子どもも障害者も高齢者も、ごちゃまぜ。壁のない理想的福祉。

2022-08-04 22:54:13 | カテゴリ:活動報告


藤崎浩太郎

2022年8月3日、今年度所属する常任委員会「健康福祉・医療委員会」の視察で、石川県白山市にある「社会福祉法人佛子園」が運営する、「B’s・行善寺」と「西圓寺」の視察を行いました。

高齢者も障害者も子どももみんな「ごちゃまぜ」

佛子園のコンセプトは「ごちゃまぜ」。「B’s行善寺」は佛子園の本部も入る約4,700㎡の敷地内に、保育園、診療所、児童発達支援、放課後等デイサービス、指定特定相談、障害児相談、就労継続A型・B型、生活介護、日中一時支援、居宅介護、グループホーム、高齢者通所介護、短期入所、温泉、そば処(食堂)、スポーツジムなどが整備されていて、子どもも障害者も高齢者も本当にごちゃまぜ。「西圓寺」も、就労継続支援B型、生活介護、高齢者デイサービス、放課後等デイサービス、児童発達支援、温泉、スポーツジム、自家焙煎コーヒーのカフェが一体となって運営されて、こちらもごちゃまぜ。施設内で働いている人が障害者だったり、ソファで休んでいる子どもが障害児だったり、温泉に来てビールを飲んでいるのは近所の住民の方だったりと、そこかしこに色んな人がいる状態が、佛子園の事業の特徴です。

佛子園

福祉の縦割りからの脱却

雄谷良成理事長の幼少期からの経験に基づき、障害者が差別されることのない、まちごとみんなでわかり合える環境づくりというアプローチと、高齢になった人たちの居場所づくりという視点から、縦割りになってしまう福祉行政の壁を取っ払い、施設の建物や支援サービスも壁を取っ払って、利用者目線でサービスが提供される環境が用意されています。人が集まることで交流を生み出し、交流が生まれると関わりが生まれ、その関わりから様々なことが生まれていくようにと、考えられています。B’s行善寺でも西圓寺でも、地域住民と利用者との交流が自然と生まれるようになり、イベントの企画などが自発的に発生し、佛子園がそれを応援しながら、住民と利用者の交流が活発に行われているそうです。

支える人ー支えられる人の線引のない福祉

私も地域コミュニティのサロンなどいくつか見てきましたが、重要な要素が食事です。食事をできる場所には、人が集まります。プラスして佛子園の特徴に温泉がありますが、近隣住民の方は無料で利用できるようになっています。温泉の入り口には、近隣住民の名前の入った木札がかかっていて、入っているときには木札を裏返しにすることになっていて、誰が来ているかわかりますし、「最近あの人が来ていない」ということも気付けるようになっています。無料の温泉に入って、ビール飲んで食事して、その合間に障害児の世話したり。福祉の担い手には社会福祉士や介護福祉士など様々な資格が必要ですが、佛子園では「資格のある人しか関われない福祉ではなく、色んな人が関わり合う場所があれば、誰もが福祉の担い手になっていく。」という考えのもと、「支える人ー支えられる人」という線引をしない福祉が実践されています。

障害者の働く場所として

B’s行善寺では103人の障害者が働いています。そば処のホール接客、温泉の掃除、スポーツジム受付、カフェの接客など、それぞれの得意を生かした仕事をしています。西圓寺の野田町珈琲でも、接客や珈琲豆の選別を障害者が行っていますし、自家焙煎の豆を、サイフォンで淹れて、とても美味しいコーヒーを頂けます。温泉やそば処には、近隣からのお客さんだけでなく、温泉好きが遠くから足を運んだりしていて、特別な場所ではなく、日常的に不特定多数に利用されている場所で、障害のある無し関係なく色んな人が出入りしている場所となっています。視察にお邪魔して、そば処で昼食を頂いているときも、どの人がどうなのか全くわからない環境にありました。ちなみに温泉の清掃には、無料で入浴できる近隣住民も自発的に参加しているそうで、障害のある人もない人も、一緒に清掃をしていたり、自分たちの場所を自分たちで手入れしているという面があったり、とても魅力的な環境です。

野田町珈琲

思うこと

福祉の1つの理想を形にしているのが、佛子園さんとその事業だと思います。本当に素晴らしいコンセプト、場所、事業となっていて、驚きましたし、感動といってもいい衝撃でした。西圓寺の視察中、旧本堂では高齢者デイサービスの利用者と、放課後等デイサービスの子どもがいて、カウンター席ではカウター越しにお店の人と話をしている方が居て、まさにごちゃまぜで、それぞれが共存していることになんの違和感もなく、それぞれが過ごしていました。佛子園の取組がまとめられた書籍『ソーシャル・イノベーション』を読むと、こうしたごちゃまぜの環境だからこそ生まれていく関係や、福祉の効果も紹介されています。多様性の理解、と言っても、その多様性の中に居られるか、外から見るかでは理解の仕方や中身が全く異なると思いますし、こどもの頃から健常者ー障害者と縦割りで別々に育つ環境や、同世代ばかりで育っていく環境では、障害のことも高齢者のことも自分がそうなっていくことも、なかなか理解していくことが難しいと思います。ごちゃまぜのなかで、多様性を身を持って感じ、理解できる環境があり、そこで子どもも大人も育っていけるというのは、理想的な形だと思います。

行善寺

行善寺
B’s・行善寺のそば処の蕎麦とミニ天丼。蕎麦はブータンの蕎麦で、ブータンにもグループの事業所があり、蕎麦がブータンの障害者雇用になっているそうでうす。

西圓寺

西圓寺
廃寺・西園寺の、旧本堂。

ゴッチャ小松店
右側がゴッチャウェルネス小松店、左側に野田町珈琲。西圓寺の一環。

佛子園

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