7月24日、横浜市会で今年度所属している「こども青少年・教育委員会」の視察で、福岡市にある「子どもの村福岡」を訪れました。
子どもの村福岡は、「SOS子どもの村」という世界133カ国に展開するNGOの活動の中で、日本で初めて展開された場所。「里親制度」を活用し、家庭的環境で地域と共に、様々な理由で家族と暮らせない子どもを育てていく、新しい社会的養育の仕組みを創り出している場所です。
福岡市では約460人、全国では約4万7千人の子ども達が、親の病気や貧困、虐待や育児放棄などの事情で、家族と暮らせない状況にあり、その数は年々増えています。日本における、こういった子ども達への社会的擁護は、79%が施設で行われていて、里親が13%、乳児院が8%となっています。他国では里親等の委託制度の活用が多く、オーストラリアでは93.5%、アメリカ77%、フランス54.9%、韓国43.6%などとなっています。厚生労働省としても2011年には、(1)里親・ファミリーホーム、(2)グループホーム、(3)児童養護施設および乳児院、の3つの分野における擁護を、3分の1ずつに変えていきたいと方針を打ち出しています。
福岡においては、2005年に「ファミリーシップふくおか」という、里親普及事業が立ち上がっています。市民と行政の力で里親を増やす為に、講演など普及活動を行いながら、里親委託率を6.9%から、30.4%まで増加させたという経験を持ちます。その経験から見えてきたこととして、里親支援と普及は両輪であること、専門家のケアが必要であること、行政課題から市民の課題に変えていくひつようがあること、が挙げられていました。そしてこの経験が、「子どもの村福岡」の立ち上げに繋がったと言います。
2009年には国連から「子どもの代替養育に関するガイドライン」が発表されます。その中では、
・家族は、社会の基本的な集団であり、子どもの発達と幸福と保護のための本来の環境。何よりも実の親の下に、或いは近親者の養育にとどまることに力を尽くすべき。
・代替養育は最終手段。出来るだけ短期間。
・兄弟姉妹は、分離されるべきではない。
・入所施設は、適切、必要、最善である場合に限られる。
・幼児、特に3歳未満は、家族を基盤の養育に限られる。
・施設と家庭養育が保管し合うことを認めるとしても、大型の施設は脱施設かの方針で廃止を目指すべき。
などといった事が指摘されています。
子どもの村福岡は、この国連のガイドラインを取り入れ、NGO「SOS子どもの村」の理念とプログラムを導入し、日本における家庭擁護のモデルを目指しています。村の中には5軒の戸建て住宅があります。それぞれ(現在稼働しているのは4軒)には、里親制度を活用した実の親に代わる「育親」がいて、1軒あたり1〜3名の子どもを養育しています。センターハウスと呼ばれる、NPOの事務所にはスタッフの方々がいて、里親とスタッフとの連携や児童相談所との連携が行われたり、ボランティアグループや専門家チームとの連携が行われたり、里親への研修が行われたり、地域との連携が行われたりしています。現在は1歳〜9歳までの子どもを預かっている状況で、これまで1組が家庭へ戻ったと言います。
特に力を入れている地域との連携においては、子ども達が今津(村のある地域)で育った「今津の子」になるように、地域の自治協議会、青少年育成連合会、PTAなどで構成する「今津・子どもの村福岡連絡協議会」で情報共有や連携について協議が行われていて、子どもの村内のたまごホールを、PTAなども日頃から利用するなど、相互に結びつきながら、交流を行っています。
2010年からスタートした子どもの村福岡には、まだまだ課題も。一つは育親不足。現在1軒家が空いているのは、育親のなり手が居ないため。処遇面では里親制度の活用以外に、NPOからも給与が出ているそうですが、それでも責任の大きな仕事。長期にわたって、住み込みで働く仕組みなので、なかなか成り手がいないそうです。また資金面。これまでも2007年には後援会も立ち上がり、福岡の名立たる企業が名前を連ねています。数多くの支援者も抱え、寄付やチャリティーイベントの開催などから、資金を得ているものの、今後不足していく事が分かっているということでした。
虐待や育児放棄は全国的な問題。子ども達に、より良い養育環境を提供することは、本当に重要なことですよね。
※参考資料
公益財団法人全国里親会
⇒全国里親会による里親等委託率アップの取り組み報告書(PDF)
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