報を得やすく、また市内全域の傾向を把握することも可能となり、電話など他の方法から入る情報と合わせながら、対応の優先順位付けを行うことが、現場では行われていたといいます。

大雪への対応で、最終的には自衛隊が派遣されます。この派遣に関しても、1つのきっかけとなったのはTwitterから情報でした。ユーザーから「雪捨場を作って欲しい」という意見が、市長あてに寄せられます。この意見を元に、市長と担当の部長とで話し合いが行われます。その結果、除雪車輌も少ないなかで、雪捨場を作る作業を行えば、除雪自体ができなくなってしまうなど、佐久市のもつ除雪能力を超えた状況にあると判断がくだされます。そこから、自衛隊の派遣要請を県に依頼することになります。ところが県では自衛隊派遣の3要件(非代替性、緊急性、公共性)を満たすかどうかの判断が遅れます。市長は現場の状況を県に改めて説明し、迅速な派遣が必要であることを強く訴え、自衛隊の派遣が決定することとなります。

Twitterでの情報受発信の問題として、「使えない人がいる」、「誰もがユーザーではない」というものがあります。佐久市長の対応は、「Twitterが全て」ではなく、「情報収集ルートの1つ」として、他の選択肢と合わせて活用したというものです。各種災害発生時には、電気や電話、インフラ等、どんな被害が発生するかは想定に収まらないことが予測されます。そうした中で様々な選択肢を用意し、状況に応じて利活用できるように体制を整えておくことが重要だと考えます。またTwitterの課題として指摘されてきたのは、「間違った情報」が投稿・拡散されるのではないか、というものがあります。今回の大雪災害時においては、そうした間違った情報の拡散などは無かったとのことでした。とはいえ市長もそうした側面を認識しつつ、「リスクがあるからやらない」という対応ではなく、「リスクを理解した上で踏み込んでいく」ことが重要だという認識で、迅速な情報収集に努めたということでした。仮に「悪意のある誤情報」があるとすれば、それはTwitterに限らず、電話でも、メールでも起こり得ることでもあると考えられます。そういう意味では、全ての情報収集は「間違った情報」が入り込む余地があるので、だからといって情報収集をしないのではなく、出来る限り詳細に把握するよう努めながら対応していくしか無いとも言えます。

今後の取組と課題

佐久市として今後Twitterの活用方法として有効だと考えられているのは、認知症の行方不明者の捜索です。佐久市ではこうした捜索を行う際に、地元の消防団の方々が大きな役割を担っているといいます。無線などで情報を提供するものの、顔写真などは無線では共有できません。捜索願が出されると、ご家族の方から顔写真の提供の許可を得た上で、Twitterで顔写真などの情報を発信することになります。現場の消防団員と情報共有が行えるだけでなく、情報の拡散が行われるので、より効果的な捜索ができるようになっているそうです。

大雪は2014年2月ですから、すでに1年半以上が経過しています。市長の取組として、Twitterの活用が注目されてきましたが、市役所としての体制構築はなかなか難しいようでもありました。何を、誰が、いつ、ツイートするのかという線引を、明文化することに難しさがあるようでした。市長の感覚では、Twitterの利用が向く災害と、向かない災害があるのではないかという指摘もありました。大雨であれば、職員が現場までいって目視で確認できるため情報は収集しやすくTwitterでは無くても対応できますが、今回の大雪のように現場に到達できないような場合は、現地の市民から情報を迅速に得られるということでTwitterが有効に機能するということです。地域によって想定される災害も異なり、行政の体制も異なりますので、横浜市と横浜市各区においても様々な想定の中で、どの手段をどう活用できるか/するかの想定と位置づけは重要です。また佐久市は活断層もなく、それおほど大きな災害想定があまり無いために、市民の危機感、防災意識が低くならないかが心配されていました。「災害が少ない地域」であるがゆえの「災害に弱い地域」にならないよう、取り組んでいるとのことでした。

最後に市長からは、人は公平に扱われると期待できれば順番を守ることができるが、そうでなければ守ることができないという指摘がなされました。災害時においても、公平・公正に対応できるかどうかが行政においては重要です。そうした視点から、Twitterによる情報収集はローカルな情報を細かく収集でき、かつ可視化されるため、全体の状況把握の中で、公平性・公正性を担保しやすいという指摘がなされました。行政と市民が、可視化された情報を共有し、全体像を理解することで、政策・施策の優先順位を判断することは、まさにICTの活用によるオープン化された行政運営が実現する効果として期待されてきたことでも有ります。「Twitterが全て」ということではなく、ICTと様々なサービスを活用し、より効率的、効果的な防災体制の構築が行われることが、横浜市においても期待されます。

柳田清二
柳田清二市長からの説明

小林貴幸
小林貴幸議長からの説明

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