2024年1月19日、横浜市会運営委員会視察で大分市議会を訪問しました。大分市議会には議会基本条例で定められた、大分市議会活性化推進会議が設置されています。この議会活性化推進会議では、2008年に制定された大分市議会議会基本条例の「条例に基づく活動についての検証」、「条例の文言自体の検証」、「新たに条例に加えるべきものの検証」の3つの観点での検証が、2018年に実施されています。
議会活性化推進会議による議会改革
大分市議会基本条例16条第2項には、議会改革に継続的に取り組むための「議会に議会活性化推進会議を置く」ことが定められ、要綱に基づいて運営が行われています。これまでの成果として示されているのは、
・本会議における一問一答方式、反問権の導入
・委員会における自由討議
・議会として開催する市民意見交換会の実施等について
・決算審査特別委員会での分科会方式の導入
・特別委員会の見直し
・賛否の公開
・若年層との意見交換
・議員定数の見直し
・事務事業評価の導入
・大分市高校生議会の開催
・議会基本条例の検証
・若年層に特化した議会モニター
・タブレット端末の導入
等となっています。
議会基本条例の検証の結果としては、危機管理体制の整備についての条文の追加や、定期的な条例の見直しについて条文追加がなされた他、議員間の自由討議の要否の検討等が行われています。
人口流出と若者の政治参加を促す取り組み
大分市における課題の1つに、若者の市外流出があります。市内・県内の大学が少ないため、大学進学を機に福岡や関西・関東へ出てしまうのと、就職の段階で市外・県外に出てしまうのと、2つのタイミングで若者が流出してしまい、若年層の人口流出が課題となっています。
議会活性化推進会議で取り組まれてきた事項の成果として、若年層との意見交換、高校生議会の開催、若年層に特化した議会モニターという、若年層の政治意識、政治参加機会の醸成に関する取り組みが並び、議会内の改革とは異なる、議会外に向けた取り組みとしては、若年層をターゲットにした取り組みが目立ちます。この背景には、上記の人口流出に対して議会としても大きな課題として取り組んできたということがあります。
若年層との意見交換、議会モニター
大分市議会の取り組みで興味深かったのが、「若年層に特化した議会モニター」です。市内の大学生を募集して、本会議や委員会を傍聴してもらったり、意見交換を行い、議会機能を充実させることを目的とした事業です。2021年度からこれまで3カ年度実施されていて、2021年度は19名、2022年度は21名、2023年度は22名の大学生が参加しています。大学生の募集は、大学を通じて募集する方法と、ゼミの先生にお願いして募集するという2つのルートがあります。モニター制度には特に予算が計上されておらず、学生の交通費や弁当代等は出されておらず手弁当で参加しているということでした。
流れとしては、意見交換1回目、議会傍聴、意見交換2回目、という3ステップで実施されています。実施前の事前レポート、実施後の感想の集約など、参加学生から文章でも意見を集めています。これまで集約された意見では、政治参加意識が向上したことや、議会質疑が傍聴者には分かりづらいという指摘、普段知ることができないことを知れた、議員を身近に感じた等の意見が出されていました。
「議会機能の充実および強化」ということが目指されていますが、これまでモニターから出された意見で具体的に議会に反映されたのは、議会のネット中継の休憩中の画面に「◯◯時再開」という表記をするという事項1件でした。再開時間が分かったほうが良いという指摘に基づく改善でした。3年取り組んで1件のみという点については、議員も課題感を持っていらっしゃって、今後テーマ設定など対応を考えていらっしゃるということでした。
議会モニターが始められた背景には、「若年層との意見交換会」という事業の課題を解消するという意図がありました。意見交換会は、「若年層の政治参加意識を喚起する」ことが目的とされ、2011年度から高校、大学、専門学校向けに行われていて(2023年度は中学校でも実施)、市議会議員が直接学校に出向いて、テーマを設けず自由な意見交換を行うという取り組みです(テーマを設定している年度もある)。この意見交換会が10年以上継続され、政治参加意識の喚起には一定の役割を果たし、成果を出しているという認識の一方で、議会活動そのものへの若年層の関わりにつなげるのが難しいため、モニター制度を作ってきたという背景があるそうです。
この他、大分市では「大分市若者応援条例」が制定されています。市の責務として、若者の活躍する環境整備を図ることと、必要に応じて財政措置を講じることなどが定められています。まちづくりなどに若者が参加できるようにし、地域、社会で若者を応援し、若者が夢や希望をもって生き生きと活躍できるようにと、条例の制定までが行われているというのは、議会としての覚悟を感じました。私は以前新城市の視察を行いましたが、大分市の条例制定においても、新城市の視察が行われていました。
所感
若者の政治参加、主権者教育、と若者の政治意識、参加意識の醸成については、全国的に課題が共有され、様々な取り組みが行われています。横浜市においても、高校生を市議会に招いて意見交換を行う機会が年1回ありますが、大分市議会の取り組みと比べると、見劣りする状況にあります。「議会活性化」を目的とした議会活性化推進会議という場において、若年層に確実にアプローチし、議会改革につなげ、若者に大分市に定住してもらえる信頼関係の構築をしようという意志を感じました。人口減少社会における基礎自治体議会の可能性はまだまだあると、横浜市会として学ぶことの多い視察でした。
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