世界を見据えた、オープンイノベーションの拠点。大阪イノベーションハブ。

2014-06-30 00:03:52 | カテゴリ:活動報告


大阪イノベーションハブ

6月27日、JR大阪駅北側に2013年4月にオープンした「グランフロント大阪」に居を構える、「大阪イノベーションハブ(OIH)」を視察で訪問しました。

OIHは、オープンイノベーションの拠点として設置されました。拠点と言っても、関西の拠点でも、日本の拠点でもなく、世界市場をターゲットとした拠点として設置されています。大阪市には、パナソニックやシャープを始めとした大企業のみならず、ものづくりの中小企業が集積しています。こうした企業を、オープンイノベーションで支援しようと言うのが、OIHのアプローチの1つです。これまでも、「ニーズ顕在化プログラム」、「ものアプリハッカソン」といった手法で、プロジェクトの創出が行われています。

「ニーズ顕在化プログラム」では、メガネ型ウェアラブルデバイスの「Telepahy One」の活用方法について、アイデアソン(アイデアの出し合い)を行っています。このアイデアソンでは使うシーンを「学校」「病院」「町工場」「商業施設」「観光地」に設定し、アイデアを出し合い、まとめ、発表したという事です。実用化のアイデアが、5件創出されています。「ものアプリハッカソン」では、シャープのお掃除ロボット「ココロボ」について取組まれました。結果として、「ココロボがツンデレキャラだったら」というアイデアが生まれています。この「ココロボ」での取組みは、正式にはハッカソンではなく「Co Creation Jam」という名称で行われ、参加者と守秘義務契約を結ぶ事で、ハッカソンから生まれるアイデア等を企業に帰属させられるようにしています。アイデアソンやハッカソンは、その場で生まれたものを「公知」となるので、多様な参加者の意見を聞きたいと企業が考えても、新しい技術や、ノウハウを簡単には表に出せないというジレンマもあります。そういう課題を解消し、より多くの企業がOIHに参加し、イノベーションを起こせるよう、工夫をしているということです。「ものアプリハッカソン」の代表事例として紹介されたのが、「Moff」です。2013年1月に行われた第1回目のハッカソンに参加したことから生まれた交流が元になり、こども向けのリストバンド型ウェアラブルおもちゃ「Moff」が誕生したということでした。

今月(2014年6月)の土日は全て、ハッカソンのイベントで埋まっていました。最近では企業からの持ち込み企画が多くなっているそうです。これまでのOIHでの実績や、体験がオープンイノベーションに役立つとの判断からでしょう。音響機器メーカーのONKYOは、OIHの行う「イノベーション・エクスチェンジ」を活用しています。イノベーション・エクスチェンジは、グローバルに展開する企業がニーズを発表し、参加者から提案を受けるものです。ONKYOは、ハイレゾ音源をいかにしてビジネスに活用するかというテーマで行い、大阪市内の企業から提案を受けたという事です。また電気機器メーカーのオムロンは、顔認証の優れたシステムを開発し、その技術をどうやって製品に活かすかのハッカソンを行っています。

大阪イノベーションハブ

ホームページをご覧になるとよく分かりますが、これまで行われたイベントの主催者に、大阪市都市計画局がクレジットされていたりします。もともとOIHは都市計画局主導で取組まれ、現在は経済戦略局に移管されています。OIH自体の運営は、大阪市の委託を受け、「innovate!osaka」という4法人で構成された共同事業体が運営しています。OIHのフロアには、打合せスペースや、セミナースペース、事務スペースが配置され、1枚のドアで仕切られたとなりの部屋には、大阪市の事務スペース「Division for Innovation」が置かれています。2013年2月14日には橋本徹市長が「大阪イノベーション宣言」を行っており、大阪市としても積極的に、オープンイノベーションンの促進に関わっています。とは言え、OIHに関してはいずれ大阪市が手を引けるような状態に持って行きたいとの考えで取組まれています。新しい取組みを始めたなかで、「大阪市がやっている」というクレジットがあることで、OIHの取組み自体の信頼性を確保し、参加者を増やし、活発な活動が生まれる効果を、現時点では確保しているということです。市の予算として年間2億円ほどが支出されています。そのため3年間の目標として、(1)OIHの活動などに賛同し、参画する方、もしくはSNSで繋がる人数10万人、(2)グローバル展開可能なプロジェクトを100件創出する、の2つが掲げられています。

グローバル市場を見据えた上で、OIHが意識し、参照しているのがシリコンバレーです。今年の2月には「イノベーションの聖地シリコンバレーで学ぶグローバルアントレプレナーシップシリコンバレー人材派遣プログラム2014」が開催され、40名ほどが参加しています。このツアーも、大阪市に閉じたものではなく、全国から参加申込が可能で、大阪以外にも、周辺地域や東京から参加者が集まっています。このツアーも都市経営局が主催し、OIHがコーディネートを行い、参加者は全て自費という形態で行われています。グローバルを意識しているのは活動だけでなく、「大阪市イノベーション促進評議会」委員の人選にも及んでいます。委員長の校條浩氏の他、外村仁氏、吉原寛章氏がシリコンバレー在住。藤沢久美氏、田路則子氏が東京在住と、6名中5名が国外、大阪市外在住で、大阪に住んでいない人から、その取組みが評価される仕組みとなっています。また「国際イノベーション会議 Hack Osaka」という取組みでは、2013年のテーマを「IoT(Internet of Things)」として、海外から講師を招き、英語での講演を行ったりしています。

社会が、社会課題が多様化する中で、社内の閉じたリソースだけでは、新たな製品開発、ビジネスモデルを生み出せなくなっているなかで、オープンイノベーションへの期待が高まっています。大阪市では、グランフロント大阪の、ナレッジキャピタルを舞台にして、OIH以外にも様々なイノベーションへの取組みが行われています。基本的には民間主導で様々な取組みが行われ、その一角にOIHと、大阪市が居るという状況でした。横浜では地域課題、社会課題解決のためにという、大阪とは別の視点から、「LOCAL GOOD YOKOHAMA」というオープンイノベーションの取組みも始まりました。また大阪市ではオープンデータの取組みも始まっており、2014年2月17日にはアジア初の「Open Data Institute City Node」に選出されていますし、OIHとしてはオープンデータで具体的な経済効果を生み出す事も目標の1つになっているとのことでした。横浜市も負けてられません。横浜と大阪と、全国の地域、自治体とが切磋琢磨しながら、社会を、世界を変えて行く時代です!

大阪イノベーションハブ

Post comment